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3Dプリンタでボタンカバーを作るワークショップを開催しました

先日、東京都文京区に2023年にオープンした工作室「もくもくハリネズミ」の文化祭「もくはり文化祭2023」(2023年11月19日開催)に参加して来ました。

工作室の3Dプリンタを使わせてもらえるとのことで、初めて3Dプリンタを使う人向けに、私が初めて3Dプリンタで作った「ボタンカバー」を、気軽に作れるワークショップに仕立ててみました。

装飾ボタンカバーの構成

装飾ボタンカバーはボタンに直接被せるボタンカバーと、そこにはめる装飾パーツに分けています。ボタンカバーはボタンの寸法に合わせて作る必要がありますが、小さくて済むため早く安く作れます。
装飾パーツはボタンカバーとのはめ合わせ部分を同じ形状にして使い回すことができるようにしています。

ボタンカバーと装飾パーツ

装飾ボタンカバーの設計

ボタンカバー

ボタンの直径、高さをもとに、ボタンを覆い隠せるサイズのボタンホールを作り、その上面に装飾パーツを取り付ける6角穴を作ります。
穴を6角にした理由は、はめ合わせの問題の解消のためです。装飾パーツ、カバーの両方を円形の穴にすると、入らないことがほとんどでした。実は、3Dプリンタでは寸法精度が思ったほど出ず、円も楕円に出力されており、はめ合わせができません。
もくはりのオーナーのきさいちさんにアドバイスをもらい、片方を多角形にして、接触部分で押し付けて留める方法を試したところうまくいきました。角ばらせた方がゆがんで使えなくなるのが早いと考え、ボタンカバーの方を6角、装飾パーツの方を円柱にしました。(装飾パーツは使いまわすため)
またボタンにカチっとはまること+外しやすくするように、ボタンを覆う外周部分は186°としています。

装飾パーツ

作りたい形(今回はトランプの柄)を設計して、2mmの厚みにします。
一番スペースの取れる部分(適当)に直径4mm、高さ2mmの円柱を追加します。円柱がボタンカバーの6角穴に入って固定されます。
厚みを2mmにした理由は、強度のためです。3Dプリンタは内部は20%-30%の充填率で、結構スカスカなので薄いと付け外しのときに折れます
円柱の高さを2mmにした理由は、いくつか試して選んだだけですが、円柱の根元と先端に0.5mmのFiletを行っているので、あまり短いとボタンカバーから簡単に外れてしまいます。根元のFiletのRを小さくすると、取り外しの時に折れやすいです。

ワークショップの進め方

今回のポイントは、自分の服のボタンにあわせたボタンカバーという「モノがカスタムメイドで作れる」という点だと考えて、ワークショップとしては設計から3Dプリンタで出力するまでの簡単な流れを説明し、最初の設計のパラメータをワークショップ参加者が決め、専門知識が必要な部分は私が実施するような設計にしました。
ワークショップは最大4名で時間は1時間と想定してワークショップの設計を行いました。

①寸法測定

参加者にボタンの寸法を測定してもらいます。
ぴったり入る設計をするには0.1mm単位で正確に測定する必要があり、ノギスを使う必要があります。
ノギスを使ったことのない方がほとんどだと思うので、ノギスの使い方を説明してボタンの寸法を測っていきます。
必要なのは幅と厚みです。
念のため、ダブルチェックとして私が測定して数値が一致することを確かめます。
今回、1回寸法測定ミスがありました。ボタンの寸法を測っていましたが、ボタンを留める糸が分厚く嵌らないパターンでした。糸の部分も込みで寸法測定が必要でした。一度作り直しが発生しました。カバーだけなら数分で作れるので、パーツを分ける設計にしておいて本当によかったです。

