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フランス音楽への誘い

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私のレパートリーの中心であるフランス音楽を、近しい芸術文化も交えながら、幅広く書いていきたいと思います♩
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第9章-カーナヴァル🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第9章-カーナヴァル🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 楽しそうなカーナヴァルの音と、がやがやと押し寄せてくる群衆の様子が描かれたチャーミングな1曲。
 最後のフレーズには「あの人たち美人かなあ」のセリフが書かれているのですが、本当にそう聴こえてくるような音使いがやはり見事。

Erik Satie : Sports et Divertissements
エリック・サティ『スポーツと気晴らし』

🎨プレイリスト

🎨概要

第8章-海水浴🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第8章-海水浴🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 普段から陽に当たるのが好きなフランス人たちは、夏のバカンスで海水浴に行くのも最高の過ごし方かもしれない。少なくともバカンスになればいつでもパリから人が減る。みな休みを都心感のないところで過ごしリフレッシュする。仕事をする場所、勝負する場所、異様なスピードで強気に歩く場所…フランス人たちがこう言っていた。もっとも、パリ生まれはそのプライドがあるからあまり言わないが、別の都市の出身の人たちは言ってい

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第7章-ヨット遊び🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第7章-ヨット遊び🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 ヨットに乗ったものの、波が激しすぎて「降りたい、もっと楽しいことがしたい」と言っている“きれいな人”を描写している。

Erik Satie : Sports et Divertissements
エリック・サティ『スポーツと気晴らし』

🎨プレイリスト

🎨概要

第6章-魚釣り🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第6章-魚釣り🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 魚を釣らない魚釣り。そういえば第2章『狩』も、動物を狩らない狩人だった。サティはこの作品集でも「力」を皮肉り、一番小さなもの、一番弱いもの、一番目立たないものにスポットをあてる。

 この曲は魚の近づいてくる様子や水しぶきが愛らしい。壮大な作品ももちろん良いが、このような他愛もない-しかし愛に溢れている作品というのもとても良い。

Erik Satie : Sports et Divertiss

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第5章-目隠し鬼🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第5章-目隠し鬼🎨サティ『スポーツと気晴らし』

  鼓動の「ドキドキ」が聴こえてくるようなタッチで描かれたこの作品は、短いながらも心の揺れ動き、不安と期待の狭間、決定的な事実、悟り-というテーマが流れている。
 「私」を見破ることのできなかった相手との今後は、受け手の想像に託されている。

Erik Satie : Sports et Divertissements
エリック・サティ『スポーツと気晴らし』

🎨プレイリスト

🎨概要

第4章-花嫁の目覚め🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第4章-花嫁の目覚め🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 舞踏へ浮足立つような出だしののち、目覚めのファンファーレが鳴る。ラッパの音、お祝いに来た人々の足音、フィアンセと喜びを分かち合い踊る犬など、細かな断片が2セットずつ繰り返されて発展していく。
 サティはある時期から小節線を記さなくなるが、フレージングは至って自然だ。見えないところで反骨精神を漲らせている。彼の音楽は、刺激的でありながら低刺激だ。聴く者のその時々の感情を邪魔することがない。彼のよう

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第3章-イタリア喜劇🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第3章-イタリア喜劇🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 「喜劇」としているところが良い。サティは深刻さを深刻に扱うことを滑稽に思っていたのではないか。ドビュッシーにしてもラヴェルにしてもそう感じている。深刻さというのは誰もが持ちうるもので、人生においてとてつもない悲劇にみまわれることも、如何なる人にも起きている。ただそう見えないだけで、計り知れない重たいものを人々は抱えて過ごしている。その各々の傷口に、優しく寄り添ってくれるもの-それは対峙するという

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第2章-狩🎨サティ『スポーツと気晴らし』

第2章-狩🎨サティ『スポーツと気晴らし』

 “変人”と名高いサティではありますが、その奇妙さはあまりに鋭敏な感受性を持つ人間のみが持ちうる優しさ-と思うことがあります。

 『スポーツと気晴らし』の第2章「狩」には、その欠片が見え隠れするようです。狩に出かけた”狩人”である“私”は、ウサギの愛らしさを見、ナイチンゲールの美しい声にうっとりとし、イノシシの子どもを祝福し-気が付いたら、クルミだけを打ち落としているのです。

