Masanao Kata

油を売ったり、管を巻いたり、詩を紡いでお茶を濁しては、細々と市井で糊口を凌いで心を潤し…

Masanao Kata

油を売ったり、管を巻いたり、詩を紡いでお茶を濁しては、細々と市井で糊口を凌いで心を潤してます。古典ミステリと電子音楽が好き。 日本シャーロック・ホームズ・クラブ会員、八雲会会員、萬年筆くらぶ会員、近代詩復興委員会会員。 https://bccks.jp/user/112042

マガジン

  • ぼくのPoetry gallery

    かつて野に棲んだ詩人の残骸をここに記すという悪い趣味です。俺の未来に追いついて来い、

  • 万年筆の徒歩旅行

    万年筆くらぶ会誌『フェンテ』に投稿した雑感を順不同で転載するアーカイブ。 万年筆を筆記具より文化的な視点で話そうかと思っています。 マガジンタイトルは、中原中也の詩「自滅」から。

  • 読書三十六計

    有名・無名問わず本や文学にまつわるあれこれ。 強引に五文で仕留めます!

最近の記事

詩154「言葉の無い正解」

「言葉の無い正解」 幻想を築くには言葉を組み立てよ ありもしない正解を世界にして我々を導き入れよ 現実から回避した者たちは逃げ出すことなどない 言葉の煉瓦をひとつひとつ積み重ねた堅牢な城でも たった一言で崩れ去ることさえあるだろう どんな世界も脆くそびえ建っているものなのだ 命は一つでも言葉は無数の星であり 危うい戦場を生き抜く不確かな言葉たちは 元素も曖昧な世界の蓋でしかない かつて言葉のない世界があった そこに質素な言葉でセイレーンのハミングが結界を築けば 幻想は現

    • 詩153「旅人は待てよ」

      「旅人は待てよ」 帰らぬ旅人が帰ってきた 消え失せんと望むはうつつ 記された足跡は永遠となって 誰かが望めば 赤い詩集の果てから帰ってくる むしろ難しいことなどなくて 場所も時間も選ぶこともなくて 瑠璃色を纏った言葉が手紙となって 我々のもとに戻ってくる 理屈などはどうでも良いと思えた時には あのレインコートを羽織った旅人が見える 失われた時を知る豊穣の女神は歌い この宝石を南の風で濡らすことだろう 旅人は待てよ Masanao Kata©️ 2024 Anywhere

      • 詩152「メテオの邂逅」

        「メテオの邂逅」 その契りは真夜中に起こる 創作の神と偽って飛来する酩酊のメテオ 言葉には三神が宿るというが 踊る文字はさながら呪文か魔法陣と化し たちまち言葉が熱を帯びて送り出す 有無を言わせぬ契約は創造の深みへと魂を突き落として それを灼熱の温度まで高めてしまうだろう 今まさに月に冴える深夜の創作は疾走した まだ見ぬ失われた創造性を探し出すかのような快感こそが 我々を陥れようと目論む牧神かサテュロスの罠である 静かな夜に切り拓かれた創造の幻野はどこまでも広くて美しいが

        • その15:万年筆の怪人

          男は誰しも少年だった。そして少年は、ヒーローに憧れを抱いて大きくなる。 1966年のウルトラマン、 1971年は仮面ライダー、 1975年には秘密戦隊ゴレンジャーと、 特撮ヒーロー番組のシリ ーズは2023年の現在まで脈々と続き、毎回手を変え品を変え、様々な怪人が地球(日本?)を脅威に晒し、ヒーローたちに都度打ち負かされている。この構図がもう半世紀以上続いていることになる。 怪人もユニークな着想から生まれたものが多く、それこそ未だヒーローを凌ぐ勢いで愛されているキャラクターさ

        詩154「言葉の無い正解」

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        記事

          詩151「異彩」

          「異彩」 異才の奇祭は胡散臭い 委細は一切言い出さないまま 雲散霧消な韜晦術で まくのは煙かそれとも餌か 倒壊する論理には追い付けないが それでも偉才と褒め称えられ 叩いて消えることさえない ただ居るだけでも様になるので 冴えない無様な成りでも神々しい 嘘と誠が混合し インサイドで競り合って 玉虫色の魂の妖しい彩りは雄鶏のアシメントリー 色とりどりの折々のまとまりは始まりで終わり つまりはあとの祭りという訳だ Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Ze

