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Niteflyte / ナイトフライト 1979

Niteflyte / ナイトフライト 1979

◆概要
ナイトフライトはマイアミ出身ボーカルのサンディ・トラノとキューバ出身のギタリストのハワード・ジョンソンのユニット。
アメリカの地元マイアミで歌っていたサンディをギタリストのハワードが引っ張り上げ、当時気鋭のミュージシャンを曲ごとに起用して1つの作品として仕上げたものである。

作品の演奏や音を聴いた所感での推測ではあるが、サンディ・トラノのボーカルを目の当たりにして、スタジオ・ミュージシャンとして人脈を築いていたギタリストのハワード・ジョンソンが一気に作品の構想が湧き、それと同時に自身の演奏家としてのキャリアのステップ・アップだったり、これまでの経験をアウトプットするために実現されたものというのが本作品の趣旨の気がする。

サンディ・トラノのボーカルは、どこまでものびのびと歌い上げる。それを土台に、当時流行した先端的なソウル音楽のグループの色々な要素を拝借するも散漫にならず、独自性のあるものに昇華している。ハワード・ジョンソンのギターは時に攻撃的でありメロウであり、メリハリが効いたダイナミックなギターが聴ける。

◆参加ミュージシャン
主要メンバー
ハワード・ジョンソン パーカッション、リードボーカル、バッキングボーカル
サンディ・トラノ ギター、リードボーカル、バックボーカル

追加ミュージシャン ★有名な人物

★ヘイミッシュ・スチュアート - ギター、バックボーカル
ex アベレージホワイトバンド

ベース
フランク・コーネリアス 
フランク・ガーヴィス
ラモント・ジョンソン 

バッキング・ボーカル
フィリス・ハイマン

ドラムス
セドリック・ライト
ジョー・ガルド 
スティーヴ・フェローン ex アベレージホワイトバンド

キーボード
ジャック・ウォルドマン

パーカッション
リッチー・プエンテ 
ルーベンス・バッシーニ

サックス
アンジェロ・ディ・ブラッチョ
★デヴィッド・サンボーン
ボブ・シューマッハ
★マイケル・ブレッカー

トランペット
★ランディ・ブレッカー 

◆曲目
All About Love
If You Wanto It
Sunshine
Make It Right
Get On The Fun
Tryin' To Find
I Wonder
Easy Come
No Two Alike

◆曲目感想
All About Love
もろにアベレージ・ホワイト・バンドの作風が土台になっているが、本家は全体の演奏がこんなに前にグイグイと出てこない。コーラスもはっきりしている。一方でこのグイグイ来ている要素は、アース・ウィンド・ファイアをの雰囲気を感じさせたりする。(特にファルセットのコーラス部分)冒頭からこの後も期待できるアップテンポのナンバーから始まる。

If You Wanto It
アース・ウィンド・ファイア直結のタイトル歌詞のハーモニー。本家よりさらにストレートな歌唱を感じる。ドラムがきっちり演奏しており、まったりと粘着性のあるソウルでなく、クラブやディスコで重宝されそうな仕上がり具合に聴こえる。マイアミのサンディ・トラノ陽気な歌唱が要因か。時代特有のフリー・ソウルなナンバー。

Sunshine
冒頭左右に聴こえるオクターブのギターカッティングがかなり攻撃的だ。ブラザース・ジョンソンを深堀りしたファンキーなハードロック。
さらに暴論を承知で敢えて書けば、第4期ディープ・パープルのファンキー&ソウルのハードロックに匹敵する。ギターのカッティングとソロが過激にアグレッシブで、ぴったり追随するドラムも完全にロックだ。

Make It Right
アイズレー・ブラザースのロナルド・アイズレーの様なねっとりしたファルセットのボーカルに似せて来てる。
しかし似せて来るアプローチのセンスが良いので、聴いいて心地良い。そしてアイズレーのバラード必勝パターンがあるとすれば、その「ポジティブさ」の1点を極限に追求している。そして曲の構成が非常にドラマチックで、良く想像されるソウル的なドラムを逸脱してラウドに叩いているのが、ここでは正解。

Get On The Fun
空間系のコーラスと空ピッキングを混ぜたギターのカッティングに才能とセンスを感じる。ここではPファンクやブラザース・ジョンソンの様な下世話なボーカルと絶叫ファルセット・コーラスが聴ける。
他方ドラムの自由で攻撃的なドラムで独特の「陽気さ」が存在する。

Tryin' To Find
ブレッカー・ブラザースとデヴィッド・サンボーンの作風を実現する為に実際に本人達の演奏を借りている。
遠慮なくオリジナリティに昇華。ギター・ソロもトリルと早弾きが入ったハード・ロックであるが、デビッド・サンボーンのサックスのメロディ・ラインに沿っている。一言で言えばアグレッシブなアーバン・ファンクだ。

I Wonder
ヘイミッシュ・スチュアートが参加してるので、アベレージ・ホワイト・バンドの要素をふんだんに感じるミディアム・ソウル・ナンバー。実際に参加しているミュージシャンの必勝パターンを素直に取り入れていくところが、ここでは非常に良い結果に繋がっている。

Easy Come
この曲はどこぞのグループの影響下にあるのではなく、ナイトフライトというオリジナル性を一番感じる。
サックスを前面にした演奏を土台に、明るくシャープにどこまでも突き抜けて歌い上げるサンディ・トラノの長所を見事に引き出している作中のハイライト。

No Two Alike
最後にレゲエなのだが、この曲の持つ魂やパッションの大部分が「ロック・スピリッツ」だ。ドラムの権限がかなり自由に与えれている。手数も多いがどれもボーカル引き立てた情熱的ナンバー。叶うのならばこの曲の持つ「バイブレーション」をライブで体感したい。


◆総評
ギタリストのハワード・ジョンソンが温存させていた「理想の音楽」を綺麗に完成させた作品。

一流スタジオ・ミュージシャンのブッキングと高度なマネジメントが流石。ヘイミッシュ・スチュアート、デヴィッド・サンボーン、ブレッカー・ブラザースの売れっ子を起用するも、基本的な起用方法・目的は曲毎に適材適所であり、作品を聴く限り「何かが足りないから起用する」という方針では無い。

しかし、ドラマーに関しては複数人のドラマーを起用するが、全て共通しているのは「演奏の権限や裁量」を最大限に与え、個々の独自の解釈で叩いてもらっていて、この点がソウル・ミュージックから抜きんでた個性的な作品に昇華している。

表の顔「王道ソウル」と裏の顔「アグレッシブなロック」
「アベレージ・ホワイト・バンド」、「アース・ウィンド・ファイア」、「ブラザース・ジョンソン」、「アイズレー・ブラザース」「Pファンク」といった王道ソウルが表の要素であり、裏の顔はハワード・ジョンソンがあえて表現をしたかった「アグレッシブなロック」と「メロウで甘美」なギターに加えて、ソウルらしからぬ「ワイルドなドラム」という二律相反がこの作品では奇跡的な融合を遂げている。

最新の現場で鍛え上げた美味しい要素を上手く包括して消化できるセンスが見事に「勝利」に導いた名盤。

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