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町屋良平の「ショパンゾンビ・コンテスタント」について

 町屋良平の「ショパンゾンビ・コンテスタント」を読んだ。町屋良平は一時期はまっていたが、最近は全然読めていない作家だ。今回久し振りに読んでみようという気になった。理由は特にない。
 この小説は主人公と源元が主人公の部屋でショパンコンクールというピアノのコンテストを観ながら2人がだらだらと過ごす場面から始まる。主人公は小説を書いていて、その小説に源元を登場させていいかと尋ねて許可をもらう。2人は音大で知り合った仲である。主人公は中退してアルバイトをしながら小説を書いているという設定である。
 作中では主人公が書いた小説の断片が所々に登場してややこしく感じる。現実の場面だと思ったら、主人公の書いた文章であるということが結構あった。また、主人公が読んでいる本の抜粋もあるので、更に混乱した。だから、途中から面倒臭くなって、適当に読んでしまった。
 源元には潮里という長く付き合っている恋人がいる。主人公はその源元の彼女にしばしばアプローチしている。どういうわけか潮里は主人公の首筋をなめたり、主人公のポケットに手を入れてきたりするなど、思わせぶりなことを作中で何度もしている。そして、主人公が脈ありなのかと思って手を握ったりすると、拒絶するという猫のようなヒロインである。作者がこういう女の子を想像して書いているのか、もしくは作者自身がこういった異性に弄ばれた経験があるのか真相は定かではないが町屋良平の小説には潮里のようなヒロインがしばしば登場する。源元も友達に自分の恋人がアプローチされているのを知った上で、潮里と同じバイト先を紹介したりと全く動揺していない。三角関係なのに、読んでいてこの3人の関係性は壊れないんだろうなという謎の安心感がある。不思議な関係性だ。
 主人公と潮里が働くバイト先には寺田くんという男の子がいて、彼も小説の中で頻繁に登場する。作中の中で一番好きなキャラクターかもしれない。寺田くんには遠距離で付き合っている許嫁がいて、主人公たちと一緒に思いつきで名古屋まで行きその許嫁に会いに行く場面がある。許嫁とのやり取りも読んでいて微笑ましかった。
 面白かったけど、雑に読んでしまったこともあり読み終えたときの満足感は弱かった。また時間が経てば別の町屋作品を読んでみようかと思う。

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