          詩151「異彩」

          戸板康二「等々力座殺人事件』

          取り上げるのが二冊目になる戸板康二の中村雅楽シリーズは、河出文庫より先日刊行された短編集『等々力座殺人事件』。 歌舞伎の名老優中村雅楽が難事件を解決する探偵小説で、1959年の『車引殺人事件』河出書房新社から生まれた人気シリーズ。 過去には講談社文庫や創元推理文庫でも中村雅楽シリーズは刊行されて来たが、新保博久の手でその作品群を再編された文庫が本書となり、編者が編み直した今回のラインナップを見るのも復刊の楽しみだ。 戸板康二は演劇・歌舞伎評論家であり、江戸川乱歩の勧めで書いた

          戸板康二「等々力座殺人事件』

          詩150「白銀の月」

          「白銀の月」 帰り道の夜空を見上げると ぼうっと冷たく光る月が滲む あの気高く遠い世界なら邪な迷いも凍てついて すべてはお前の想いひとつだ そう突き放される気がしたら胸が締まった Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩150「白銀の月」

          詩149「暑い夏に」

          「暑い夏に」 ごくごくと喉を伝う冷えた水 じっとりと肌を伝う汗 きみのようにやさしく頬を伝った涙 何も沁みずに乾いた心を伝うものは この夏あなたに問わねばなるまい Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩149「暑い夏に」

          詩148「紙で切った」

          「紙で切った」 血も出ない指先の傷口は 確かにぱっくり薄く切れていた 景色が変わった違和感のような些細な痛みから やがて来訪する刺激に覚えが始まる 涙も出ない心の無慈悲さは体との蟠り Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩148「紙で切った」

          詩147「呼吸」

          「呼吸」 息を吸う この部屋には一人 息遣いに耳を澄ませば その音を吸い込んで 部屋の中は二人分 Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩147「呼吸」

          詩146「浮遊」

          「浮遊」 傘を差せば宙に浮くような世界では 誰しも四角い丘に佇んで 冷たい夕日が沈むのを待っている この世界は白々しい 白夜は琥珀色をまとった白昼夢か Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩146「浮遊」

          詩145「本を読む」

          「本を読む」 人間がこれまで本を読んで来た その姿の美しさを知った 幻想に迷い込む真剣な眼差し 知性が洗練される渦巻く瞬間を垣間見て 人が龍になるその時だと知る Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩145「本を読む」

          詩144「階段」

          「階段」 階段の一番下の段に腰掛けて 八雲の『怪談』を一話読むごとに上がってみた はて、随分と読み進めたが踊り場に差し掛からない 本から目を離してみようとすれば 寝床で目覚める夏の冷や汗 Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩144「階段」

          詩143「檸檬」

          「檸檬」 爽やかな酸味を欲する酷い暑さの日だ 涼を求めて書店へと駆け込んでみた かつて梶井は書店に檸檬を置いたが 今や書店は梶井の『檸檬』を置いている 弾けた『檸檬』に青葉茂る桜の樹の下で何想うか Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩143「檸檬」

          詩142「殺められた声」

          「殺められた声」 言論の封殺によって青磁は艶を失くし 表現の自由によって芸術は悪用される ひび割れたんか?と等と耐えねばなるまいか 稚拙に暴れるほど下品じゃなかったし 人は命の前にすべてを涸らし スーパーマーケットの前で小銭を握り その声をじっと押し殺していた Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Zero Publication©️ 2023

          詩142「殺められた声」

          詩141「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」

          「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」 吾輩は猫であった 前世の記憶などない 多分猫であったと思っている 寝るのは好きだし気まぐれだらけ ただ尻尾の振り方は思い出せていない 吾輩は猫であったと思う 確証なんてない 犬より猫が好きだ 日向ぼっこがたまらなく好きで 朝は早いし夜になればうずうずする 吾輩は猫になりたい 今は望みでしかない 人間なんて面白くない しかし猫も大変である 野良となれば長靴を履いてる暇もない 吾輩は今のところ人間である 授かった名前も家族もある 猫のよう

          詩141「猫の踪跡 (吾輩は猫だった)」