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なぜ、権限委譲が必要なのか?

 本noteは、筆者の後任の方から質問された、「どのようなことを意識して権限委譲してきたか?」という問いに対する私なりの回答を整理したものです。
 あくまで個人的な思考の整理であり、立派なことを申し上げるつもりもありませんし、教師としての身分もないことを申し添えておきます。

丸投げと権限委譲の違い

 権限委譲と聞くと、単に他者に仕事を振る(丸投げする)ことをイメージする方もいますが、私はそうではないと考えます。それは、”権限”と”責任”は異なると感じるためです。
 権限とは、個人がその立場で持つ権利・権力の範囲であり、権利とは、ある物事を自分の意思によって自由に行なったり他者に要求したりすることのできる資格(goo国語辞書)です。一方、責任とは、立場上当然負わなければならない任務や義務、あるいは自分のした事の結果について責めを負うこと(goo国語辞書)です。
 つまり、”権限委譲とは、仕事において必要な行動を自らの意思で判断及び決定することを認める一方で、仕事の結果に対する責任は自身が負うこと”であると考えます。したがって、”丸投げ”と”権限委譲”は違うと考えています。

権限委譲による影響

 権限委譲により、仕事上における”自己決定”が高まることは安易に推測できます。一方、自己決定が高まると、”職務満足”が向上することが知られています。つまり、効果的な権限委譲は、与えられた職員の職務満足を高めると考えることができます。
 他方、組織運営の視点では、権限委譲は特定の仕事が属人的となることを防ぐことが期待できます。これにより、当該職員の急な異動や欠勤時も組織活動の持続可能性を担保し、職員の教育や育成、不正を予防するための監視機能にも好影響を及ぼすことが期待されます。

権限委譲すべき課業

 権限委譲すべき課業は、”重要度”と”緊急度”の2軸で構成するマトリクスを用いて整理すると可視化できます。

権限委譲のマトリクス

 私が考える権限委譲すべき課業は、① ”重要度も緊急度の低いもの”> ② ”重要度は低いが緊急度は高いもの”> ③ ”重要度は高いが緊急度は低いもの”の順で、 ④ ”重要度も緊急度も高いもの”は、 1 on 1 で慎重に行うべきと感じます。
 私の後任の方が過去の私の行動を振り返った時、私は”職員を守るために必要となる意思決定だけは権限委譲をしていなかった”と伝えてくれました。これは、COVID-19の感染拡大時のゾーニングや他職種との調整、業務内容の変更に係る私の意思決定の様子を振り返って感じたことのようです。但しこれは、”重要度も緊急度も高いもの”であり、事前に予測ができない”初めての経験”であったためです。これが2度目以降であれば、 1 on 1 で権限委譲することも可能ではないかと感じています。

仕事に追われる人と追う人の違い

 あくまで私見ですが、仕事に追われる人は基本的に権限委譲が不得手です。権限委譲できないがために、多くの仕事を常に抱え込んでいます。一方、仕事を追う人の多くは、適切に権限委譲をしているように感じます。
 経営資源は、人・物・金・情報と一般的に言われていますが、”時間”も重要な経営資源であると私は考えています。この”時間”をつくり出すためにも、権限委譲は”適切”に行うべきと考えます。特に、マネジャーや管理監督者、経営者には、実務から離れて創造的活動を行う時間が必要であると感じています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

(参考)
・高橋伸夫、大川洋史、稲水伸行、秋池篤:組織の打診調査法.組織科学, 2013. https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/47/2/47_4/_pdf(参照2022-1-29)

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