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コンコンコン 木槌響けば アレ来たる

「アレ」と言っても「優勝」の意味ではありません(笑)↓は岩手県盛岡市、盛岡八幡宮の境内にある「笠森稲荷神社」。

なんでも今年はじめにニューヨーク・タイムズが発表した「2023年に行くべき52か所」に盛岡市が選ばれたそうで、しかもロンドンに次いで2番目に挙げられたらしく一躍海外から注目を集める日本の観光地となっている模様。盛岡市でもこの点を大々的に取り上げつつアピールしているようです。

そんな盛岡の総鎮守、盛岡城跡公園と並ぶ盛岡の中心地とも言うべき盛岡八幡宮。全国的には豪奢に着飾った馬たちが滝沢市からこの神社まで練り歩く「チャグチャグ馬コ」の舞台として有名でしょうか。

境内にあった当神社の由来。ちょっと見づらくてごめんなさい!

のように由来によるとこの笠森稲荷神社は八幡宮よりも前にこの地にあり、地主神としても位置付けられています。稲荷神社があるところに八幡宮が建てられて、稲荷神社は末社として残される…鎌倉の鶴岡八幡宮と同じパターンですね。

この稲荷神社の面白いところはまず木槌で板を叩いてからお祈りを捧げることです↓

お賽銭箱と木槌
これが叩く板

というわけでタイトルの歌。「アレ」とはなにか?というと…もちろんコレ↓です。


2体だと複数形の「コレラ」になっちゃいますが

板を叩いて神さま(というかキツネ)に呼びかけてからお願いごとをする、というコンセプトなんでしょうね。板が見事にすり減っているあたりに信仰の厚さがうかがえます。

それにしてもどうして稲荷神社で板を叩くのか?おそらくその理由は…

コンコンコン

なのでしょう。木槌で板を叩いた時の音と、キツネの鳴き声のオノマトペが同じ。3回なのは伏見稲荷の「稲荷三峰」とか「御狐/三狐(いずれも"みけつね")」からでしょうか。

言葉遊び、ダジャレの世界。日本語って面白いなぁ~としみじみ思います。こうした面白さを信仰にまで取り入れている昔の日本人の遊び心と柔軟な考えにも感心させられます。

というわけで、タイトルの歌では初句の「コンコンコン」を踏まえて結句の「アレ」が何なのか察していただけると嬉しい、みたいな(笑)

昔は神さまや精霊、怪物の類は直接名前を口にするのを憚って「アレ」とか「ソレ」とか間接的に言うのが日本だけでなく広く世界でも一般的だったそうで、スティーヴン・キングの「IT」なんかも似たようなコンセプトでつけられたタイトルですね。

とくに東北地方はこうした「忌み言葉」の宝庫だったマタギが活躍していた世界ですから、「アレ」はまさにピッタリな言葉であろう、みたいな。

ともあれ、この笠森稲荷神社は「コンコンコン」と叩くだけでも楽しい。

寺社はまずもって祈りの空間・場であることが大前提ですが、この笠森稲荷神社に見られるように実体験ならではの楽しさ、ライブ感覚を楽しめるエンターテイメント空間としての面も持ち合わせているように思えます。そしてそれが長い間日本人から信仰と愛着の両方を受け続けてきた理由ではないでしょうか。

コロナ禍の間、なかなかエンターテイメントを楽しめない状況が続いていました。そんなときに訪れた寺社で遭遇した「ライブ感覚」あふれる空間がいかにも楽しいものかを何度も痛感しました。これからも大事に残していきたいものです。

あと…鈴(本坪鈴)が凹んでいますが、もしかしたら木槌で鈴を叩く不届き者がいるんでしょうか?


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