感想 ゼロからの資本論 斎藤 幸平 マルクスの資本論を著者独自の新解釈でわかりやすく書いてあるので読みやすいが、かなり癖がある。しかし、この読書の先には未来がある。面白い。
マルクスの資本論は何度も挫折している。言葉の難しさもあるが考え方が古臭くて共感できなかったのが投げ出した理由です。
本書は著者の新解釈も含めて、とても具体的で読みやすい内容であります。ただ、自分の都合のいいように議論を展開している風にも思えるところが多々あります。ツッコミどころも満載です。
しかし、内容は面白い。これは著者の理想であり、本当にマルクスがこんなことを考えていたのかなと疑問があります。
当然、激烈な資本主義批判が登場する。
例えば水、本来は無料であったものが商品となり有料に。
昔は川や井戸の水を飲んでいた。無料だった。
こういうのをマルクスはコモンと呼ぶ。共有の財産とも解釈できます。 商品には二つの価値がある。 使用価値 と 価値 資本主義では、いくらで売れるかが大切 使うための商品の価値であったものが、資本主義が導入され、いくらで売れるかという価値が産まれた。
終わりのない価値増殖のゲーム、それが資本主義です。
言い換えるならば金儲けのための運動。 資本家は金に働かせ労働者を使い余剰価値を得ている。よく搾取という言葉があるが、こういう構造をある種の人たちはそう呼んでいる。 労働者は搾取されているのに、何故働き続けるのか。
それしか貨幣を得る手段がないからだそうです。 資本家をマルクスはこう表現している。
今では考えられないような低賃金長時間労働、子供も学校には行かずに労働していたようだ。26時間ぶっ通しで働き過労死した事例にはゾっとした。 過労死がなくならない理由・・・
労働力を売る=奴隷なのだそうです。マルクスは労働者を賃金奴隷と呼んでいる。 ロボットやAIの活用により労働そのものを失くしてしまうという考えはマルクス的ではないと著者は言う。 かつてのギルドのように自律的な働き方を取り戻すことが大切と考えているようだが、資本主義の根本は金儲けであるので、人が仕事から解放される道筋は不可避だと感じる。そういう意味ではマルクス的な世界観は資本主義とは対立していると思えます。
つまり進化を否定しているのか。 マルクスは資本主義を超えたもの、コミュニズムを目指していた。それは税金を上げて富を再分配するとか、賃上げとか今、政府が取り組んでいることではなくて、もっと違うものだったと著者は言います。
よくソ連の崩壊でマルキシズムは否定されたと言いますが、著者は反対意見を述べています。
生産手段や生産物の私的私有が資本主義の本質で、国有化すると社会主義と思われがちだが、国有化しても労働者は搾取されるので、それは社会主義ではなく、一部の官僚による支配があり国家権力が暴走してしまうことがある。 要するに、国有化=社会主義ではない。 資本主義を乗り越えるために必要なのは、搾取のない自由な労働のあり方を産み出すことにある。 それは商品や貨幣に依存しない社会です。 生活に必要な財 住居など やサービス 教育 医療 公共交通機関など が無償でアクセスできるようになればなるほど、脱商品化は進んでいきます。 中国などの共産主義国家よりも、福祉国家のほうがマルクスの理想に近いと著者は言っている。
この考えには僕も賛同します。
ヨーロッパの福祉国家こそが、これから僕たちの目指す道に感じます。
資本主義を止めてということでしょう。
生産手段と地球を コモン 共有財産 として取り戻す。 コモン 共有 の再生
これが理想だそうです。
社会の富が商品として現れないように、みんなでシェアして、自治管理していく、平等で持続可能な社会をマルクスは目指していたと著者は言いたいようです。
具体的には・・・・
これは利益を求めないで、必要なものだけを生産していく消費社会を目指すということみたいです。
無駄なものを作らない環境にやさしい社会だそうです。
水や森林や資源などの「富」を、国や市場に管理させるのではなく、アソシエーションを通じて「コモン」としてみんなで持続可能な形で管理する社会に変えることです。
理想はわからないでもないが、とりあえずヨーロッパの福祉国家みたいな医療も教育も無料。みんなが不安のない世界を目指すのがいいように感じました。
2024 3 2
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