見出し画像

【4日目】二つの『モトあつめ』(ニンゲンのトリセツ・改)

◆ココロというものは「やりとり」されている

 前回【3日目】の内容を踏まえると次のように話がまとまります。

1.ココロのモトが増えると幸せを感じる
2.ココロは注目したものにモトを飛ばしている

ゆえに、

3.誰かが自分に注目したら、ココロのモトが増え、幸せを感じる

ということになります。分かりやすいでしょ?

 それで、前回から注目、注目と書いていますが、どうやって「注目」されるかは、実は特に決まっていません。どんな方法でもいいので「注目」さえされれば、相手のココロがモトを送ってくれますし、自分が何かに「注目」すれば、そちらにモトが飛んでいきます。

 ものすごく簡単な事例を挙げましょう。たとえば、誰もいないところで急に肩をトントンとたたかれると、びっくりするでしょ? あれは「肩を叩かれて相手に注意が向いた(注目した)」から、ココロのモトがそちらへ飛んでいって「急に減る」から起こる感情の変化なんです。
 ほかにも、あなたが誰かにいきなりひどいことを言われたり暴力を振るわれたりすると、怒ったり悲しくなったりしますよね。あれも「相手に注目してモトが減った」から出てくる感情なんです(イヤな気持ち=モトの減少)。
 これを逆に考えると、こちらが誰かを怖がらせたり、驚かせたりすると、こちらのココロに相手のモトが「勝手に入ってくる」ことになります。実はこういう「メカニズム」にそって、僕たちはときどき誰かに意地悪や嫌がらせを「したくなる」のです。こちらのココロのモトが増える(=いい気分になる)からです。

 このように、僕たちは日常生活の中で常に「誰か」「何か」との間でココロのモトを増やしたり減らしたりしています。言いかえると、僕たちは普段からそれと知らずに、具体的な【量】による

ココロのやりとり

をしている、ということです。これは気遣いや心配りといった、昔から知られている「心の交流」のようなものが、実は「具体的なココロの材料の増減」をともなっているものだ、ということを表しています。


◆『一番目のモトあつめ』……奪うモトあつめ

 ところで、僕たちは誰もが

「幸せな方がイイ」

ですよね。その「幸せ」の具体的な中身(金持ちになる・友人を増やす・恋人ができる・長生きする、など)は本当に人それぞれですが、どんな方法であれ「幸せになる」ほうがイイ、というのは万人共通だと思うんです。
 実はこれは【3日目】で書いた「ココロの機能」の問題でして、ココロというものは僕たちに「幸せな方がイイ」と思わせることによって、常にココロの量を増やそう、増やそうとしています。ココロがこういう性質を持っているからこそ、僕たちは「不快」を避け「快」を求めようとするわけです。お腹が空いたらご飯を食べるし、どうせ食べるなら美味しい方がいい、そういうことです……生き物の原始的な「機能」であるとも言えますね。
 ですから僕たちは日ごろから、意識的・無意識にかかわらず常に

  • 「モトを集めよう」と思いながら生きている

ということになります。これまで、みなさんには『モト』という概念はなかったはずですが、実際には「幸せになりたい」=「モトが集めたい」と無意識に思っていた、ということなんですね。そしてもちろん、僕たちはその「欲求」に従って行動をしてきたはずです。ですよね?

 さてここから先、このように「自分からモトを増やそうとする行動」のことを

・モトあつめ

と呼びます。この「モトあつめ」という言葉は『モトの話』の基礎中の基礎となりますので、よく覚えておいてくださいね。
 さらに、先ほど書いた「誰かに注目される」という要領でおこなう「モトあつめ」のことを

・一番目のモトあつめ

と呼びます。誰かほかの人から『奪ってくる』モトあつめのことです。


◆『二番目のモトあつめ』……増やすモトあつめ

 「一番目」と名付けるのだから、当然「二番目」もあります。一番目のモトあつめは、人の注目を集め、自分にモトを飛ばしてもらうことでココロの量を増やすモトあつめ……いわば『奪う』モトあつめです。それに対して「二番目のモトあつめ」というものは『自分で増やす』タイプのモトあつめを指します。

 実はですね……モトというものは「やりとり」以外でも増やすことができます。
 どういうことかというと……僕たちのココロというものは、モトの量が増えると「幸せな気持ち」になるんでしたよね。これを裏返すと「幸せな気持ちになっているときは、モトが増えているとき」ということが言えるのですが、僕たちの日常の生活やこれまでの過去を振り返ってみると、僕たちが「幸せな気持ちになっているとき」というのは、なにも相手に注目されているときだけではなかったはずですよね。
 たとえば、家で一人で映画を見ているとき、ジーンと感動して涙がぽろり……幸せなひとときですよね。他にも、最近ブームの「ヒトカラ」(一人でカラオケを歌うこと)なんかでも、好きな曲を好きなだけ大声て歌ったらスッキリします。幸せですね。
 こんなふうに誰ともモトの「やりとり」なんてしてないのに「幸せ」を感じている……つまり「ココロのモトが増えている」という現象が発生することがあるんです。ご経験、ありますよね?

 これが

・二番目のモトあつめ

という現象です。モトという「ココロの材料であるツブツブの個数」は、なんと……僕たちが何かをやった結果「勝手に増える」ことがあるんです!

