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『ヒノマルソウル』年長者が若者の〝直球〟にやられる快感ー昔、映画が好きだった。そして今も好きなのだ 60s映画レビュー(5)

1998年長野冬季オリンピック。ジャンプ団体戦における日本の大逆転・金メダル。当時の日本国民を熱狂させた「ドラマ」でした。

この「ドラマ」の舞台裏に日本人テストジャンパーたちによる「もう一つのドラマ」があったことはかなり知られているエピソードかと思います。ですから、ストーリーの展開はなんとなく・・・ですよね。

しかし、それはいい意味で裏切られます(ちなみにタイトルに引きずられて「ニッポンチャチャチャ」的なものを過度に期待すると肩透かしかもしれません)。

この映画は、人間の弱さ、醜い妬み、奈落に落ちる絶望を観客に突きつけます。そして、主人公の苦悶する姿に自分を見てしまいます。「あーこれは俺だなあ・・・」と。

主人公はすでに前回メダリストになったベテランの一流選手。この年長者の苦悶を救うのが若いジャンパーたちの純粋で一途な〝直球〟のジャンプ魂なんです。これが見どころです。

苦悶するベテラン選手・西方仁也を演じる田中圭もいいですが、聴覚障害のジャンパー・高橋竜二を演じる山田裕貴が素晴らしかった。ぜひ注目して下さい。

いつもそうなんです。人の苦しみを救うのは言葉です。この映画のタイトル「ヒノマルソウル」はまさにそれ!です。

私たちはふだん「愛国心」的なものをそれほど意識しているわけではありません。そんなことよりも自分の悩みの方が一大事のはず。でも不思議です。「ヒノマルソウル」という言葉はその自分を超えて、みんなを一つにしてしまいます。

追伸。長野オリンピックよりもさらに前の1972年札幌冬季オリンピック70m級ジャンプ。この時も日本人3選手による金・銀・銅独占というドラマがありました。当時は冬季五輪で日本人がメダルを取ること自体が「あり得ない」ことだったので、11歳だった私は感動して見ていました。

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