私が苦しみ続ける理由は

私が苦しむ理由は私のやったことの結果が惨めだからなのではないか?


たとえば、絶えず結果が出続けていれば、それを私自身が喜び、受け入れ続けていれば、私が苦しむことはなかったのではないか?

私が一生懸命にやったことが、どうにも目に見える結果にならず、ほとんど黙殺されるのではないかという予感が、いや確信が、私を苦しめるのではないか?

本に逃げるのは、すでに結果を残した先人たちと自分の間に、多くの共通点を見出し、自分もまたいつか結果を残せるはずだと推論しているからではないか?

私は否定できない。私の中には、そういう部分がある。私は、何も成功が欲しいわけではないが、自分のやったことが、なんの音沙汰もないことに、どうしようもない恐怖を感じる。

自分の意思と感性を信じて書いたものが、誰の胸にも響かず、それを愛するのが私だけであるのだということを想像すると、まるで凍える大地にひとり取り残されたような気持ちになる。

具体的な話はすべて、私をさらに惨めにする。私は、それを語りたくない。

noteとは別に、やっていたことがあった。その結果に、私は不安を抱いている。具体的には語らない。語るべきでもない。

前も似たような気持ちになったことがある。他人や偶然に自分の作ったものを委ねるたび、私はこの気持ちを味わう。

どうせ評価されない。どうせ分かってもらえない。どうせ、そもそもちゃんと読んでもらえない。

大多数の人間が評価するものが価値あるものというわけじゃない。分かってる。
いつだって価値あるものは……こんなことは言いたくないが、分かる人間にしか分からないのだ。でもきっと、私の作品はそういう人まで届かないし、届いたとしても、その人にとって私の作品は「よく埋もれてしまう類の良作」に過ぎないかもしれない。というか、そうなると考える方が自然なのだ。

なんて悲しいのだろう。私が真剣に書いたものが、どんどん打ち捨てられていく。

酷い言葉を投げつけられて、悔しがっていた方がましだ。無視されて、何もなかったことにされるよりは、くだらないと侮蔑の言葉を浴びせかけられている方がマシだ。

分からない、読んでない、読めなかった、と言われるくらいなら。

褒め言葉は全部疑わしい。それは全部、結局その人自身が評価し返してほしいから、そうするのではないかと邪推してしまう。
褒め言葉に対して「なんで私を褒める必要があるんですか?」と素直に聞けるようになりたい。
「私を褒めて、あなたに何の得があるんですか? あなたは、なんの目的があって私を褒めるんですか?」
そう尋ねられる人間でありたい。私は、面と向かって褒められるよりも、第三者に向けて批評されていたい。

私は、評価されていたい。その評価が高くても低くても、無視されているよりはずっとマシだ。私は……私は、誰にも見つけられずに、塵になっていくことが耐え難い。耐え難いんだ!

私は目を背けることができない。自分の情けない部分もちゃんと見つめて、綺麗に化粧して、飾らないといけない。

私は私の虚栄心を、もっと上手に扱えるようにならなくちゃいけない。私は、虚栄心を隠そうとする。ないものとして扱おうとする。それがいけないんだ。

虚栄心も、ひとつの徳になり得るんだ。虚栄心は、バイタリティの源になる。活力に変わる。私は、私なりのやり方で、認められていたい。尊重されていたい。


私は知っている。私が弱っているとき、素直になるしかないとき、書いた文章は……なぜか好まれる。

なぜ人は弱さに惹かれるのだろう。同情しているのか、それとも共感しているのか。弱さになんて、私は共感したくないのに。

腹が立つ。苛立つ。私は、私が投げやりになったときに書いたものばかり、人が好むことに、腹が立つ!

私の努力も、生き様も、憎しみも、悲しみも、笑いも、喜びも、どれも全然伝わらないのに、私の弱さだけが人に伝わり、そいつらが学び、褒めるのが、私にはどうしようもなく腹が立つ! いやになる! いやになるのに、それをなくすことができない自分に、余計腹が立つ!

胸が張り裂けそうだ。どうしてこんな思いをしなくてはならないのか。どうせ私は愚かなんだ。どうせ私はどうしようもない人間なんだ!

本音と冗談の区別もつかないくせに、面白がって私に触りやがって……

「うわぁ荒れてるなぁ」
じゃねぇんだよ! どこから入ってきたんだ! 他人事みたいに私のことを思う私は、いったい何なんだ……ずっと、私の中にいる。

苦しい。悲しい。悔しい。いつまでこんなこと続けなくちゃいけないんだよ。どうしてこんなに考えなくちゃいけないんだよ。誰が私にそれを命じたんだ? 誰がそれを私に選ばせたんだ? そもそも私には、どの選択肢が与えられていたの? 与えられていなかったの? この道は、どの道に繋がっているの? ねぇ……

助けなんて求めてない。

嘘。助けてほしいくせに。

助けることもできないくせに! 嘘つきばっかりだ! 私も、お前らも! みんな嘘つきだ。嘘つきすぎて、何が嘘で何が嘘じゃないかも分からなくなってる! 大嫌いだ、お前らなんて。人間なんて、言葉なんて。

どれだけ悩んでも、どれだけ考えても、分かったことといえば、何ひとつ信用に足りないということと、私自身がどれだけ醜いかということと、私自身がどれだけ愚かで、情けない存在かということだけだった。
悩むことに、考えることに、どれだけの意味があるだろうか! 私の人生に、何の意味があるだろうか!