②3Dモデル作成

ボタンの幅(直径)と厚み(高さ)を測って寸法測定表に記入すると設計に必要なパラメータが出力されるようなExcelを用意しました。

寸法測定表

一人一人の図面をイチから作る時間はないので3D CADであらかじめ用意してあるボタンカバーの各パーツの寸法を測定結果に合わせて変更していきます。
3D CADを見るのも始めての方が多いので、実際に図面が変わっていくところをみてもらいました。
Excelの表のタイトルと3Dパーツの名称を合わせたり、3Dパーツの名称に設計寸法の値も記載して間違いの防止に勤めています。

ボタンカバーの図面

寸法を入れ終えて再計算すると、Filet(角の丸め)まで対応した図面ができるので、stl形式でエクスポートします。ファイルを取り違えないように、寸法測定表で、受付Noと名前入りのファイル名命名しています。

③装飾パーツの選定

今回はトランプの柄のハート、スペード、ダイヤ、クローバーから一つ選んでもらいます。

④3Dプリント

②でエクスポートした図面と、③で選択した図面を3Dプリンタ用のソフトに読み込んで、位置合わせなどを行って出力します。
装飾パーツは円柱が横向きになるように出力すると円柱が割れづらく丈夫になるようですが、時間短縮と出力後のサポート除去が不要になるように配置しています。
3DプリンタはAnkerMake M5。ボタンカバーで3分、装飾パーツで6分ほどかかります。

⑤色塗り

出来上がった装飾パーツに好きな色を塗って完成です。

ワークショップの振り返り

集客面

ワークショップ参加を決めてから数ヶ月の時間がありましたが、前日までボタンカバーと装飾パーツのはめ合わせ部分の設計を検討していたためほとんど告知できずにいました。
結果として参加者は6名も来てくれましたが、解決できる(する)と信じて早めに告知する度胸が必要です。前々日に家の3Dプリンタでできたと思ったものが、実際の3Dプリンタを使うとできないこともあり、前日の夜まで粘っていたので本当に開催できてよかったです。

準備(ワークショップの設計)

ノギスの使い方や、全体の流れがわかる一枚の資料を用意できればよかったと思いました。同時参加人数も多くなかったので直接コミュニケーションを取りながら実施できましたが、4人同時だと破綻していたと思います。
また、寸法測定表のExcelは当日の朝準備しました。都度計算していると間違えるので準備してよかったです。

ボタンカバーの穴と装飾パーツの円柱の寸法がずれると嵌らない問題はまだ残っていたので、装飾パーツは予備を3点ずつプリントしていました。結果、1つ固すぎて嵌らないパーツがあったので交換して対応しました。備えあれば患いなし。固い方なら削ることもできますが、緩い方だと交換しかできないので、予備は必要です。

準備(技術面)

3D CADには商用利用も可能なFreeCADを使いました。(CAD歴はFusion360を2カ月3作品程度でしたが、Fusion360からの乗り換え1週間くらいで何とかなりました。)
10年前はSketchupで作り、しかも一体型だったので今回パーツを分けてカチっと入る設計をするのに本当に苦労しました。世の中の設計者の方はこういうノウハウをたくさん持っているのだと思います。本当にすごいですね。

寸法を測って手作業で図面を修正しましたが、Pythonのプログラムで自動化できそうです。設計に手いっぱいでそこまで手が回りませんでした。

今後の展開

装飾パーツのデザインを増やす

直径4mm、長さ2mmの円柱をつけておけばボタンに留められるので、立体のパーツなど作ってみたいと思います。あまり重くなければ樹脂以外も大丈夫だと思うので、その辺りは設計上問題ない方式を検討しつつデザインを増やして販売したい。

ボタンカバーの図面作成の自動化

Pythonを使って自動化できるようなのでWebサイトから寸法入力すると、AnkerMake M5のプリントデータが作れる仕組みを導入したいと思います。
どのボタンのカバーだったかわかるような刻印を入れるように出来るとなおいいです。

ワークショップの定期開催

気軽に3Dプリンタを使ってみることができるので、3Dプリンタ入門のワークショップとして定期的に開催したいと思います。果たして単体のワークショップとして需要はあるのだろうか…。興味ある方はコメント欄でご連絡ください!

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