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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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#コラム

いつだってこの瞬間が、始まりだ。【9/28巨人戦◯】

「投壊」と言われ、ものすごい防御率と、ものすごい総失点数をたたき出し、毎試合のように被安打は2桁になり、接戦をことごとく落とし、サヨナラ負けを山のように見た今季、最終戦で迎えた試合はどんな試合だったかというと。 2-1のサヨナラ勝ちであった。 まじか。 やればできるんじゃないか。(と、いうのも今季何回も言った。)私は子どもたちと飛び上がって喜んだ。ケリーがサヨナラのヒットを打った瞬間、今季のつらい試合は一瞬にして全て吹っ飛んだ。最後に帳尻を合わせてくるこの感じ(いや、冷

神宮のスリーベースに心踊った話 【9/23巨人戦●】

この二日間で私は、なんと、計三回のスリーベースを見た。神宮で、である。スリーベースが出づらいと言われている神宮である。 もちろん、当然のことながら、スリーベースが出た瞬間私は、はいサイクルいこう!!と、叫ぶ。今日ももちろん叫んだ。なんせてっぱちは、1回裏にタイムリースリーベースを打ったのである。これはサイクルを目指すしかない。 相手は優勝が決定している常勝軍団である。CSの起用を見据えた作戦を練っている途中である。一方こちらは、最下位が決定したチームである。楽しみといえば

「さよなら」の理想みたいなそんな雨と一日に【9/22巨人戦◯】

たてさんのスピーチで名前を呼ばれたカツオさんは、涙を流した。 去りゆく人はもちろん、胸の中にいろんな思いを抱えている。だけど去ると決めたのは本人だから、ある程度清々しい気持ちもそこにはあるだろう。 だけど残された人は違う。それは否応無しにやってきたさよならで、受け止めるには時間がかかる。自分がそこに残ることへの不安を感じることもあるだろう。 本当に寂しいのは、去る人ではなく残された人なのかもしれない。 だから、残されたカツオさんが1勝をつかみ、エイオキが2本のタイムリ

「誰かを応援できた日々」を、胸にそっと抱きながら【9/21中日戦●】

たてさんは、半袖でそこに立つ。 そこからは、手術を繰り返した傷痕がのぞく。 今日もたてさんは半袖で、試合前のブルペンに立ち、投球練習をしていた。若いキャッチャーの松本くんが、その一球一球を受けていた。 コーチと、お客さんと、みんなが、それを、静かに見守っていた。 この空気は今日だけのもので、そして二度と戻ってこないのだ。 「打者を欺くことなく真っ向勝負できたことは自分の誇りです」 と、たてさんは言った。 「打者を欺く」ことも、もちろん素晴らしい投手の仕事だけれど

みわちゃんが反芻した打球と、ライアンの完投と 【9/19阪神戦◯】

セカンドの横を打球が抜けて行った時、みわちゃんはとても悔しそうな顔をした。こうしてとるんだよな、と、何度も何度も確認する仕草をした。もうすぐ、ユニフォームを脱ぐのだ。それでもみわちゃんは最後まで、野球選手として、野球をするその人生をまっとうしようとする。 二軍球場とは思えない立派な鎌ヶ谷スタジアムで、私はこれから育とうとしている若手たちと、そしてもうすぐユニフォームを脱ごうとしている人たちを眺めていた。 「終わり」なんてもしかしたら、区切りに過ぎないのかもしれない、と思う

大事なのは誰かの評価じゃなくて、自分で納得できること【9/18阪神戦●】

いつかそれは、終わるのだ。華々しい記録も、勝利の余韻も、王者の立場も、何もかも。 いつかは、記録が途切れる時が来る。いつかは、負ける時が来る。誰しもにその瞬間が待っているのであれば、大切なのはそこから這い上がることだ。 てっぱちの盗塁の記録が途切れる。ヤクルトの最下位が決まる。でも戦いは、そこで終わるわけじゃない。てっぱちはこれからも打席に立ち続けなきゃいけないし、ヤクルトは試合を続けなきゃいけない。いつだって、勝つというシンプルな目標のために。 いつだって大切なのは、

成長してゆく若手たちと、去りゆくベテランと【9/16広島戦◯】

今年、ちょうど一年前の今日の試合を、何度も何度も思い出した。 村上くんが初めてお立ち台に立った日、初めてのサヨナラホームランを打った日、二打席連続ホームランを打った日。もちろん、打っても打っても勝てなかった日も。そのたびに、この日の試合を思い出した。目の前ですっと、ライトスタンドに飛び込んできたあの弾道を。 今日、外野から眺める視線の先には、外野を守るおじさん三人がいて、さらにその向こうに、21歳の奎二くんがいて、18歳の村上くんがいた。 後ろをおじさんたちがしっかり守

