見出し画像

【29日目】神さまが「欲しかったもの」とは(セカイのトリセツ)


※ご注意※
 『モトの話』の最終奥義として【神さま】の話をしています。
 ですがこれは

  • 特定の宗教への勧誘

  • 創作した宗教団体への勧誘

  • モトの話への信仰の要求

を目的としたものではありません。


◆『個性』というものがあるのはなぜか

 前回は「周囲の言葉と自尊心」という話をしましたね。その続きです。

 さて、みなさんは
「自分とは何か?」
と聞かれたら、どう答えますか?
 多分ですが、名前・職業や会社名・住んでいるところ・年齢・それから好きなことや好きなもの。そういう答え方をすると思うんです。
 これ、どうしてそういう答えを言うんでしょうね? 考えてみたことありますか?
 単純に言うとこれらは「自分の特徴」ということになるでしょう。特に「名前」なんてものは、一人一人別のものがついていますので「自分の特徴」としては分かりやすいし、伝えやすいですね。

 ところで、こういった「特徴」なるものが

「どうして『ある』のか?」

と、考えてみたことありますか? どうしてあなたに、あなただけの「特徴」や「個性」があるのでしょうか?

 それは、周囲に人がいるからです。

 もし、このセカイに人間がたった一人しかいなかったら、その人には多分名前すらないのではないかと思います。名乗る必要がないからです。
 ここで、人が二人以上になると、その時点ですでに「相手の特徴」という概念が発生します。なぜなら「比べることができる」からです。二人のうち、背の高い方。カラダが大きい方。髪が長い方。そういうものは「比べて」初めて分かることです。自分ひとりしかいないセカイだったらこの「より〇〇な方」という概念そのものが、生まれません。


◆地獄が創られる『前』の神さま

 ということをふまえて。

 【26日目】で「天国のことを復習してください」と書きました。ここであの話に繋がります。天国というのは

【両手じゃんけん】

の世界だ、と前に書きましたよね。

 天国というのは僕たちが死んだあとに「帰る世界」のことを指します。ここではすべての【個別のドラマ】が【両手じゃんけん】の状態で起こる、と上級編やこの本の【15日目】で書きました。個別のドラマが両手じゃんけんの状態で起こる、というのは、どんな事件も「自分の考えたとおりになる」ということです。今まで自分が好きだった相手全部をいっぺんに呼び出して大型クルーザーで寿司パーティなんかも余裕でできます。しかも一瞬で。何もかもが思い通りになるんです。
 ただし、思ったこと「以外」のことは何一つ起こらなくなります。すべてがコントロールできてしまうんです。これが退屈でしかたなくなるから、僕たちは地獄へやってくるんだ、という話をしましたよね。

 それで、何が言いたいのかというと……実は僕たちには「死後の世界である天国に飽きたら地獄(この世)に降りていく」という『選択肢』がある、ということになります。かつて天国の世界で暮らしていた僕たちが何らかのきっかけで「地獄に行こう」という選択をした結果として、僕たち『地獄の住人』が今、ここにいるわけですから(あなたはその選択を全く覚えていないと思いますが。もちろん僕も覚えてはいません)。

 一方、ここのところ書いている【神さま】の話です。【神さま】は「うに」なんでしたよね。このセカイの全部の命を集めたカタマリが【神さま】なのでした。そしてそれと同時にこの「天国」「地獄」というセカイを創ったのがこの【神さま】なんだとすると……
 僕たちの宇宙である【地獄】ができる『前』に【神さま】が「天国に飽きたなぁ」と思っても、

行く【地獄】がなかった

ことになります……だってまだ創ってないんだから。だから僕たちのように「地獄に行ってみよう!」なんて『選択肢』が、そもそも存在しなかったはずです。
(天国と地獄では「時間」「時刻」の概念が違うので『前』というのは便宜上の話です、念のため)
 しかも、です。【神さま】は「一個の命のかたまり」でしたよね。ということは、僕たちの宇宙ができる『前』、現在の天国にあたる世界は

【神さま】だけしか存在していない状態

であったのではないかと推測されます。


◆一人ぼっちの神さまが欲しかったものは

 今回の冒頭に「一人しかいない世界では『特徴』という概念が発生しない」と書いたのですが、【神さま】はおそらく、自分しか存在しないその世界で、こう思ったんでしょう。

「私は、誰なんだ」

 一人ぼっちの【神さま】は、「自分以外の何か」がいるセカイで、自分じゃない者の「都合」を発生させる仕組みの必要性をこのとき感じたのではないか、と僕は推測しています。自分の思い通りにならない「他者」というものがいないことには、自分自身の『特徴』が生まれないからです。
 だけど、天国にいる【神さま】は、やっぱり一人なんです。一人しかいない世界でただ「存在している」だけだったんです。そんな世界でどんな「シナリオ」を書いたとしても、見せる相手すらいないんです。

 というわけで、そのころの【神さま】が一番欲しかったものが

「他者」

という存在だったのではないかと思っています。他者がいないことには
『自分自身というものは何か?』
という疑問の答えが永遠に分からないからです。

 だからわざわざ【地獄】なんてものを創ったんじゃないかと、僕は考えています。迷惑な話です……。


←前の話
次の話→


「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)