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津波が来るとは想像したこともなかった

金曜日土曜日と一人芝居を観た。
金曜日は『釜石の風』(演者 小笠原景子 劇団もしょこむ)
土曜日は『もう一人の私へ』(演者 内沢雅彦 劇団黒テント)

『釜石の風』は照井翠さんのエッセイ、
『もう一人の私へ』は沢村鐵さんの短編小説。

お芝居はジャズバーと喫茶店を会場にして公演。
直ぐ目の前で演者が演じる迫力はたまらない。
といっても、『もう一人の私へ』は一番うしろのほうで立ち見していたが。

確かに地震は経験したことがないほど激しいものだったが、津波は別だ。そもそも私は、津波らしい津波を一度も見たことがないのだ。鵜住居にいた十八年間に一度も。子供の頃から一度として、津波が町中まで来るとは想像したこともなかった。犠牲者が多かった理由はそれだと思う。

『あの日から』所収『もう一人の私へ』 p437

満席のお客さんがうんうんうなづく。
そうだったのか。
みんな津波が襲ってくるとは思っていなかったのか。

岩手日報が東日本大震災の犠牲者遺族や行方不明者家族にとった
「震災の浸水域内で震度5強の自身が発生した際の行動」アンケート調査では、
「すぐに避難」が46.9%、
「テレビなどで情報収集」が46.0%
「付近の様子を見る」が6.2%
「特に何もしない」が0.4%
「わからない」は0.4%

やっぱり逃げないんだ。

釜石には「防災市民憲章 命を守る」という誓いがある。

「備える」
災害はときと場所を選ばない。避難訓練が命を守る。
「逃げる」
何度でもひとりでも安全な場所にいちはやく。その勇気はほかの命も救う。
「戻らない」
一度逃げたら戻らない戻らせない。その決断が生命をつなぐ
語り継ぐ」
子どもたちに自然と共に在るすべての人に。災害から学んだ生き抜く知恵を語り継ぐ。

明日は3月11日。
あの日から13年が経つ。

『あの日から 東日本大震災鎮魂 岩手県出身作家短編集』道又力編 岩手日報 2015年