でっかいバームクーヘンのような、チョコフォンデュのような、なんだか謎の（でもえらく原始的のようにも見える）道具をただ眺めながら、「これはもうコールドで良いのでは…」と、思っていた。

球場には大きな水たまりがいくつもでき、バームクーヘン状のモップらしきものと控えめサイズのスポンジでは、いつまでたってもその水たまりは埋まらないように見えた。

やることのなくなった中継では、ひたすら客席とベンチの様子を移していた。元山くんがこちらを向いてウインクしている。ちょっと、元山くんがママにウインクしたけど？と、息子に言うと、（いつものように「はいはい」とスルーされるかと思いきや）「うそ！！！！元山飛優！！僕も見たい！！」と飛んでくる。そうだった、息子は最近元山くんがお気に入りなのだ。わかる気がする、息子の好きなタイプだ。

なんというか無邪気で明るくて、ちょっとお調子者で、うまくいかない日なんかももちろんあるわけだけど、でもなんだかいつもはつらつとプレーしている。そしてベンチではウインクしてくれる。11歳の元気はつらつボーイの心をぐっと掴むのも、よくわかる。

だけどこれだけカメラサービスをして、結局このあと負けたらどうするんだろう…と、ここ二試合連続の逆転負けで弱気になっている私はつい、考えてしまう。「もう、コールドで良いのでは…」と、私はまた思う。

やることもなく、ただバームクーヘンと元山くんのウインクを見続けていたら、結局一時間後、試合は再開した。