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ビナス・アンド・スプレッダー 第一話(後)

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ゾウジが恭しくアレナのストッキングに触れると、股間がつうっと裂け、萎えたものがまろび出る。
「失礼します」
少年はそう言い、返事も待たず女性のペニスを下から掬うように持つと、ささくれ一つない掌でもって丁寧にしごき始めた。
「……んン……」
執行府の長たる者の押し殺した声とともにその肉棒に血流が流れ込むと、たちまちゾウジの頬の真横まで伸長する。
「勃起機能は問題ありませんね。では、改めて」
そう言い、彼は亀頭を頬張った。

「おお……」と、応接室の他の女性……警護官らから感嘆が漏れる。ゾウジは短く舌を出し、少しうつむき加減に喉の奥まで巨杭を迎え入れる。
喉輪の締め付けが不意にアレナの先端を刺激し、それに驚く間もなく少年は顔をストロークさせた。
じゅぐ、ぐぽ、と、空気が漏れ出る音が広くはない部屋に響き、それは同様にアレナの羞恥心を煽った。高級セクサロイドもかくや。とばかりに。
執行府の長たるもの、表情一つもツールの一つとして使わねばならない。そう常に強いているものの、これは我慢できるものでもなかった。
とん、とゾウジの肩を叩き、合図をするのが早いか粘液を激しい勢いで吐き出した。

「え……あ……あっ! くちに……!? も、申し訳ありません。なにか入れ物、吐き出すものを」
一瞬の自失のあと、単なる情事のごとく放出してどうするのだ。とアレナは自責する。何かコップや平皿にでもと探す彼女を手で制し、ゾウジはこくりこくりと喉を鳴らしてねばつきを嚥下した。
「……問題ありません。解析中」
そうゾウジは断ると、しばらく瞑目する。

「放出量、多……いえ、平常。精子量、少。遊泳能力、極小。総合して……やはり問題は”こちら”ですね」
そして開眼したゾウジは、つらつらと言葉を紡ぐ。
「残りの詳細な調査結果はもう少々時間を頂きますが、根本的な遺伝子変異は見られないと思われます。
……報告された事項の追試はこれで完了。対処を決定、及び、実行を開始します」
その言葉に表情を引き締め、了解致しました。と執行府代表としてのアレナは力強く頷いた。

ゾウジ……彼は第22世代型多目的合成人間・生体監視モデル。
この美しき女神たちだけの星に、種子を蒔きに来た者だ。

【第一話おわり】
【第二話へ続く】

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