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4.介護する側・される側のラーメン固さシフト

ばあちゃんは、元気な時からラーメンが大好きでした。

晩年に近い日々はコロナ禍で、出たり入ったりする老健で施設入所していたけれど、なかなか自宅への帰宅許可は出ませんでした。
見守り介護する身としては、施設でお世話してもらう方が助かるけれど、本人は「帰りたい」の一辺倒だったので、許可が出ると同時に戻ってきていました。

その時は必ず一度は、ラーメンを作ってあげてました。
母の話では、ばあちゃんが自分で作る時は【素ラーメン】に近いものと聞いていましたが、できるだけいろんなものを食べてほしいのが孫心。

玉ねぎや人参、キャベツなどを麺とのどさくさ紛れに食べるよう細切りにして混ぜていました。
インスタントラーメンの醤油味を、袋に書かれた時間より長めに煮て、柔らかくします。
いわゆるふにゃふにゃに伸びたラーメンです。
時には卵を溶いて流し込みます。

ばあちゃんは少食なので、量はたくさん食べられないので、いつも味噌汁のお椀に一杯分。
「美味しい〜」と満面の笑みを浮かべて、毎回ご機嫌で完食。
そうすると、他のおかずもけっこう食べてくれるので助かりました。

しかしながら、ある程度の食事介助をしてから食べる私は、毎回毎回、ばあちゃんのを作った際に余った冷めて伸び切ったラーメンを食べる訳です。
ばあちゃんの喜ぶ顔を見るために、私が不味いものを食べる理不尽さは、イマイチ納得いきません。

いっそのこと、ばあちゃん用に麺を少し鍋に残しておいて、私が先に食べ終えてから出してあげようか?
そんなことも考えましたが、さすがにやめました。
そんな時に思いついたんです。

「そうだ!麺を割ればいい!」と。

ばあちゃんが食べ切るかなぁ〜ぐらいの目星を付けた辺りをバキッと割ってから煮込むことにしました。
お湯に粉末スープを入れてから自分の麺を煮ることになってしまうけど、伸び切ったふにゃふにゃラーメンよりはマシ。
これは大成功でした。

ばあちゃん用を作り終えてから、「ごはんできたよ」と呼びに行き、途中でトイレの介助などを済ませていけば、熱さも含めてちょうどいい塩梅に。
ばあちゃんが食べ始めて落ち着いたら、私はスープの中に麺を投入。
お湯で煮るより少々硬めになるけれど、理想のラーメン固さシフトの完成です。

チキンラーメンの卵のくぼみ発明のように、インスタント麺に割る筋があったら便利だろうな〜どこかでやってくれたら、介護中の食事の用意に便利だろうと思ったけれど、きっとうちのばあちゃんだけでしょうね。

このシフトは、自宅滞在最後の晩餐までやり続けました。
そう…私がばあちゃんのために作ってあげた最後の夕飯は、お椀一杯のラーメンでした。

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