 ここだけ聞くと「んなアホな」という話だと思うんです。だって普通に考えたら「個数がある何か」が『勝手に増える』なんてありえません。朝起きたらお財布の小銭が勝手に倍になってたら嬉しいけど、びっくりしてしまいますよね。そんなこと、考えられないですから。
 ですが、この世界にあるさまざまな「モノ」のなかで唯一、このココロの材料である『モト』だけは、

  • 空間に突如「出現する」性質がある

らしいのです。そうでないと、ココロの量が「勝手に増える」ことの説明がつかないんですね。

 とはいえそんな「性質がある」なんて急に言われても、全然納得できない読者のみなさんがほとんどでしょう……ところがどっこい! こういう「不思議なこと」にもちゃんと「なぜ空間に突如出現する粒子が存在できるのか」という説明をご用意しています。ものすごく不思議な現象なんですが、これもしっかりと「理論」だということなんです。
 ですがその「理論」はものすごく複雑でして、それこそ「この世界がどういう世界で、その空間と時間がどういう構造でつながって……」という話(時空論)をしっかり理解していただかないと、完全には説明できないんです。ですからシリーズ第五巻『エキスパート編』できちんと説明しますので、申し訳ないんですが今はまだ「ウサン臭い」まま話を続けさせてください。

 ともかく、僕たちのココロというものには、誰かから奪ってくるだけでなく自分自身のチカラで「モトを増やす」という機能があるらしいのです。この「自分でモトを増やす」機能を使ったモトあつめのことを

・二番目のモトあつめ

と呼びます。
 この『二番目のモトあつめ』というのは、実はこの『モトの話』ではものすごく重要な概念です。なぜなら僕たちが本当に「幸せな人生」を「自分で造り出そう」と考えているなら、この「二番目のモトあつめ」を「意識的に、能動的に行う」ことがその唯一の方法だからなんです。
 とまあ、その辺は第二巻や第四巻で、もっともっとじっくりやりますので、今は「自分一人でも幸せを感じる方法ってあるよね?」くらいの感覚でこの『二番目のモトあつめ』を理解してください。


◆モトは『消滅』することがある

 『二番目のモトあつめ』の話が出たついでに、ここでモトについてのもうひとつの大事な性質を書いておきます。
 この『二番目のモトあつめ』によって「空間にモトが突如出現する」と書きました。こういう現象が起こるんだから、逆に「空間のモトが突如消滅する」こともあるんじゃないか……鋭い読者のみなさんはそう考えていらっしゃるのではないかと思います。
 その通りなんです! 空間のモトは「突如出現する」こともあれば逆に「空間から消滅する」こともあります。これまた不思議ですね……。

 どんなときに消滅するのか? といいますと……【3日目】で書いたとおり、僕たちが何かに「注目する」とココロはそちらに向かって「モトを飛ばしている」んでしたね。その結果、ココロのモトが「減る」という現象が起こると。では、そのとき「減った」モトはどこに行ったのか?
 あのとき書きましたが、注目した先に「誰かのココロ」があると、そのココロが吸収して「自分のモトの量を増やす」のですが(相手が『一番目』をやるということ)、それ以外の場合……部屋のポスターや壁のシミ、お湯の沸いたヤカンやドアのきしみ(音)……そういった「生き物じゃない何か」に注目して飛んでいったモトは、受け取り手のココロがない場合、なんと

  • この世界から消滅してしまう

のです! これは「たばこの煙みたいに、拡散して見えなくなるけれど分子は存在している」というようなものではなく、存在そのものが、この世界から「消滅する」ということを意味しています。完全に「消えてなくなる」のです。
(なんでそんなことになるのか? という「理論」も、エキスパート編でみっちり書きますのでお楽しみに)

 これが何を意味しているのかというと……実は「一人で過ごしていると”さみしく”なってくる」という現象が起こる理由に直結しているんです。
 ほら、モトが減ると「ネガティブな感情」「イヤな気持ち」が出てくるんでしたよね。そういうもののひとつ「さみしさ」が出てくるメカニズムはこうです……一人でいるときって、何もしていなくてもたいていは「部屋のポスターや壁のシミ、お湯の沸いたヤカンやドアのきしみ」などに「注目」してしまっているものです。そういうときも当然ココロは「モトをそちらに飛ばしている」のですが、相手が生き物ではないのでそのモトは空間から「消滅」するわけです。こうして、僕たちのココロのモトがじわじわ減っていき、モトの減少を検知したココロが「モトが減って不快だ=さみしいぞ」という「気持ち」を出し始める、というメカニズムなんです。

 この例だけでも分かるように、僕たちの「気持ちの変化」を言葉で上手に「説明」できるのが『モトの話』の特徴です。便利でしょ?

/*-/*-/*-/*-/*-/*-

 今日説明したこと

  • 一番目のモトあつめ(奪うモトあつめ)

  • 二番目のモトあつめ(増やすモトあつめ)

  • ココロの材料であるモトの「出現」と「消滅」

という「新しい考え方」は、モトの話を進めていく上で、この先何度も何度も出てきます。ちょっと「不思議」すぎる部分もあるかもしれませんが、今は「そんなことが起こる理由もちゃんとある」ということだけを押さえておいてください。後でかならず「理由」を説明する機会を設けます(ずっと、ずっと先になりますが)。


←前の話
次の話→

「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)