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(ライヴ体験記)04: なな LIVE@横浜馬車道Paradise Cafe (Mar. 30 2021)

【進化】

なな LIVE
<Paradise Cafe 20th Anniversary Special Live>
@横浜馬車道Paradise Cafe

なな (Vo) 川勝陽一 (Pf)

***Set List***
1st
1 木綿のハンカチーフ(太田裕美 / 1975)
2 芽ばえ(麻丘めぐみ / 1972)
3 十七の夏(桜田淳子 / 1975)
4 ロマンス(岩崎宏美 / 1975)
5 赤い風船(浅田美代子 / 1973)
6 雨だれ(太田裕美 / 1974)
7 まちぶせ(石川ひとみ / 1981)

2nd
8 ブルー(渡辺真知子 / 1978)
9 17才(南沙織 / 1971)
10 思秋期(岩崎宏美 / 1977)
11 乙女のワルツ(伊藤咲子 / 1975)
12 九月の雨(太田裕美 / 1977)
13 気まぐれビーナス(桜田淳子 / 1977)

Encore
14 わたしの彼は左きき(麻丘めぐみ / 1973)

(カッコ内は原曲歌手名/発表年)
**************

暖かな日々がやって来た。桜も咲いた。忙しなくも心が明るくなるはずの季節。しかし今は、自粛と日常の狭間で一喜一憂。そしてそんな日々に疲れてきた。目に見えぬ曖昧な恐怖と、見えぬ恐怖への倦怠…ムシャクシャする。

そんな3月末、実に久々やって来た横浜・関内。

ななというシンガーは、20歳前後で昭和歌謡に目覚めてまだ数年とはいえ、その声の優しさと清らかさがこのジャンルに非常に合う。70年代昭和アイドル歌謡を取り上げているバンド「スマイリー小松とファンタジー」の専属ヴォーカルとしても活動していて、ライヴでその歌唱力に磨きをかけている。
(今回のセトリの多くはそのバンドのレパートリーでもあった)

そんな彼女の単独ライヴ。名門パラダイス・カフェ(今年で20周年)初出演。相方は師匠・川勝陽一

太田裕美の名曲“木綿のハンカチーフ”で始まったステージ。選曲・構成は川勝なので、恐らく緊張しぃなななのことを考慮して、オープニングに彼女の歌い慣れた曲を持ってきた親心。朗らかだが時系列で醒めていく恐ろしい松本隆の歌詞を、筒美京平のメロディが爽やかに流していく。ななは軽やかに歌うが少し堅いか。続いての”芽ばえ”も筒美サウンド。サビの最後の譜割が独特。麻丘めぐみのデビュー曲だが、70年代前半のブラック・コンテンポラリーなコード進行を感じるのは気のせいかしら?少女性の高い歌詞にななの声質はしっくり来る。

昭和アイドル歌謡の特徴のひとつ「17歳の少女の恋心を歌った曲が多い」。”十七の夏”は桜田淳子が実際に17歳の時に歌ったもの。「裸の胸にイニシャル 落書きしてよ」という衝撃的な歌詞…ん?なんだ阿久悠か納得。解れてきたななの声が抑揚を効かせる。そして恐らく恣意的に上擦る語尾…アイドル歌唱への気配りがみえる。”ロマンス”(岩崎宏美)は少女と女性の間を捉えた歌詞が…てなんだ阿久悠か再び納得。思わず唸ったのは、ななが先程の”芽ばえ”と歌い方を変えていたこと。”ロマンス”での彼女は声が太かった。低音が響き恋心をより現実感あるものにしているような…だとしたら中々の技巧。

雨だれ”は唸った。太田裕美デビュー曲(作詞作曲は”木綿の〜”と同じ)。この歌は音階を追ってなぞることはできても、声の抑揚だけでなく感情の畝りも持っていないと到底歌えない、非常に難しい曲。それを、サビに入ってからの急激に消え入りそうな心細さ、寂しさを、ななは見事に表していた。今まで彼女が歌った”雨だれ”の出来を遥かに超えている…いや私が知らなかっただけか…不意に心に沁みてしまった。

後半は”ブルー”でスタート。私の大好物・渡辺真知子代表作のひとつ。ななは彼女の歌をよく歌うが、この歌もまた非常に似合う。以前は背伸びしてる感じがしなくもなかったが、今はしっくり。ファルセットに展開するサビを難なくこなす。川勝のピアノは(この曲にかぎらず)盛り上げ上手この上なし。オイシイ所での派手さ、音数を絞りたい場面でのしっとり感。岩崎宏美の”思秋期”もまた、いじらしい世界観が会場を染めていく…ここまで感情を込めて歌うななを観たのは初めてかもしれない。それにしてもなんて素敵なタイトル…あこれ阿久(ry

渋い選曲”乙女のワルツ”の伴奏は、聴くポイントを変えるとカントリー調にも聴こえてくる不思議さ。シンプルなメロディなだけにすごく難しい歌唱。丁寧な発声と発音はななの特徴で、歌詞がしっかり伝わってきた。”気まぐれビーナス”は振り付け含めしっかり演じていたが、力強さが歌唱にしっかり表れている点も非常に素晴らしい。この歌唱は以前の彼女には無かったポイントで、これができるということは、曲の選択肢も今後さらに広がるのではないだろうか。
(原曲よりもかなり高速だったのでビックリしたけど笑)

アンコールは”わたしの彼は左きき”。単純な構成だけど深く印象に残る歌詞とメロディ。永く歌い継がれる音楽の典型例。ななの軽快な歌声と跳ねる川勝のピアノ。心地良い、歯切れ良いエンディングとなった。

ライヴMC中、ことごとくインサートしてくる川勝のボケの嵐…実はなな以上に川勝が緊張していたのかも笑 いやいやこの人、日本歌謡曲の歴史上トンデモなく凄い人のひとり…変な人だけど(失礼)。
その師匠から多くのことを学んでいる最中であり、通称・小松組(バンドのこと)で研鑽を積んでいるななは、日々進化というか、成長というか、変化していると確信した。想像を遥かに超えて歌の表現の範囲が広くなっていて、とても驚いた。
お二人、お疲れ様でした。また、パラダイス・カフェのオーナー滝さん、スタッフの皆さんもお疲れ様でした。爽やかで温かい、季節に合った素敵なライヴでした。

磨かれていく歌の世界は、間違いなくもっとすごくなる。ななに少しでも興味を持った方、ぜひライヴ観戦オススメです。

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なな
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スマイリー小松とファンタジー(なな所属バンド)
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