見出し画像

私たちのナラティブツリー01

私の園では「ナラティブツリー」といって、保育者一人ひとりが書いたエピソード記述を共有しあう試みをしています。

運用方法はシンプルでEvernoteでエピソード記述を共有し、園内SNSに他の職員に周知します。エピソードを読んだ職員はSNS上で「いいね」を押したり、コメントしたければ自由にしていきます。

書くのも読むのもリアクションするのも義務ではなく、書きたいときに書き、読みたいときに読み、反応したければ反応します。

ナラティブツリーという試みを始めようと思ったのにはいくつか理由があります。

1つ目の理由は記述とその共有を通して、それぞれの保育者の個を磨くとともに、同僚性を育むこと。
保育者としての「私」を書くことであらわし、それを読み合うことで一緒に働く保育者がなにを感じ、考えているかの共有を通して、ともに保育をする「私たち」を練り上げていこうと思ったのです。

2つ目の理由はもっと状況的なものです。
私たちは2019年に新設される認可保育園のメンバーとして集まりました。私や主任など数名をのぞいてはほとんど保育経験のない集団でした。経験年数の浅い(ほとんどないといってもいい)集団が、保育というこの複雑な森に分け入るときになにを手にしていればいいのでしょうか。

マニュアルの類は役に立ちません。
保育というのは文脈的、状況的であり、それゆえにそのときそのときの動的な理解と判断を求められるからです。

保育においてその動的理解、判断ができるということは、多数の文脈や状況に自分自身も含まれながら晒されることを通して、理解や判断そのものが多様にあるということと、その自分の理解、判断によってさらに多様な文脈や状況が生まれていくことを経験することから生まれてきます。

そうであるならば他者の経験した文脈的、状況的な出来事の群れをなるべく数多く、まるで雨を身に浴びるように参照できることが、明日の保育に役に立つはずです。

保育の現場は、眠れば、また明日もやってくる。これは保育者にとって動かしがたい現実です。

今日一日の出来事のなかから、個々人がいくら省察をかき集めたとしても、初心者にとっては圧倒的にその数が足りません。数が足らないどころか、最初のうちは「目の付け所」すらわからず、なにを振り返り、なにを心に置き、なにを心から手放さなければならないかもわからないでしょう。

経験年数の浅い保育チームである私たちにとっては、いわゆるgood practiceはまだ作り出せません。それを追い求めるよりも保育者個々人が保育の1日を過ごして、なにを感じたのか、その人のナラティブ(語り)を共有しあうことを通して、知恵を縒り合わせていく、それが私たちの状況的な選択でした。

方法としてエバーノートや園内SNSなどwebを使ったのは、園内研修はもとより会議時間すらままならない日本の保育の現実というもう一つの状況が関係しています。

以上のような意図をもって始めたナラティブツリーでしたが、実際に運用していってみると意図を超えた効果がではじめてきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?