 小動物に癒され

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第1章-ブランコ🎨サティ『スポーツと気晴らし』より

第1章-ブランコ🎨サティ『スポーツと気晴らし』より

 揺れる心と掛け合わされた『ブランコ』は、繊細な心模様をさりげなく描くサティらしい作品です。終始刻まれる8分音符は均等に演奏するよりも、どこか不器用なほうが人間らしいかなと思いました。

 皆さんのイメージでは、イラストの世界はどのように動き出しますか?

エリック・サティ『スポーツと気晴らし』
🎨第1章-ブランコ

Erik Satie : Sports et Divertissements

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サティ『スポーツと気晴らし』🎨序章-食欲をそそらないコラール

サティ『スポーツと気晴らし』🎨序章-食欲をそそらないコラール

エリック・サティ『スポーツと気晴らし』全21曲を徐々にこちらのYouTubeチャンネルにアップしていきます。

あまり日本では知られていない作品ですが、気楽に楽しめる、そして小粋な曲集です。
シャルル・マルタンのイラストとのコラボレーションである本作品は、ひとつひとつが最小限の選び抜かれた言葉と色彩で紡がれる“音の絵本”のよう。

サティの言葉を借りて、「優しい微笑みとともに」お聴きいただけました

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フランス音楽への誘い vol.15 ほんの少し、ひとり

フランス音楽への誘い vol.15 ほんの少し、ひとり

ほんの少し、ひとり

 「感動しそうだな」と思う場所へは、極力ひとりで行きます。自分のなかで一度完結し、言葉にならない何ものか(=感動)を噛み砕くことで心のなかに新しい息吹が芽生えてくる。それを実感してからじゃないと言葉を見つけることは困難で、おそらく誰かと一緒に行ったなら、全て上の空で返事をするか、「感動体験」を消化する前に流してしまうか、どちらかになってしまいそうです。もちろん、全てをひとりで

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フランス音楽への誘い vol.14 メシアン音楽と「増4度」の旅

フランス音楽への誘い vol.14 メシアン音楽と「増4度」の旅

序文ある道を歩くとき、目的地が見えている場合と、いつ辿り着くかわからない場合、どちらがより発見が多いだろうか。

或いは物語を読み進めるとき、ひたすらに純粋無垢なヒロインと、悪女でありながら人間臭さを放つヒロイン、どちらがよりリアリティを帯びているだろうか。シェイクスピアの言い得た「緑色の目」の持つ色褪せない不気味さが、それを示しているように思える。

思えば私たちの人生は、未知の連続である。答え

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フランス音楽への誘い vol.13 静かな孤独、離れた優しさ

フランス音楽への誘い vol.13 静かな孤独、離れた優しさ

バッハの訥々としたフーガの歩みは年々染みるし、モーツァルトのシンプルな歌心に滲む艶やかさは幸福な恋心を運んでくる。

ハイドンのユーモアは上品な笑みを軽妙に引き出すし、ベートーヴェンの哲学はやはり巨大だ。

シューベルトの深淵なる孤独は凍った心を涙で溶かすし(しかししばしば「天国」への憧れが強すぎるので気を付けなくてはいけない)、シューマンの溢れすぎる愛情には相変わらず掻き乱されて、ショパンの音列

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フランス音楽への誘い vol.12 交流の側面から

フランス音楽への誘い vol.12 交流の側面から

「フランス音楽」という括りで言葉を提示するとき、「フランス人」ということを念頭に置いてはいない。

近代(19世紀~)のフランス音楽は、パリで繰り広げられる舞台を中心としていた。

そこに大きな華を添えたのは、バレエ・リュス、つまりロシアのバレエ団だった。

バレエ・リュスはロシアの芸術監督であるセルゲイ・ディアギレフを中心に、数々の分野で斬新な実験、芸術革命を行った。

バレエの鬼才ニジンスキー

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