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映画「明治天皇宇宙の旅」レビュー「誰も知らない極右SF映画」。

明治45年明治天皇は崩御され
忠臣乃木希典は殉死したとされているがそれは事実ではない。

日清日露の両大戦に勝利し狭い地球を飛び出し見識を広めんがために
石炭と蒸気機関を動力とする宇宙戦艦を建造し
乃木と共に宇宙に旅立っていたのだ。

これはその記録映画なのだ。

恐らくその存在すら知る者の少ないと思われる特撮SF映画。
昭和63年(1988年)神戸大学の有志が
安原伸監督と共に作成した自主製作映画なのだ。

明治天皇と乃木希典が
ソ連邦国歌を流すガミラス的な宇宙の侵略者達と
八紘一宇の精神で戦う。
石炭を燃料とする蒸気機関で動く宇宙戦艦故に
コンピュータを狂わす妨害電波が通用しない展開は
ヤマトでデスラー機雷を人力で排除した挿話を思わせ胸が熱くなる。

ガミラス(仮)の一切のビーム攻撃を遮断する障壁を
実弾砲撃で破る展開は後年ヤマト2199で引用された。

ローテクでハイテクに勝つ。
正にヤマト魂溢れる映画なのだ。

長い宇宙の旅の末に明治天皇がウラシマ効果で
現在(昭和63年)の日本に帰還し乃木と共に
(明治天皇のコスプレしたまんま)明治神宮を参詣する場面は
モブ(一般参拝客)が石地蔵となってる描写と併せ
SFマインドが刺激される名場面と言える。

何しろ僕は撮影した度胸を買うよ!

主題歌は小泉今日子の「連れてってファンタァジェン」(1987年)
BGMは「ドラゴンクエスト2 悪霊の神々」(1986年)
から無断拝借。
ココだけ「イマドキの学生らしさ」が感じられて微笑ましい。

文化庁主催の第三回国民文化祭で映像部門大賞を受賞するも,
上映会の招待は多々あったものの
テレビ放映は悉く断られたという。

ビュルガーの「ほら男爵の冒険」の男爵役に明治天皇を配置。
宇宙船のデザインは明治時代の国産SF雑誌の挿絵にあった
「はばたき宇宙船」だという。
勿論「宇宙戦艦ヤマト」の影響も大きく,
敵戦艦の艦橋の窓が意味もなく屈曲してるのは松本零士の影響なのだ。

安原伸監督は思想改造人間がアカを殺しまくる「ライダー神風」
現代に甦った国防挺身隊が不逞の輩を誅する「国防挺身隊」
南方に従軍する日本兵が日本に住む捨て子の少女に仕送りする
「わたしのあしながおじさん」
と極右なのか極右をからかっているのか
訳の分からない綺羅星の如き作品を後世に残している。

特典映像で安原監督が日本共産党中央委員会にアポなしで訪問する際,
「今もこの赤い建造物の中で日本国を転覆させんが為の
怪しい会合が開かれております」
との前説の後に建造物に無理矢理入ろうとして
入れろ入れないで揉み合いになっているので
断じてお近づきになりたくない人物である事だけは確かだ。

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