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神宮のスリーベースに心踊った話 【9/23巨人戦●】

この二日間で私は、なんと、計三回のスリーベースを見た。神宮で、である。スリーベースが出づらいと言われている神宮である。

もちろん、当然のことながら、スリーベースが出た瞬間私は、はいサイクルいこう!!と、叫ぶ。今日ももちろん叫んだ。なんせてっぱちは、1回裏にタイムリースリーベースを打ったのである。これはサイクルを目指すしかない。

相手は優勝が決定している常勝軍団である。CSの起用を見据えた作戦を練っている途中である。一方こちらは、最下位が決定したチームである。楽しみといえば 、「なんかすごいことをやってのける。」これに尽きるわけである。

てっぱちの第二打席。私と息子は「ここはホームランでしょ!ホームランしかないでしょ!難しいやつから先に打っていこう!」と、狙いを定めた。するとてっぱちは、まじで2ランを放った。さすがである。「きたこれ。これはきたわ」と、私と息子は二人でニヤニヤしていた。

てっぱちの第三打席。一死で走者はなし。どうする?と、私と息子は話し合った。たった1点リード。もちろん、ヤクルトがこのままで終わるわけはない。早めに追加点が欲しい場面である。

つまり、サイクルのためにツーベースもしくは単打にすべきか、一刻も早く点を取るためにさっさとホームランを打つべきか。私たちは頭を悩ませていた。個人記録か、チームのためか。これは永遠のテーマである。

と、悩んでいたところ、てっぱちは5球目を元気に空振り三振した。単打でも二塁打でも本塁打でもなく、三振であった。なるほど。と、私たちは頷いた。

てっぱちの第四打席。2番塩見は、四球を選んで出塁していた。

ここで私と息子はまた緊急会議を開く。もちろん、てっぱちが何を打つかについてである。

8回表、ヤクルトは痛い逆転を許してしまっていた。8回裏1点のビハインドである。ここはもちろん、追いつくだけではなく勝ち越してしまいたい場面だ。

私たちは悩んだ。ホームランで一挙逆転してしまおうかと考えた。息子は言った。

「でも…。僕は塩見の盗塁も見たい。ここは塩見に走ってもらって、てっぱちはツーベースでいいんじゃないかな。同点にしておいて、延長に持ち込んで、単打。これでサイクル。あとは村上くんになんとかしてもらう。」

我が子ながら良い作戦である。私は静かに頷いた。頷いたところで、てっぱちは、元気に四球を選んだ。なるほど、と、私たちは頷いた。

結局この回、ヤクルトはノーアウト満塁のチャンス(という名のピンチ)を作るも、(もちろん)無失点に終わり、その後の展開についてはよく覚えていないけれどもとにかくてっぱちはサイクルを達成することなく試合は終わった。

まったくもう。と、私たちは話す。今季、こんな試合を何回見ただろうか。まったくもう。で、ある。

だけど、「てっぱちのサイクル、惜しかったねえ」と、実は惜しくもないことを息子と話しながら、私たちは思わず笑った。今季、こうやって笑いあうことが何度あっただろうか。まったくもう、である。

秋の風が、神宮に吹き抜けてゆく。むすめは「あきのにおいがするねえ!」と言う。今年も終わりが近づいてくる。

「楽しかったよな」と、私は思う。もちろん、つらいことだって山ほどあった。痛みの集大成がこの順位だ。でもそれでも、奇跡みたいな試合や、誰かの活躍や、もちろん成長も目にしてきた。

てっぱちが、村上くんが、そしてみわちゃんやハタケやたてさんが、もちろん、ぐっちが、そしてびっきーが、そんなたくさんのシーンを作ってくれた。みんながこの季節を彩ってくれた。

それを子どもたちも、一緒に目と心に刻んできた。それは私にとってはきっと、一生の宝物だ。

残り2試合。たくさん笑える楽しい試合になりますように。てっぱちがサイクル達成(盗塁つき)しますように。


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