見出し画像

映画「パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼」レビュー「ハリボテのワニに人が襲われる場面より土人に白人が槍や火矢で殺される場面の方が100万倍興奮するッ…!」

H.G.ウエルズの「モロー博士の島」を映画化した
「ドクター・モローの島」がヒットすれば
「ドクター・モリスの島」(1979年)を間髪入れず制作して
あわよくば間違えて観て貰おうとする
「あわよくば精神」の化身・イタリアが
スピルバーグ監督の「ジョーズ」に対して「あわよくば精神」が
発動せぬ訳がなくスピルバーグがサメならこっちはワニだと言わんばかりに
制作した映画が本作…。
「パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼」(1979年)なのだ。
念の為に書いておくが「アリゲーター」の制作は1980年。
本作の方が「早い」とオタクの端くれとして指摘しておきたい。

監督・脚本は「ドクター・モリスの島」と同じくセルジオ・マルティーノ,
製作は「ドクター・モリスの島」と同じく
セルジオ・マルティーノの実兄ルチアーノ・マルティーノ,
脚本は「ドクター・モリスの島」と同じくチェザーレ・フルゴーニ,
撮影は「ドクター・モリスの島」と同じくジャンカルロ・フェランド,
美術は「ドクター・モリスの島」と同じく
マッシモ・アントロネット・ゲレン,
編集は「ドクター・モリスの島」と同じくエウヘニオ・アラビソ,
主演男優が「ドクター・モリスの島」と同じくクラウディオ・カッシネリ,
主演女優が「ドクター・モリスの島」と同じくバーバラ・バック,
助演男優として脇を固めるのが
「ドクター・モリスの島」と同じくリチャード・ジョンソン,
小遣い銭欲しさに参加するのが「ドクター・モリスの島」に
大改造手術を施した「スクリーマーズ」と同じくメル・ファーラー。

…と「ドクター・モリスの島」と本作を同年(1979年)に連作し得た
理由のひとつが可能な限りスタッフを「同じ」にして
主演男優女優も「同じ」にする事なのだと分かる。

この…恥も外聞もない「同じ」パワーこそが
イタリアイタダキ魂の力の根源なのだ。

アマゾン奥地に建造されたレジャー施設で森林を伐採し,
土地を埋め立てる模様を
虚無の目になって眺めるコモロ族の土人の老人たち。
一方小遣い銭欲しさにレジャー施設のアトラクションに
進んで参加するコモロ族の若者たち。

かつては誇りある部族であったそうだとレジャー施設の
マネージャー・アリス(バーバラ・バック)が宣伝商材の撮影にやって来た
カメラマン・ダニエル(クラウディオ・カッシネリ)に洩らす。

やがて河の守り神として恐れられる巨大なワニが
コモロ族の若者とレジャー施設の黒人モデルのカップルを襲い
コモロ族の急進派は守り神の怒りを恐れ,アリスを拉致し,
守り神への生贄として捧げ,同時にレジャー施設を襲撃し,観光客を虐殺し,
父祖伝来の土地からの白人の駆逐を開始する…。

本作に於ける最大の脅威は「ワニ」ではなく「白人」であって
その白人を土人の急進派が槍と火矢で襲い,
レジャー施設を炎上させるのが最大の見所。

正直ね。

白人が土人に殺される場面が三度の飯より好物なので
白人女の腹に土人の投げた槍が突き刺さって死ぬ場面で
ワニなんぞよりメチャクチャ興奮した…。
いいトラウマを植え付けてくれた時点で
100点満点で200点進呈したくなるのだ。

ハリボテのワニも大暴れだあ~!(棒読み)

本作はミニチュアを多用した「特撮映画」でもあり
ショボい特撮に特殊性癖が刺激される僕は大いに楽しめた。

リチャード・ジョンソンが
コモロ族をキリスト教徒に改宗させる為に
やって来た宣教師ジョナサン役を
「十戒」のチャールトン・ヘストンみてえな
髭もじゃの乞食みてえな扮装で熱演…。
…するも登場はそれ切りで5分未満と言う体たらく。
正直ジョナサンが何の為に出て来たのかは永遠の謎である。

ワニの攻略法なんざホント酷えモンで
ワニに橋を落とされて水中に没したバンの中に
たまったまダイナマイトがあって
たまったま水中でシケなくて
たまったま起爆性を維持したまま
たまったま水中をワニの口の中まで運搬出来て
たまったま口中で奇跡的に起爆して…。
とまあ…ワニが倒せたのは「僥倖」と言うか…。
「行き当たりばったり」以外の何物でもないのです。

HDリマスターの画質は目が覚める様だが
若干ノイズが気になる箇所もある。

日本語吹替は1980年7月18日「ゴールデン洋画劇場」放映時の
吹替音源が搭載されている。

バーバラ・バックは
「ドクター・モリスの島」のときと同じく田島令子さんだが
クラウディオ・カッシネリは羽佐間道夫さんではなく前田昌明さん。
「ドクター・モリスの島」のときほど活躍しないからか知らん。
レジャー施設の支配人の腰巾着役が穂積隆信さん。
流石のいい腰巾着ぶりを披露されておられます。

特典は監督・美術監督・撮影技師・水中撮影技師へのインタビューと
メインスタッフ対談。

共通してる話題が
1.イタリア映画を米国映画のパクリパクリって言うな。
ダリオ・アルジェントを見ろ。
米国映画がこぞってパクってるじゃないか。
コレは「お互い様」なんだ。
パクリとオマージュの「違い」は非常に微妙なんだ。
2.米国映画の撮影技術が
機械撮影からデジタル撮影に移行し始めてからというもの
「どうやって撮ったのか」
が分からなくなってパクリ…オマージュが困難になって
国際向けのイタリア映画が急速に衰退しコメディ映画だけが残った。
の2点。
古き良きイタリア映画のイタダキ魂を懐かしんでいるのが印象的でした。




この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?