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ブスに彼氏が居ちゃダメですかepisode6

全部が初めて

中学3年の時、好きだった人から手紙で告白されて私たちは友だちから恋人になった。

私はケータイを持っていたけど、あの頃のケータイは電話が主だったし、画面だってカラーじゃなかった。相手の名前と電話番号が表示されたら、それだけでいっぱいになるくらい小さかった。
彼氏はまだ持っていなかったので、初めての電話は家電いえでんから家電いえでんへだった。時間の約束をして、他の家族に電話を取られないように電話機とにらめっこ。
その時使っていた電話機が、子機がないタイプで玄関の上がり口に置いてあったので、そこで小声で話した。


放課後、彼がこぐ自転車の後ろに乗って公園に遊びに行ったりもした。住んでいるのが田舎なので公園まで40分くらい掛かった。
冬だったけど、彼氏は額に汗をかきながら必死にペダルをこいでいた。後ろから彼氏にしがみついていると、ふわっと柔軟剤にまじって汗の匂いが鼻をかすめていった。それがなぜかいい匂いで、回した腕にギュッと少しだけ力をこめた。
公園では散歩をしながら初めて手を繋いだ。


家族にも彼氏のことを話した。
家に遊びに来ることを許してもらうためだ。
それがなかなか難航した。田舎だし、近所になんて言われるか、そんなことを母は心配していた。
それでもなんとか説得して、了承を得た。
彼氏は明るく人懐っこかったため、母はあっという間に彼氏と仲良くなった。
家でテスト勉強と言って、勉強する時間はほんの僅かで、お喋りしたりゲームをしたり、そんな風に過ごす時間がとても楽しくて愛おしかった。


本当にお互いを好きで、ずっと一緒にいたいと思っていた。その想いが止められなくて、夜中に彼氏がうちにこっそり来ることもあった。
窓の鍵を開けておいて、音を立てずに入ってくる。
危険を犯してまでもお互いを求めていた。
中学3年の秋に、私たちは結ばれた。
ぎこちなく、心許ない二人だったけど精一杯の愛情を伝えたくて真剣だった。

彼氏は私に一目惚れだった。
入学式の日。
1年生の時に告白しようとしたけど、嫌がってるように見えて断念したんだって。
それから気まずくなって、普通に話せなくなって、すごく辛かったって。
だから、付き合えることになって本当に夢みたいだって、そう言ってた。

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