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高いところが苦手だ。
いわゆる、高所恐怖症。

もしかするとそれって、気のせい? と思えてきた。

滝を見に行こう、というアベちゃんの誘いに乗って、
朝5時からクルマを飛ばして「降る滝」を目指す。

岩手県の西和賀には、女神山という山があって、
その登山の途中に、白糸の滝、姥滝、降る滝、という「女神三滝」がある。

クルマでガーッと登って標高を上げて、
駐車場から登山道に入り、
すぐに来たことを後悔した。

けっこうきびしい山道だ。
あとで観光パンフレットを見たら、
「険しい道のりであり、初心者には不向きです」
だからガイドを頼んで楽しい自然探索を!
と書いてあった。

アベちゃんと、いっしょにいったナカちゃんもは、
クルマの中で観察する限りにおいては山に慣れてそうだし、
わたしはアベちゃん信用してるし、アベちゃんはナカちゃん信用してるっぽいので、
まあガイドとしては大丈夫かな、と思ったら、
ふたりは山の中を走り回るトレイルランのランナーで、
なんとまあ、どうりで山道歩くの速いわ!
速すぎて、スタートからいきなり置いていかれそうになった。

わたしは高所恐怖症であるので、
歩きながら「どうか断崖絶壁に出会わせないでください」
と祈っていたら、出会っちゃった。

歩く道幅、ちょうどPC1台ぶん。
そこから下は、とってもきれいに黄葉してるんだけど、
まさか見下ろして眺めるわけにはいかない絶壁。

あああああああ、こんなところに来てしまった〜〜〜〜〜〜。

ほかにも、ロープを使って上り下りするところもあり、
絶壁ではないんだけど、それなりに恐怖心をあおってくる道あり。

211104高所恐怖症の正体

白糸の滝、姥滝、降る滝、みっつ一応見たし、帰ろうか、
とアベちゃんとナカちゃんとわたしが合意して、
956mの女神山への登山は中止にして、引き返すことにした。

ナカちゃんは、放送局を早期定年退職して、東京から大船渡(岩手県)に移住した。
移住して、トレイルランとか100kmを走るウルトラマラソンとかを主催するNPOを立ち上げている。

ナカちゃんに、「60歳過ぎてるのに、よく高い所怖くないですね」
と聞いた。
わたしは、50歳を超えるぐらいに高いところが苦手になり、
若いときにはぜんぜん平気だった登山が、苦手のトップになった。

ナカちゃんいわく、
「岩手に引っ越してきて、山を歩く機会が増えたから、
身体が馴れたんじゃないかな」
と。

たしかに! 普段は平らなところ、低いところばかり歩いているから、
いきなり高いところにいくと、身体が拒否反応をビビビビ出すようになる。
そうすると、本来はPC1台ぶんの幅があれば楽に歩けるんだけど、
(平らなところで歩くときも、それよりも狭い幅で歩いているはず)
馴れてない高度なので、脳みそがリスクを高く見積もって、
その結果、身体が拒否反応をビビビビ出すようになる。

じつはこれが老人性高所恐怖症(って言葉あるかはしらないけど)の原因で、
ナカちゃんのように、身体が山道に慣れてきたら、
リスクの見積もりが下がってくるようになるんじゃないか、
という仮説が立てられる。

歩きながらそれに気が付き、
「おれはリスクを高く見積もっているだけ」
という呪文を唱えながら、往路のPC1台ビビリポイントを通ってみると、
やっぱり怖くなかった。
むしろ「あれ? ここだっけ?」とすら思ってしまった。

馴れてないことには、拒絶の反応をしてしまう。
だから、リスクの見積もりを高くしてしまう。

それ、リスクの見積もり、が実は高所恐怖症の正体であり、
世の中いろんな場面で、たとえばビジネスでも、それがでてしまう。
リスクを高く見積もって、新しいことに対して拒否、拒絶する。
馴れた人からすると、その見積もりは、間違っているのがわかる。

高いところが怖いのは気のせいだ、
ということに、女神三滝で気がついた。