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「こばなしけんたろう」の感想

タイトルそのまま、「こばなしけんたろう」を読了したので、感想を書きました。

短編小説として面白いもの。
企画として面白いもの。
あのコントの別バージョン。
舞台で観たいと思ってしまうネタ。
そんな作品が詰め込まれた一冊。

あと、装丁と装本が凄い。
見出し画像が、その写真だ。
カバーを外した表紙と裏表紙に印刷された、短編にまつわるデザインのスタンプ。
作品のテイストに合わせて変えた用紙の色とデザイン。
デザイン代も印刷代かかりそうなのに、良くやったなぁと思ってしまった。
装丁や装本好きであれば紙の書籍を買ってもいいと思う。

内容は、前述のように様々な形式をとっているので、"全部好き、全部嫌い"と好き嫌いがハッキリ分かれる物では無いと思う。
話として好きなのは、短編小説「落花 8分19秒」。小林賢太郎さんが好きな"面白くて、美しくて、不思議"な物語だ。
少しのトリックと淡々と描かれる情景。
たぶん絵を描いてから、文章を書き始めたんじゃないかしら。
ひまわり畑に、星空に、屋上からの眺め。
出てくる風景が、とにかく綺麗なのだ。
話は、切ないけれど美しい余韻を残すタイプ。

「セルフポートレートワールド」と「砂場の少年について」は、賢太郎さんの気配が透けて見えて、作者の意図には反するとは思うが、物語ではない視点で楽しく読んでしまった。
と思ったけれど、もしや、嘘と本当の境目を曖昧にした"自分史らしきもの"を作って、"虚構の小林賢太郎"を読者の中に作る遊びだったりして…。

「二人の銀座 コレクション」に関しては、替え歌を掲載するにあたり、JASRACに申請したり、作詞家さんのご遺族に許可を取っている。この一連の手続き込みで掲載されたと思うと、結構面白いと思う。あとは空耳的な手法があって、手間かかってるなぁと。

こんな感じで、読むたびに何か違う面白さを見つけられる作品だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

装丁と装本された方のインタビューがありましたので、気になる方はどうぞ↓




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