一幕

列に並ぶその人が気になる。いつしかそちらの方に気がとられている自分に気づきハッとした。
「2枚で、おまかせで」
私の順が回ってきたのもやっとの認識で絞り出すようにそう告げた。
ここはストリップ劇場。私はステージに立つとあるお姐さんが目当てできている。
お姐さんとの出会いは地元にある劇場で、参加型の魅せる演目に目を奪われた。がちっと自分の中で嵌る音がして、そこからそのお姐さんが出る劇場に足を運んでいる。
きっかけはそれだったが、どんどん通う内に今自分が悩んでる悩みが払拭されるような表現に私はどんどんのめり込んでいった。
私の悩みは女性であること、女性であり女性が好きなこと、男性に搾取されるような男性優位なこの社会のこと。
その悩みを打ち消すような、圧倒的自立でいて自由で背中を押してくれるそんな表現をするお姐さんの存在が私の悩みを薄めてくれている。
でも最近はそんなお姐さんともう1人気になる存在がいる。
通うようになって、お姐さんの目当てのお客さんは誰かなんとなくわかるようになった。
顔見知りってやつだ。その中で目立つ1人の女性。
最初見かけた時はフェミニンなワンピースにロングの髪、次に見かけた時は中性的なカジュアルジャケットにハンサムショート、その次に見かけた時にはオフィスカジュアルでマニッシュな感じ。
一瞬じゃ同じ人だなんてわからない。ただお姐さんと話し終えた後に客席側に戻るときの笑みは同じでその満面の笑みが素敵で印象的だった。
彼女だと気づくとなんだか嬉しくなった。
彼女の男らしいとか女らしいとか気にすることなく自由に行き来している感じがその振り幅がすごく羨ましく思え、いつしか憧れの情を抱くようになった。


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