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祖父から受け継いだ“映画好き”の遺伝子

私が生まれた時、唯一生きていたのが父方の祖母。明治生まれの働き者で、「やることもきっちりやるけれど、言うこともちゃんと言う」というタイプの人で、ちょっと怖かった。いや、本当は私は怖くなかったけれど、周りの人が祖母のことを「怖いばあさん」だと思っていたのは、子どもながらに私も感じていた。

そのおばあちゃんも私が8歳の時に心不全で亡くなったのだけど、亡くなった後、父方の親族が集まる時によく話題に上る話が、私は好きだった。

祖母は、子どもを9人!産み、育てながら、片道3キロほど離れた工場で働き、家では畑を耕して、食事の用意をし、それはそれはよく働く人だった。一方、時代のせいもあるかもしれないけれど、大工だった祖父は、早く帰ってきても何もせず。誰も知らないうちに、ふらふらと電車に乗って一人で映画を観に行ってしまうような人だったらしい。
「よく一人で映画に行っちゃって。行くなら、私も連れて行ってくれればよかったのに…」と祖母が、悔しそうに愚痴っていた話を聞いた人が何人もいて、私は驚いた。まず、祖母に愚痴を言うイメージがなかった。そして、映画を観たいと思っていたのも予想外。それより何より、祖父に一緒に連れて行ってほしいと思っていた、その乙女心が、私の知っている祖母のキャラクターとは一致しなくて、子どものころの私は、なんだか恥ずかしくてむず痒い感じがした。だけど、そんな祖母が可愛くて、祖母にそんな思いをさせていた映画好きのハイカラな祖父に、密かにときめいた。

時は過ぎ、7、8年前から私は映画にハマっている。ここ数年は、大体週1くらいのペースで映画館に通っている。両親は映画をほとんど観ないので、私の映画好きは、多分父方の祖父の影響だ…と、遺伝子のせいにして、一人映画に出掛ける自分を正当化している。いや、祖父と一緒に映画を観たかった私の中のおばあちゃんの遺伝子が、当時の悔しさを取り返そうとしているのかもしれない。きっとそうだ。
…あれ?遺伝子って、いったい何だっけ?笑
よく分からない遺伝子のせいで、私はまた映画に行ってしまう。おじいちゃん、行ってくるね。会ったことはないけれど、多分、私たちは気が合うタイプだと思うよ。

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