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補正され、更新されて、今がある。

コーヒーをブラックで飲めるようになったのは、
客先に訪問する機会の多い仕事をしている時だった。

出されたコーヒーを飲もうと、砂糖とミルクを入れている間に
同行していた上司と客先との話はどんどん進んでいて、
内容についていけず、1人お茶をしにきただけみたいになってしまった。

それ以降、客先でコーヒーを出された際は、
砂糖もミルクも手をつけず、苦いのを我慢しながらブラックで飲み干した。
先方との会話が途切れないよう、気を遣わせないよう、気をつけた。

ブラックコーヒーを飲み出したのはそんなきっかけだったが、
気がつけば我慢せずとも普通に飲めるようになっていたし、
何なら美味しいと感じるまでになっていた。

”慣れ”と言えばそうなのだけれど、人の味覚は環境で変化する。
だけどそれは、順応や耐性ではなくて、
自分が過ごしやすいように、補正され更新されているのだと思う。

そしてそれはきっと、味覚だけではない。
日々生活する中で、知らずそんなことを繰り返して今がある。

今となれば、話をしながらでも砂糖は入れられるし、
相槌を打ちながらでもミルクは入れられるけれど、
ブラックの美味さを知った私は、そんなことを思いながら、
いつもコーヒーを飲んでいる。


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