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13.おしゃれのためならダッシュもする⁈

見守り介護初期の頃のことです。
当時のばあちゃんは、一人でけっこう動けたので、振り返りと後退りさえしなければ、一人にしておいてもある程度は大丈夫だから、テレビを見ているのをこれ幸いと、私はばあちゃんから離れて、台所で朝食後の洗い物をしていました。
そのうち、いつものようにデイサービスの送迎車がやってきて、ばあちゃんが出かけるとこだったので、台所から「いってらっしゃい」と声をかけましたら、なぜか?
本当〜になぜか、ばあちゃんは玄関とは逆方向のこちらへ、やたらと手を振って、ふらふらと動作は鈍いけど、たぶん早足めに向かってくるのです。 

「なに!どしたん?」

玄関にはデイサービスのスタッフさんが待っているのに、何事かと慌てて駆け寄ると、ばあちゃんは洗面所へ。

「こんなみっともない頭じゃ、デイサービス恥ずかしくて行けない!」

そう言って、水で頭を濡らし、いそいそとブラシで髪を整え出したのです。
どうやら玄関の鏡を見て、髪型が気に入らなかったので、ダッシュで髪を整えに戻ってきたようでした。
私から見ても、特別寝癖がついてる訳でもありません。

「そんなん、どうせ向こう着いたらすぐお風呂でしょ!すぐ頭だって洗うんだからどうだっていいじゃん!迎えきてんだから早く行きなよ!」

私は一刻も早く、デイサービスにお任せして早く家に帰りたかったし、スタッフさんを待たせることにもイラついたので怒りましたが、本人は納得いく髪型に整え終えるまで、鏡に向かっていました。

本当〜におしゃれ最優先な人でした。
友人たちに話すと「おしゃれ大事!80過ぎても女でいるなんて、おばあちゃん、女性の鏡!」なんて褒めてくれましたが、それを聞くたびに「ケッ!」と私は思っていました。

そのおしゃれにかける情熱を、なぜ健康にもかけてくれなかったんだろう、と。
健康ある上でのおしゃれなら、身内の誰も文句は言いません。
そりゃ、97歳まで生きていたけれど、後半17年はほぼ介護だったのです。
おしゃれが生きる張り合いになっていたとも思いますが、やはり孫としては、どうせなら元気で健康な状態でおしゃれを楽しんで長生きしてほしかったな…と、今でも思わずにはいられないのです。

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