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3:九郎、その1「ふしだらVSよこしま」/BARBEE BOYS


軽佻浮薄なオタクがもっと少ない頃…00年代の話。
だから私が20代前半くらいの時のこと。

とあるネトゲで常連同士の、自称
「すけこまし」
の九郎という奴がいた。

ゲームの雑談ルームで恋愛術、女の落とし文句なぞを披露しては非モテを羨ましがらせる。
ただ、彼が語る遣り口は、毎日がクリスマスかバレンタインデーか!みたいに、女の子にとって胸がときめくであろう、駄々甘いというか
「女の子をもてなして夢を見させる」
ものだった。

気に入った男にちょっかいを出したい時には、まず旨い料理を出したり、賑やかに話しても問題がない場所で酒をサシで呑みつつ、徐々に深い話に持っていく、水面下でサクサクと作戦をこなす私には似合わず、むしろ
「そういう夢見る世界にハマる女って本当にいるんだ…」
と驚いた。
私には女友達が極端に少ないのだった。

経験人数やエピソードを聞いては、どれだけ夢見る夢子ちゃんばっかし狙ってるんだよ?
その女って本気で惚れたのか?
「狩る」
のが楽しいだけで、モノにしたらもう興味などないだろ、と率直に話しまくった。
そしてその度に言われた言葉は
「君、大嫌い」
でもこれは、彼の本音や弱さに反応すると出てくる定型文だとすぐにわかった。

ある日、雑談部屋で2人しかいなかった時に、レトロゲームやアニメの話は思い切り食らいつくのに、色恋となればしらばっくれてしらけた振りをしつつ話をしていると、彼が突然

「ねえ、ちょっと聞いていいかな?」
「何を?」
「お前は俺と同じ匂いがするんだけど」

自己申告抜きで、私を
「そ知らぬふりして男の間をフラフラダラダラしている女」
と見抜いたのは彼だけだった。
しかも、私に対して、普段の
「君」
ではなく
「お前」
だ。

「狩りの獲物」
として、私をターゲットにする気かね?
なるほど、それはゾクゾクする
宜しい、受けて立ってやるよ。

PCの前で、普段見せないような飛びきりの悪い顔をした私が、彼に放った言葉は
「ほー、やりよる」

そうやって
「ふしだらな女/よこしまな男の
手の内の見せ合い」
が始まった。


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