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絵のない絵本「愛を与ふるロボット」

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愛が欲しい科学者が
愛を与えるロボットを作りました。
綺麗な女の人のロボットです。

ロボットが毎日愛をくれるので
科学者はとっても幸せ。

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科学者は毎日愛を貰ったので
今度は自分が愛をあげたくなりました。

でも
愛を与えるロボットに
愛をあげたら
愛が溢れて壊れました。

科学者はとても悲しみました。

そのロボットは
科学者の亡くなった奥様に
似せていたのです。

壊れたロボットは動きません。
今日も。
明日も。
一年経っても。

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愛を与えるロボットが動かないので
科学者は他のロボットを
沢山作りました。

掃除洗濯をする
ウサギ型のロボット。

美味しい料理を作る
ウサギ型のロボット。

夜にお酒を注いでくれる
ウサギ型のロボット。

本を読むときにページをめくってくれる
ウサギ型のロボット。

夜寝ている時に布団がめくれたら直してくれる
ウサギ型のロボット。

科学者が寂しくて堪らなくなったときに傍に来て喉を鳴らしてくれる
ウサギ型のロボット。

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野原に散歩に行って綺麗な花を見つけたら花瓶を用意して持ち帰ってくれる
ウサギ型のロボット。

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沢山のウサギ型のロボットと暮らして

ある日

科学者は死にました。

死んだ科学者は死んだ奥様と同じお墓に入りました。

すると

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愛を与えるロボットが動き出しました。

動き出したロボットは野原に出掛けました。

野原に咲く花を摘み科学者のお墓に供えました。
綺麗な花でした。
その花は
科学者が好きな花でした。

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お墓に向かって本を読んであげました。
その本は
科学者が好きな本でした。

愛を与えるロボットは
科学者が夜になって寂しくないように
お墓の傍にいてあげました。

愛を与えるロボットは
お墓の傍から離れません。

愛を与えるロボットは
壊れてなどいなかったのです。

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愛を与えるロボットは
今日も科学者のお墓にお花を供えます。