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銭湯巡りのこと。

 「おとう」
 6年生の息子は私のことをそう呼ぶ。家族間で「さん」を付けることに違和感を感じて、そう呼ばせることにしている。そうすると「お」も必要ないんじゃないかという意見もあるかもしれないが、そこは語呂というかリズムというかしっくりこないというか、つまりそこまでこだわってるということでもないのだ。もちろん母親のことは「お母さん」である。

 週末近くになると「おとう次はここ行こ」と、自分で調べた次に行きたいスーパー銭湯の情報をLINEで送ってくる。

 大きく広い、様々なお風呂に入ることが楽しいらしい。加えて、サウナに入り発汗による減量もその目的のひとつだと教えてくれた(風呂上がりにジュースを飲んだりアイスを食べるのだが、それはサウナに入ったことで相殺されるらしい。じゃあ減量は?)

 私も子どもの頃は友人たち2、3人と近くの銭湯に足しげく通っていた。昔は現在のようにスーパーが付くような立派な銭湯ではなく、いわゆる町の銭湯だ。

 番台におばちゃんが座っていて、特徴的な鼻にかかる声で「いらっしゃいまっせ」と声をかけてくれる。必ず「まっせ」と「ま」と「せ」の間に小さい「つ」入れる。風呂代を払い、積まれた脱衣かごをひとつ取り、「いらっしゃいまっせ」とおばちゃんのモノマネをしながら服を脱ぎ、風呂に入るというのがお決まりの流れだった。

 朝から息子とスーパー銭湯に行き「このお湯はなかなかええ湯加減やな」「ちょっとぬるすぎひん?」「露天風呂行こ」「もっかいサウナはいるわ」「ぼちぼち洗おか」と何でもない会話を息子と交わしながらボーッと過ごす。

 いつまでスーパー銭湯巡りに付き合ってくれるだろう?4月からは息子は中学生になる。部活や塾など忙しい日々を送ることになるだろう、なかなか父との時間は取れないかな?と少し寂しい気持ちもありながら、次はどこのスーパー銭湯に一緒に行こうかと、帰りに寄ったラーメン屋さんでラーメンをすすりながら考えているのだ。

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