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その4:ペンは剣より強し

「万年筆は男の武器である」と説くのは、池波正太郎の『男の作法』(新潮文庫)だ。
万年筆を男が外へ持ち出す場合、それは刀のような武器であり、若者でも高級なものを持ったほうが立派に見えるし、気持ちとしてもキリッとすると言うのが理由。
日本の武術には、江戸時代初期に夢想権之助勝吉という武芸者が編み出した神道夢想流から始まる杖術というものがある。
日常で使う杖で戦う武術であるが、では同じく日常で用いられる筆で戦う武術などあったのだろうかと疑問を抱いたのが今回の話。
軽く調べた限りでは、筆で戦う武術の当てはなかったが、以前に観たテレビドラマのアクションシーンで、組み合う相手の太腿にペン先を刺して怯ませる場面を見たことがある。ならば、ペンで戦う護身術があってもおかしくはない。
そこで調べてみると、護身用のボールペンがあった。その名もタクティカルペン。
タクティカルとは「戦術的な」という意味を持ち、これを造るのがスミス&ウェッソン、コルト、ベレッタと言ったアメリカの刃物・銃器メーカーだったりする。
どのようなものかと言うと、一般的なボールペンよりも長く、重さも約40gとずっしりしており、せいぜいメモ用にと言うべきところで、胴軸の先端がライフル弾みたいに尖っていた。これだと突くと言うよりは刺すことが正解になりそうだ。現に段ボールやペットボトルは軽く貫通するそうなので、相手がいる場合は急所を外さないと大変なことになる。
素材も金属の中で最も融点が高く、形状安定性がきわめて高い硬度を持つタングステン、もしくは強化プラスチックなどが多いらしい。護身用の他にも車に閉じ込められた際の窓ガラス破壊にも利用を見込まれているそうだ。
しかし、インクはさすがにメーカーでも製造までは出来ず、パーカーなどの文具メーカーのものが使える仕様になっている。
と、ここまではボールペンの話。
この誌面はあくまで万年筆について語らねばならない。
ボールペンならペン先でも刺すことも可能だが、 万年筆のペン先は実際だと刺すには軟らかすぎて、テレビドラマのような使い物にはならないと言う。
けれども万年筆のタクティカルペンもあった。シュレード・ウォールデン社が万年筆兼ボールペンと言うペン先を取り外して換えられるツーウェイタイプを造っていた。
万年筆のペン先はステンレスのようで、やはり攻撃は胴軸の先端になる。
残念なことにシュレード・ウォールデン社のタクティカルペンの万年筆はネットショップを見ても売り切れ表示で現在では取り扱いすらないようだ。
クボタンと呼ばれるキーホルダー状の護身用具と同じ捉え方のようではあるが、このボールペンはそのゴツい見た目もあって、以前に輸入を試みた業者が税関で文具と認められずに差し止められた話もあるそうだ。そのためタクティカルペンの取り扱いも鈍器扱いとされる場合もあるので、保持の際は注意が必要かもしれません。
ボールペンに関しては、取り扱かっているショップもあり、スミス&ウェッソン社のタクティカルペンなら3,000円程度で購入可能。
諺で「ペンは剣より強し」とあるけれど、まさか本当にペンが武器になっているとはワクワクが止まらない。

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