植田匠くん

アニマと目黒のさんま

植田工(うえだたくみ)くんがゼミに来てくれた。
アーティストで、
マリアさまをモチーフにした絵をよく描いている。
マリアさまっぽい女性がいて、子どもがいて、という。

たくみくんは東京芸大を出て、
いったんは就職するけど辞めて、
茂木健一郎さんのカバン持ちをして、
アーティストとして独立した。
茂木健一郎さんの小説『東京藝大物語』に
「ジャガー」として主人公で登場する。

いま、目黒駅のatreの階段の踊り場に壁画を描いている。
2階から5階まで、4枚の壁画を依頼されていて、
目黒駅だから「目黒」がテーマで、
1枚目は「目黒のさんま」。
ほかはまだ描けてない(11月19日現在)。

1日1枚のペースで描ければ、
ギャラ的に割の良い仕事、になるはずが、
たぶんもう3週間ぐらいたつんじゃないかな。
まだ1枚目。

きっとモチベーションが下がったり、
ほかの仕事を入れて防衛策をはかったりして、
1枚1ヶ月ぐらいで描くようになって、
割りに合わない仕事になって、
それがまたネタになって笑いを取り、
「しょーがねーなー」ということで、
新しい仕事が入ってくる、
という循環になるんじゃないかと思っている。

茂木健一郎さんから独立して絵で食べようとして、
絵が描けなくて笑いで絵を描く仕事を得て食べることになり、
それがまた笑いのネタになって絵を描く仕事を得て食べられる、
無限のループに入ってるような気がする。

たくみくんの「目黒のさんま」はアニメ的で、
そもそもアニメが描きたくて絵を練習し、
芸大に入り、
なんだかウロウロしている人生を送っているが、
ゼミ生から、
「まだアニメ、描きたいですか?」
と質問されて、
目を白黒させて言葉に詰まり、
まるでアニメのように驚いて、
「まさにそこなんだよね」
っていって、
アニメの語源の「アニマ」の話をした。

東京芸大に入る前に、
予備校で、「芸術とは何かを?」
という問いに躓いた。
それまでアニメが好きで絵を描いていたのに、
だけど「芸術とは何か」を自分なりに持っていないとわかったら、
それもそうかと思い直して、
芸術とは何かを考え始めたら絵が描けなくなり、
キャンパス上でも実際でも、
右往左往する人生が始まった。

アニメの語源の「アニマ」は、

生命のない動かないものに、
命を与え動かすこと

だ。(wikipedia)

その語源に惹かれて、
絵を描くことで世の中を変えたり、
世の中に価値をつくったり、
そうしたいから絵を描いている、
とすれば、
それは立派に「芸術とは何か」に答えを出しているし、
「アニマ」だからマリアさまを描いているのだ。

生命を与える仕事、っていいなあ。