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映画「ブレードランナー」ファイナル・カットレビュー「ドレイの一生」。

21世紀の初め,タイレル社はロボット開発を「ネクサス」段階へと進めた。
「彼等」は人間ソックリで「レプリカント」と呼ばれた。
ネクサス6型は体力・敏捷性に優れ
知能も彼等を作った遺伝子技術者に匹敵した。
レプリカントは宇宙でのドレイ労働や
植民地建設の人夫として使役されて来たが
ドレイの分際でナマイキにも自意識に目覚め反乱を起こした為,
地球上での存在は非合法とされ死刑を宣告された。
そして特別捜査班「ブレードランナー」には
レプリカントを発見次第殺す権限が与えられた。
それは処刑ではなく解任と呼ばれた。
ドレイは死刑によってのみその任を解かれるのだ。
レプリカントは人ではなくムシケラであり
「人」と数えられず「匹」と数えられるのが常であった。

2019年11月ロサンゼルス。
4匹のレプリカントがシャトルを奪い乗客乗員を殺し
この街に潜り込んだ。
この街にはタイレル本社屋が存在するのだ。
今では引退した,かつての腕利きのブレードランナー・デッカード
(ハリソン・フォード)が招聘され
斯くしてロスの街で4匹のムシケラ退治が始まるのであった…。

本作を初めて認識したのは池袋の映画館のオールナイト興行だった。
本作を観に行ったのではなく時間が潰したかったのだ。

翌日曜日は池袋サンシャインシティで
同人誌即売会「コミックレボリューション」が開催され
前日徹夜して並ぶ事は厳しく諫められていたが…。
埼玉県・大宮の社員寮からノコノコ始発電車に乗ってやって来たのでは
目当ての同人誌は絶対に入手出来ない。
激しい争奪戦に負けるのだ。
故に池袋の映画館のオールナイト興行で時間を潰し…。
夜明けと共に並んで
コミックレボリューションの開始を待とうと言う肚である。
徹夜して列に並んで同人誌を買おうとする輩は「徹夜組」と呼ばれ
やり方が汚い・周辺住民への迷惑を考えないバカオタクだと
忌み嫌われていたが夜明けと共に並べば「徹夜」ではない。
誰にも文句は言わせない。

故に別に「ブレードランナー」を見に来たのではなく…。
映画館に「寝に」来たのである。
従って「ブレードランナー」の初見の記憶は飛び飛びとなっている。
半分寝てたからな!
「雨」「キラキラ輝くトンネル」
「手裏剣みたいに回転しながら襲って来る
「スプラッシュ」で人魚を演じたダリル・ハンナ」
「「レイダース」がそうである様に
常に面倒臭そうに銃を発砲するハリソン・フォード」
「ルトガー・ハウアーにボッコボコに殴られるハリソン・フォード」

『それがドレイの一生だ』

「最後に鳩になったルトガー・ハウアー」
僕は夢の中で「ブレードランナー」を観たので
「精確さ」などどうでもよろしい。

「ブレードランナー」とはこうした出会いだった故なのか
「ブレードランナー」を観る度に眠くなるのである。

レプリカントは「理想の人間」として設計されながら
「寿命が短い」という不具合があり4年しか生きられない。
ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)は寿命を延ばす様
創造主であり同時に父親でもあるタイレル社の社長に直談判に赴く。

社長「オマエ達はローソクだ」
「死ぬ直前に激しく燃え盛り,やがて消えて行くローソクだ」
「精々その短い生涯を激しく燃え上がらせてから死ぬといい…」

「ドレイの一生」とはローソクの様に激しく短い…。
…と社長はロイに…息子に語り…。
息子はそれを不服として父親を…創造主を絞め殺すのだった。

終盤ロイはデッカードを追い詰めながら,その命を奪う事を止める。
ドレイが人間の生殺与奪の権を握り人間を見下ろす事に満足したのだ。

ロイ「怯えて生きる気分はどうだ?」
「…それがドレイの一生だッ!」

ロイ「オレは…貴様ら人間が想像も出来ないものを見て来た…」
「オリオン座の近くで炎に包まれた戦艦」
「タンホイザー・ゲート近くで輝くCビーム」
「それらの瞬間も全て失われる…」
「時が来れば…」
「それは涙の様に…」
「雨に洗われる…」
「死ぬ時が来た…」

ロイは「鳩になった」のではなく「天使(Angel)になった」のであり
舞台がロサンゼルス(LOS ANGELS)である事も
ロスがずっと雨が降っている事も
「ロイの昇天」の演出だと…作劇上の要請だと気付かせて映画は閉じる。

デッカード役は…ルトガー・ハウアーの演技に
「ただ茫然とする」為にハリソン・フォードにオファーされたのであって,
その後もハリソン・フォードは「ただ茫然とする」微妙極まりない演技で
多くの映画ファンを落胆させて行く。
ハリソン・フォードは…無能であるが故に本作の主役に抜擢されたのだ。

レプリカントが短い命を燃え上がらせて燃え尽きるのに対し
デッカードは…人間は…無様に長生きする様,創造主に定められたのだ。

精々長生きするといい…。

レイア「ワタクシを救出すると言うのなら!」
「何故綿密な計画を立案し!」
「周到な準備をしてから来ないッ!?」
「このッ…無能がッ!」
ハン・ソロ「オレは助けに来たのに…」
「虜(とりこ)の女に…初対面の女に…「無能」って罵倒された…」
「…まったく…何て女だ…」
「惚れたッ!」

ジョージ・ルーカスもリドリー・スコットも
「ハリソン・フォードの使い道」を心得てたんだよ…。

女性型レプリカントが銃で撃たれてバタバタ痙攣しながら,
もがき苦しんで死んで行くのを見ると…。
何と言いますかこの…滅茶苦茶に興奮しますね。
虫を虫ピンで刺してもがき苦しんで死んで行くのを眺めた
少年時代を思いさせます。
痙攣しながら死んで行くムシケラを眺めてると食が進みます。


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