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フロ読 vol.17 森博嗣 『夏のレプリカ』 講談社文庫

通勤電車からのフロ読。
 
本のセレクトは図書館のリサイクル文庫でただで手に入れたため。森博嗣の一連の作品は『すべてがFになる』以外、読んでおらず、辛うじて西之園萌絵と犀川先生だけ知っていて、他の登場人物は全て初対面。同時並行で進捗中のマジシャンの事件とやらも何のことやら知らないまま読み進める。
 
全体の語り部を務める簑沢杜萌の秘め事に触れる第八章から俄然面白くなってきた。読みながら人の記憶や認識とは何だろうと考える。
 
わざと思い出せないのではなくても、人に言えないことはあるし、語らないが故に認識しないでいられることもある。でも、やはり大事なことこそ語れない。こういうもどかしさこそが小説というジャンルの醍醐味だろう。
 
森作品の少女マンガテイストは正直言うと苦手(特に男性の心理が描けているように思えない)なのだが、それをはるかに上回って、概念と現実の差異を使った焦らしが上手いので、ついつい頁をめくってしまう。
 
体言止め…違うな。話の切り方が実に上手。まだ結末は見えないが、きっと初めてアガサ・クリスティを読んだ時のような「まさか!」という心のおののきを今回も提供してくれるのでは。まことに切りがたいが、萌絵が簑沢邸を去るタイミングでフロを上がることにする。
 
ちなみに私の最も好きな探偵は『アクロイド殺し』の犯人の姉ちゃん。この話はそういうタイプの探偵に決着して欲しい。

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