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監督、そこは送りバントじゃないでしょう!

元同僚のトシさんからおもしろいレポートをもらった。

送りバントはムダ?

「野球における送りバントの有効性」
The effectiveness of the sacrifice bunt in the baseball

高校野球の甲子園大会全47試合のテレビ中継を録画し、
ノーアウト1塁、ノーアウト2塁、1アウト1塁
の場面で、
・送りバント
・盗塁
・ヒットエンドラン
・ヒッティング

のどれが有効な作戦か、
ランナーの「進塁率」と、
ホームに帰ってきて得点を上げる「生還率」を調べてみた。

野球では、バッターがヒットを打ったりフォワボールを選んだりして塁に出ると、
その選手を次の塁に進めて得点に結びつけやすくするために、
「送りバント」をする、というのがセオリーであり定石になっている。

ところが、それってホント? と調べてみたら、
意外な結果がでた。
なんと、送りバントはたしかに進塁率は高いけれども、
生還率はそれほど高くない。
むしろ、バントなんてせこせこせずにヒッティングしたほうが、
得点する率は俄然高くなる。

「野球における送りバントの有効性」より

ノーアウト2塁では、
       進塁率 生還率
送りバント  79%  62%
ヒッティング 55%  62%

1アウト1塁では、
       進塁率 生還率
送りバント  88%  11%
ヒッティング 41%  24%

となっている。

これは学生のレポートだけれども、
もっと精緻な論文でも同じような結果が出ている。
https://jcoachings.jp/jcoachings2012/wp-content/uploads/2016/03/a55af3f67100d72b362103e41eacc36a.pdf

それでも続く「送りバント」

送りバントするよりヒッティングしたほうが点数が取れる。
もうデータでは明らかになっているけど、
たぶん春の高校野球でも送りバントは花ざかりだろうなあ。
もしかすると、WBS(ワールド・ベースボール・シリーズ)でも、
「大事な場面」では送りバントのサインが出るんだろう。

はっきりとデータとしてでているけど、一度決まったことは変えられない。
データより定石、データより空気。

ああ、これって猪瀬直樹の『昭和16年夏の敗戦』だ。

満州事変を起し、日中戦争を戦っていた日本は、
アメリカとの戦争を始めるにあたって、
「勝てる?」
シミュレーションしてみた。
首相直轄の「総力戦研究所」、
若手官僚、軍人、民間人の35人が研究した結果、

「昭和16年12月中旬、奇襲作戦を敢行し、成功しても緒戦の勝利は見込まれるが、物量において劣勢な日本の勝機はない。戦争は長期戦になり、結局ソ連参戦を迎え、日本は敗れる」

これを無視して、日米戦争に。

練習を積み上げて技を磨いて試合に勝って、
憧れの甲子園までやってきた選手たちにバットを振らせず、
バントをさせて試合に負ける。
ああ……。

おまけ

両方のチームが負けるわけじゃないから、
どっちも送りバントしてどっちかが勝つんだけどね。

ちなみに、「1アウト1塁」、どう読みました?

one アウト イチ 塁

ですよね笑

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