見出し画像

幼い私へ、拾い上げた筆で綴ること

 記念すべき一行目になんという言葉を配置すべきか、気が付けばもう数日悩んでいる。

 会員登録のためのアドレスその他の情報は、あんなにもスラスラと書き込めたのにねと、心の中には嫌味を言う私がいる。

 幼い頃から、文章を書くのが大好きだった。本を読むのが大好きだった。
 美しい日本語を、自在に操ることができるようになるのが、夢だった。
 でも、今となっては。

 自分の意志で、自分の頭で考えたことを、しっかりと文章という形にして書くのは、いやに久しぶりだと思っている。もう最近では、我が相棒PCのキーボードは、何々の会員サイトへのログイン情報を入力するだとか、そんな意味のない文字列を叩く道具になり果ててしまった。
 つまんねー大人になっちまったな、笑ってそう言いながら、少し息が苦しい。

 ここにいるつまんねー大人は、毎日毎日代わり映えのない日々に飲み込まれて、目前に伸びている平坦な道をぼんやりと見つめ続けている。ベルトコンベアのようにぬるぬると進みながら、何も持っていない両手をぶらぶらと遊ばせるだけの人生だ。

 子供の頃はと言えば、私はこの両手にいくつもの筆を抱えて歩いていた。絵を描くのは得意ではない。私の持っていた筆はほぼ全て、文字を書くためのものだった。
 いつから文章を書くのをやめてしまったのか、そんなことは覚えていない。ただ、大人になる過程でいつの間にか、この筆はぽろぽろと手の中から零れ落ちていってしまった。
 私は今、ふと足元に目をやって、落とした筆を一本一本拾い上げようとしている。
 虚ろな目でベルトコンベアを眺める日々は、楽しくないのだ。だから、少しだけ、落書きをしよう。そんな思いで、何でも良いから少し文章を書こうと考えた、それが今回、私がここにアカウントを作成した理由である。

 この文章は、自己紹介のつもりで書いている。同時に、子供の頃の自分への弁明でもある。

 つまんねー大人にはなっちまったけれど、私はまだ、全ての筆を捨てたわけではないよ、と。
 まだ、自分の頭の中から言葉を引き出し、思い思いに並べていくこの作業は、好きだと言える私のままだよ、と。
 それを至上の楽しみとしていた、過去の自分を肯定し、そして、今の自分も変わってはいないと、そう証明できれば良い。

 だから、何かしらテーマを見つけた時に、ぽつぽつと、文章の形にして発信していこうかなぁと、そう考えている次第である。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?