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なんだか今日はブギー・バック

外出自粛ですっかり伸びた髪を切ろうと、2日前に買ったVANSのOLD SKOOLを履いて家を出る。住んでいる街が明日、梅雨入りするらしい。今日はこんなに晴れていて暑いのに本当だろうか。もし本当ならこの日差しをもっと満喫しないと勿体ないな、雨の日に新しいスニーカーは履きたくないもんな、先週も観たのに『天気の子』がまた観たいな、そんなことを考えながら歩いていたら、くるりの『東京』がイヤフォンから流れてきた。シャッフル再生はたまに自分の心を見透かされているような気がするけど、自分の好きな音楽しか入ってないんだからそりゃそうかと頷く。あい変わらず季節に敏感にいたいもんだ。

うっかり川に来ていた。あーあ、今日は髪を切るのを諦めよう。「髪を切るなら雨の日でしょ」という黄色いPOPを脳内に貼り付けた。川を眺めながら椿屋四重奏の『紫陽花』を聴いていたら昔好きだった子を思い出しそうになったから、慌てて発泡酒を買って記憶を流し込んだ。当たり前みたいな顔して24時間365日アルコールが買えるコンビニがそこらじゅうにあるの、ウケるな。スーパーにはストロングゼロの偽物みたいのも100円で売ってるしな。感謝、般若。

アジカンを聴きながら歩いて、こりゃあもう『ソラニン』を観るしかないっすよと自分に話しかける。「浅野いにおが描く女の子みたいになりたい」と笑っていたあの子は元気だろうか。エヴァの映画はもう、一緒に観に行けないね。あい変わらず俺は宮﨑あおいに敏感にいるよ。

家に帰って岡村ちゃんを聴きながら踊っていたら、急に『モテキ』を観たい気分になった。ドラマ版で土井亜紀を演じた野波麻帆がめちゃくちゃ好きだし、土井亜紀は今でも理想の好きなタイプだ。あと『モテキ』の話をする時は、「俺は久保ミツロウ作品は『3.3.7ビョ-シ!!』の時からファンだから」とアピールするような器の小さな人間だ。あの漫画で新宿に憧れたんだ。

話が逸れたけど、逸れるもなにもないんだけど、『モテキ』の映画を観た。もうダメだ。耐えられそうにない。そこには今でも憧れと理想と長澤まさみの破壊力があって、森山未來の設定と同じ31歳になった俺も長澤まさみといい感じになれるんじゃね?なんて思った。思ってしまった。心のなかで小さく宮﨑あおいに謝った。公開された当時のことを思い出す。同じバイト先で付き合っていた彼女が観たいと言うから一緒に行ってみると、終わったあとに「よくわかんなかった」と言われた。しょうがない、合わなかっただけ。誰も悪くない。朝起きた時にDaft Punkを流していたら「うるさい」と言われてAAAを流されたり、ドライブをしている時にRadioheadを流していたら「暗い」と言われて西野カナを流された、それらと同じこと。優劣じゃない、ファンキーモンキーベイビーズで泣く人がいるだけ。俺がドクターマーチンで君がムートンブーツだっただけ。誰も悪くないんだ。こっそりエヴァの映画を違う子と観に行ったのは俺が悪いんだけどね。

やたらにスニーカーと服ばかりを集めていたのに、今ではUNIQLOとGUに行ってばっかり。駅前のスーパーは野菜が高いからと汗だくで1km先のスーパーまで歩いてみたり。

「夜ごはん、そうめんでいい?」
「シチューがいい」
こんなに暑いのになんでだよと言いかけて飲み込む。AAAだっていい曲があるもんな。

「にんじん入れる?」
「小さく切ってくれるなら」
西野カナの歌って共感できるもんね。恋だけじゃなくて友情の曲だってあるんだよ。

「家に牛乳あったっけ。まぁ買っとくか、どうせ飲むし」
悪くない悪くない。ドキドキすることも感動することも、怒ることすらずいぶんと減った30代だって。今ならファンキーでモンキーでベイビーズな曲だって泣ける気がするし、君のつぶやく「病んでる」にふぁぼが押せる気がするよ。

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