田川くんの7年が、決して無駄ではなかったように【9/15広島戦◯】

どれほど「8点差なんてセーフティリードではない」とわかっていても、人間というのは愚かな生き物なので、8点を取った時点でついテンションが上がってしまう。 そうだよねカツオさんだってそうだけれども苦労人の田川くんにだってしっかり勝ちをつけてあげたいよね今日は大事な日だよね!!と、思う。 が、そういう愚かな驕りを、ヤクルトというチームはしっかりと諭してくれる。8点差?そんなものはないと思えと小学生で習いましたよね?と言わんばかりに、じわじわと点差を詰めてくださる。 8-0だっ

それでも小川さんとみやさまが率いてくれるヤクルトが好きだった【9/7巨人戦●】

CS出場の可能性が消滅したこの試合(残ってたのかよ!という話ではあるが)、一夜明けるといろんな人の去就が発表になっていた。 ある程度覚悟していたことかもしれない。もちろん、仕方がないことかもしれない。「情」で球団運営ができるわけでもない。そういう世界ではない。 それはわかりきった上でなお、人の感情というのは複雑だ。 寂しさややるせなさは、理性で抑えられるものではない。 監督とヘッドコーチが辞任を発表するきっかけとなった試合は、6-10で負けるという、今年のヤクルトの象

若いピッチャーを「ライバル」だというカツオさんが、チームを成長させていく【9/6巨人戦◯】

2月の浦添で、ブルペンで投げるカツオさんを見ていた。隣では、高梨くん、清水くん、じゅりが投げていた。一足先に投げ終わったカツオさんが、その三人の後ろを通って帰って行った。 「みんなライバルですから」とカツオさんは言う。自分の息子さんに近いくらいの選手たちを、ライバルだ、と。若い選手たちの隣で投げながら、自分の年齢を思うこともきっとあるだろう。でも、そんな若い選手たちを「ライバル」と呼んで同じ場所に立つカツオさんを、心からかっこいいなと思う。 若い選手の隣で投げながら、思う

同期たちはにこにこと、ヤクルトの試合を見ていた【9/5広島戦●】

二ヶ月前に取るそのチケットが、どういった試合になるのかは、もちろん全くわからない。勝つのか、負けるのか、暑いのか、寒いのか、雨なのか、晴れなのか。 それは劇的な勝利を見せてくれるチケットかもしれない。とんでもない逆転負けのチケットかもしれない。そもそも試合が中止になってしまうかもしれない。それは終わるまで、全くわからない。 それでも二ヶ月前から私たちは、その試合を楽しみに待つ。良い試合になればいいな、と思いながら。 今回は、大阪の同期が出張で東京へやってくるのに合わせて

てっぱちが年に一度見せてくれる、その笑顔を【9/4広島戦◯】

盗塁の時にはオーラを消しまくり「まるで幽霊」と言われる背番号1は、今日は9回裏、満塁のチャンスで抜群の存在感を見せつけた。それはもう、スターにしかできない仕事だった。 試合がないこのあいだの月曜日、私はなんとなく、去年てっぱちがサヨナラHRを打った時の動画を延々とリピートしていた。あの時、てっぱちははにかんだような笑顔で拳を突き上げ、ダイヤモンドをゆっくり回った。それはとてもとてもとてもいい笑顔だった。 今年、てっぱちが打っても打っても、勝てない試合が続いた。ダイヤモンド

7点差を逆転されるでもなく、ノーノーされるでもなく、淡々と負ける日に【9/3広島戦●】

「まいはいっつも、なんというかこう…あたりさわりのない、『いい人』を好きになるよねえ…」と、よく言われてきた。自分でもまあ、「いい人」と付き合ってきたよなあ、と思う。浮気に悩まされるとか、モラハラめいたことをされるとか、束縛されるとか、まあそういうことはこの人生で皆無であった。そもそもこんな自分勝手な人間が、束縛するような人と付き合うなんて無理なわけだけれど。 さてヤクルトは今日、淡々と負けていった。13点取られるとか、ノーノーされるとか、とったらすぐ取り返されるとか、7点

ピンチをチャンスに、無失点で乗り切ってくれたリリーフ陣たちのこと【9/1中日戦◯】

五十嵐さんが抜け、ハフが抜け、そしてこんちゃんが抜けた。その時私は思った。こりゃもう、心の底から開き直ってやるしかないな、と。なんかもう、絶望すら感じる暇はなかった。失うものなど何もない!最下位だし!(泣いていない) まあもちろん、それから散々泣きたいような試合も山のようにあった。戻ってきてみんな・・・と、私はテレビで、球場で、何度もつぶやいた。だけど実際に、開き直ってそこでなんとかしようともがくピッチャーたちの姿も、たくさん見てきた。 胃も心もすっかりやられた毎日の中で