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感想 八秒で跳べ 坪田 侑也 スポ魂ものバレーというのが珍しい。この八秒の思考、経験者でないと思いつかないと思う。

スポ魂ものは一つのモチーフになっていると思う。
野球、サッカー、ボクシングなどには名作も多いが、バレーというのは珍しい。
僕は、バレーは中学の体育でしか体験はないし、テレビで試合をやっていても見ることもない。

本書を読んで、少し興味がわいた。

主人公の少年は、僕の嫌いなタイプだ。
レギュラー選手だったが、怪我をしその間に控えにポジションを奪われて腐ってぐじぐじしている男である。その怪我の原因となった女子との交流も見どころだが、面白いのはバレーの試合だと思う。

合宿でライバル校のスター選手と会話をする。
試合中の思考について問う。
無心でやっているのか?
八秒の思考をしていると彼は言う

バレーボールにおいて、点が決まってラリーが途切れ、次のラリーが始まるまでの時間。それがだいたい八秒くらいだ。


その間に、次の状況のシュミレーションをする。

無心になりたいという主人公とはまったく違う取り組みだ。
くだくだ彼みたいに後悔したり、不安で頭の中がいっぱいになつたりはしていない。

ああだ、こうだと最悪を考えすぎる。不安で身体が動かなくなる。
だから不調なのだ。

シュミレーションすることで自分の行動予測を予めしておくと、実際の場面では自然に身体は動く。それが八秒の思考だ。

ネガティブな受け身ではなく。ポジティブな攻撃的な態度。
この違いは大きい。

こういう思考が小説で展開できるのは、バレー経験がないと出来ないし、この小説はこういうリアルなものが描かれているのが楽しい。



2024 3 3
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