全部全部無駄だった! 私のやったことは、全て無に帰した! 私は、くだらない人間だった! くだらない人生だった! お前らもそうだ! お前らのやったことも全部無に還る! お前らは、私と同様、いや、私よりずっとくだらない人間だ。くだらない人生だ。

そうだ。それが私の本音なんだ。嘘つきの私が、心の底で思っていることなのだ。
何が「私は人を許せない」だ。何が「私は品性を重んじる」だ。

そこにあるのは、人間全般に対するどうしようもなく深く淀んだ軽蔑じゃないか! 軽蔑がゆえに、自分を高く掲げようとして、それも失敗して、泥の沼の中に落ちて、本音で語ることしかできなくなって、お前はそこで、毒でしかない言葉を吐き続けている……


「真実は、人間にとって毒である」
この命題が正しかったとして、私はそれでも考え続けるのだろうか。それでも、真実に触れ続けるのだろうか。私は、それでもこの世界で生きることを、正しいことだ受け入れることができるのだろうか。あぁ、太陽を見続けていたら目が見えなくなるように、私の目も見えなくなっていくのだろうか。

そんな大層なものじゃないだろう。お前はただ、自分自身の醜さを見続けているだけじゃないか。自分自身の醜さを見続けても、それを消すことができないことに気づいて、それから目を逸らすか、向き合い続けるか、迷っているだけじゃないか。

あぁ分かってるさ! 私は連中の醜さからは、早々に目を背ける決断を下した。私が人と相容れない理由は、そこにある。私は他人の醜さに何か感情を抱いてしまうくらいなら、背を向けて、関わらないという判断をする。そうだ。私はすでにその生き方を決めている。

私は他人の醜さからは、逃げることにした。社会からも逃げる。金からも逃げる。義務からも逃げる。仕事からも逃げる。私は、それを私の正義とした。

だが、どうだ? その先にあったのは、また別の醜さじゃないか。自分自身の醜さじゃないか! あぁ!
自分が逃げ出した当のものが欲しくてたまらないのだろう? 金も、地位も、名誉も、理解も、愛情も、友情も、全部欲しくて仕方がないんだろう! そうなんだろう? 正直に言ってしまえ。だが、手に入らないんだぞ! 逃げるとすでに決めてしまったんだぞ! あぁ! 結局お前が苦しんでいるのは、お前自身に全ての原因がある!

お前が苦しむのは、お前の中で、相反する思いがあるからなのだ。憎み合う気持ちがあるからなのだ。お前は、自分自身の中で、ずっと戦い続けている。お前とお前が争い続けている。

お前はそれを知っているから、他者を巻き込まない。誰にもそれを打ち明けず、お前自身の中で、苦しみ、叫び、嘆いている。お前が平和的な人間なのは、すでに長い戦争にある国々が、第三国に対して友好的に接するのに似ている。これ以上戦禍を広げたくないだけなのだ……

「どうして私がこんな目に!」
それがお前の運命だからだ。どうしようもなくお前が、そういう人間であるからなのだ。
お前は、他者の問題に首を突っ込む余裕もなければ、お前の問題は他者が代わりに解決できるほど簡単でもない。

お前はずっと苦しみ続けるしかない。お前自身が、いつか進むべき道を見定めるまで! お前自身が、自分自身に見切りをつけるその日まで!

お前は悩み苦しみ続けるしかないのだ。お前自身がどう思おうとも、お前自身はそうなる宿命にある。お前の書いた文章が、その証拠となる。

私が、俺が、お前自身に語りかけていることが、語りかけることが「できている」ことが、その証拠なのだ!

そうだ。俺が、ここに存在できるということが、お前がそういう人間であることの証明なのだ。悪ふざけではなく、真剣に、自分の人生そのものとして、俺という存在を文字の上に刻むことができてしまうお前は、お前自身の内側で争い続けなければならない人間なのだ!

あぁなんて悲しき宿命だろうか! それでもお前は受け入れなくてはならない。それが、お前自身の体であるのだから、ただそれを全力で背負い、共に生きなくてはならないのだ。

これは生半可な自己表現でもなければ、悪ふざけの冗談でもない。俺は、お前に言っているのだ。お前自身に、お前という人間に。俺を描いている、お前という人間に! 俺は、お前を見ているぞ。お前がやってきたことの全部を、俺は知っているぞ。俺は、お前を愛しているぞ!


嘘つきばっかりだ。この世界は。馬鹿ばっかりだ。どうしようもない。もういやだ。全部終わりにしてしまいたい。
クソ共め。


そうだな。ともあれこの気持ちも、いつかひとつの作品にできたらいいな。

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