井上さんと石川さん

しなやかな感性と農業

「現代農業」の編集長石川啓道さんと、
山形県小国町の農家井上昌樹さんの対談が面白かった。

「現代農業」は、農家が書いて農家が読む、雑誌。
350ページのうち、半分ぐらいは農家が書く。
インタビューしてライターが書く、のではなく、
農作業が終わってから、本人が書く。

たとえば、よもぎで腰痛が治った記事がある。
よもぎはそこらじゅうに生えてる雑草で、
それを乾燥させて、座布団カバーに詰め、
それを腰に敷いて寝る。
マクラにも入れる、肩にもあてる。
よもぎはもぐさの原料だから、
そのままで温灸効果がある。
血行が良くなる。
腰痛が治る、という。

記事が出た途端に大反響で、
本人の連絡先を教えろという電話がひっきりなし。
いまどき「電話がかかってくる」ということろがすばらしく、
寄稿される原稿も手書きがまだまだだそうだ。

ほか、出版元の農文協(一般社団法人農山漁村文化協会)の職員80名が
毎日全国の農家を回って雑誌を売り、
話を聞き、原稿書きをお願いし、
毎日膨大な業務日報をメールで送ってくる。
編集部はそれを受け、読み、雑誌の企画を立てる。

完全に、マーケットインの雑誌づくりだ。

井上昌樹さんは、コメのほか、お花を育てている。
一風変わった野菜もつくっている。

職業としての農業と。
趣味としての農業を両立させる。
食べて美味しいもの、見て「ああ!」と感じるもの、
いずれも「その人の心に残す」ことを目指している。
だから、農家には
「感性が必要」
と井上さんはいう。

二人とも、小国町にある基督教独立学園高校の出身。
独立学園は、内村鑑三の

読むべきものは聖書
学ぶべきものは天然
なすべきことは労働

を教育理念とした学校。
少人数教育で、1学年25人が定員。
生徒の「自治の力」を信頼する。
学校行事や寮生活(全寮制)の運営を
できるかぎり生徒たちに任せている。
あえて「不便な環境」に生徒たちをおく。
スマホもPCもテレビもラジオも所有しない。
そのかわり、ピアノがあっちこっちにあり、
歌ったり楽器を弾いたり、
本を読んだり、手紙や日記を書いている。
もちろん、語り合っている。

小国町は4シーズンではない、と石川さんはいう。
春は雪が溶ける音から始まり、
溶ける雪の間からふきのとうが顔を出し、
ブナの木に新芽がいっせいにふき、
カタクリの花が咲き、
田んぼに水が入る。
田植えが終わるころには
カエルの大合唱が始まる。

「春だけでもこれだけの過程が
順番に進んでいきます」

夏、秋があり、そして雪で一切が、
音さえも隠してしまう冬が来る。

学ぶべきは天然、
なすべきは労働。