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博物館デジタル化調査報告 No.23 〜プラド美術館〜

こんにちは。ミューゼオ株式会社の奈良です。

第23回はスペインの首都マドリードにある、ルネサンス、バロック絵画を中核とした膨大なヨーロッパ絵画を所有しているプラド美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!

国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。

調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はプラド美術館公式Facebookを参照)


プラド美術館の概要

国立の美術館
所在:スペインの首都マドリード
正式名称:Museo del Prado
略語:PRADO/プラド

プラド美術館には約8000点以上の油絵、約1,000点の彫刻、約4,800枚の版画、約8,200枚の素描、多くの美術史に関する書類が収められている。2021年の時点で約1400点の絵画が展示されており[4]、約3,100点は他の美術館や研究所へ貸与されている。その他の作品は保管されている[5]。

プラド博物館Wikipedia参照

西洋美術史において最も重要な作品として認められているディエゴ・ベラスケス作『ラス・メニーナス』(1656年)もプラド美術館が所蔵している。作品の中には11人もの人物が描かれているため人物同士の関係性だけでも様々な説が論じられている(画家であるベラスケスの頭が一番高い位置に描かれている意味は…など)が、何より、それぞれの人物の構図や目線、斜光の工夫によって生まれている鑑賞者の視線を誘導する技法が西洋美術史において「重要」たらしめる所以である。
『ラス・メニーナス』は高さが3メートルを超える大きさであるなどの理由から、プラド美術館から外に貸し出されることはない。

『ラス・メニーナス』,ラス・メニーナスWikipedia参照

Webサイトの内容

〈開館時間〉※基本的な休館日なし 
月〜土曜日 10:00~20:00
日曜・祝日 10:00〜19:00

〈チケット〉※曜日・時間帯によって無料 ※オンライン購入可能
月〜土曜日 18:00〜20:00
日曜・祝日 10:00〜19:00

【1】アプリでデジタル化

ツアーガイド、傑作について、作品検索、作品詳細の確認など4つのアプリに分かれている。

アプリ一覧,プラド美術館公式Webサイト参照

【2】動画で解説

https://www.museodelprado.es/actualidad/videos

作品について解説している動画をWebページ上で確認することができる。動画は1本50分のものから5時間あるものまである。検索もできるため興味のあるテーマの講義を試聴することが可能だ。

動画の一覧,プラド美術館公式Webページ参照

【3】YouTubeで無料配信されるイベント

定期的に開催するイベントをYouTubeにて無料生配信している。定員があるようだが自宅からでも鑑賞できる。

【4】神話上の人物を理解する

神話を題材にした作品を多く展示しているプラド美術館では、描かれている人物が神話上どのような位置にいるのか、他のどのような作品に登場しているのかなどを家系図を使い人物ごとに解説している。
下記画像内の家系図の中から人物にマウスを寄せると…

家系図,プラド博物館公式Webページ参照

下記のような人物紹介が現れる。そこから「それが現れる作品」をクリックすると…

人物の詳細,プラド博物館公式Webページ参照

プラド美術館コレクション内から、選択した人物が登場している作品を確認することができる。

選択した人物が登場する作品一覧,プラド博物館公式Webページ参照

【5】コレクションのデジタル化

Webページ上で作品検索が可能だ。作品を拡大して見ることができるほか、関連動画や参考文献、展示された展示会などを確認することができる。

ラス・メニーナスの詳細,プラド美術館公式Webサイト参照

SNSでの活動

プラド美術館では4つのSNSとSpotifyを利用して情報を発信。YouTubeも積極的に活用している。様々な媒体を使って作品紹介を発信しているため、自分の好きな媒体で情報をチェックできる。

Facebook

作品について動画付きで発信されている。

プラド美術館公式Facebook参照

Twitter

イベントついて投稿されている。

プラド美術館公式Twitter参照

Instagram

動画メインで投稿されている。内容は主に作品についてでFacebookとほぼ同じ内容である。

プラド美術館公式Instagram参照

TikTok

TikTokでは最大10分の動画が投稿できるようだが、人気が高い動画の多くは10〜30秒のショート動画である。日本においてもマーケティング活動として活用している企業が増えてきているツールだ。
プラド美術館では30秒ほどの動画を投稿している。動画としてはFacebookと同じ内容だが、TikTok用(短い動画でも伝わるよう)に画面内に文字を配置するなどの工夫をしている。

プラド美術館公式TikTok参照

Spotify

作品毎のイメージミュージックプレイリストを視聴することができる。

プラド美術館公式Spotify参照

YouTube

〈チャンネル登録者数〉14.2万人
〈本数〉1000本以上
〈配信開始〉2,258 回視聴2010/02/10(12年前)
〈最高視聴〉1,473,051 回視聴
 内容:コメント作品:ボッシュによる快楽の園


Store情報

こちらからはプラド美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。

●牛革カバーの細長いノート
なかなかみたことの無い形をしたおしゃれなノート。カバーは牛革でプラド美術館のロゴが刻印されている。フィレンチェで手作業で制作されている。

プラドレザー製の細長いノート,tiendaprado参照

●ローマ時代のサンダル
夏用のスリッポンとして人気の高いエスパドリーユ。本場がスペインであり、その伝統に沿ったデザインになっている。1691年以来、靴を専門とする家族の4代目の作品とのこと。

ローマのサンダル,tiendaprado参照

●日本の企業とコラボした砂時計

1899年に東京で設立された廣田グラスは、ヨーロッパのガラス製造の伝統と日本の熟練した職人技を調和させた日本のパイオニアガラス製品会社です。プラド美術館のために作られたこの絶妙な手吹きガラス砂時計でその品質を見ることができます。

黄金の砂時計詳細参照
黄金の砂時計,tiendaprado参照

まとめ

▶︎デジタル化に自社アプリを活用している
▶︎SNSにおいても動画を活用している
▶︎作品を理解し楽しめるような解説が多い

プラド美術館では今までの調査で初めてTikTokを活用していました。他ミュージアムでは写真の投稿がメインであるInstagramにおいても動画の投稿が多く、気軽に作品詳細を理解できるように思いました。一方で動画での投稿は翻訳が難しいため、内容までは追えませんでした。

次回はオランダにあるアムステルダム国立美術館について調査していきます。17世紀オランダ絵画が充実している美術館ではどんな施策を行っているのでしょうか。お楽しみに!


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