見出し画像

死に対しての捉え方が変わる映画

 不謹慎なのかもしれないがラストに微笑んでしまった。観終わってから何とも言えない幸福感と安堵に包まれた。「永遠の僕たち」は、「死」というテーマを繊細に、そして様々な目線で描いた映画である。正反対のように見える二人が、死という唯一の共通点を目指し手をつないで歩いている。残酷なように見えるが私はこの映画は完璧なハッピーエンドであると答えることが出来る。

「永遠」のもつ重み

 はっきり言ってこの二人の主人公にとって「永遠」という言葉は全くふさわしくないだろう。時間というものが有限であることを知っている彼らだからこそ、一日一日の時間を「死を迎えるための準備期間」として過ごすことが出来る。私たちは彼らに当たり前なのに普通に生きていたら考えることも無い現実を突きつけられるのだ。だからこそ、誰もがこの映画の内容に共感することが出来るのだと思う。オープニングから重々しく一定の低い温度で続くこの映画が最高の温度を示す瞬間に「永遠」の持つ意味を知り、思わず涙してしまうのである。

最高のプロポーズ

 両親の影響で「死」という人間の終わり対してネガティブでナイーブな感情を持っているイーノックが、アナベルに終わりを迎えるまでにしたいことをしようと提案するシーンは私が一番お気に入りの場面である。自分にとって特別な存在ができることで人はこんなにも変わることが出来るのかと「愛」の偉大さを感じてしまう。「準備をする」なんて他の人が聞いたら不謹慎極まりない発言だが、彼らの関係ではその言葉を理解し合うことが出来るのだ。この言葉は、最期の時が来るまで一緒にいようというイーノックからのプロポーズだったとも捉えることが出来る。言葉にできない感情をアナベルのお陰で言葉にすることが出来るようになるイーノックと、イーノックのお陰で人生を全う出来たアナベルの「ふたりだけの世界」が、何よりも美しく愛おしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?