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L’Arc-en-Cielの音楽の魅力を7つのジャンルでご紹介 〜第一弾 恋愛編〜

アーティストの名曲紹介シリーズ、今回ご紹介するのはL’Arc-en-Ciel(ラルクアンシエル)です!

L’Arc-en-Cielは、1990年代に青春時代を謳歌した人にとって「時代の中心で輝いていたバンド」であり、2000年代に生まれた人にとっては「親の世代が知っているバンド」だと思います。

「親の世代が知っているバンド」の曲って、みなさん興味を持って聴いたことがありますか?あるよ、という方もいらっしゃると思いますが、興味がない方も多いのではないでしょうか。親に「この曲いいぞ〜」と言われてもあまり聞く気がしないように、親世代の私が若い世代にL’Arc-en-Cielの魅力を伝えようとしても「いやいや別にいいよ〜」と言われそうな気もします。それでも、あえてご紹介させてください。なぜなら、彼らの音楽は、聴かないでおくにはあまりに魅力的だからです。

ここでは、簡単にバンドの紹介をしたあとで、L’Arc-en-CIelの曲の多彩さを示す7つのジャンルをご紹介します。


L’Arc-en-Cielとは

1994年にメジャーデビューしたバンドで、メンバーは次の方々です。

  • hyde(ボーカル)

  • ken(ギター)

  • tetsuya(ベース)

  • yukihiro(ドラム)

全員男前。実はそれって稀有なことだと思います。が、今回言いたいのはそこではありません。彼らの音楽の特徴は、絵画的に美しく抽象度が心地よいということです。

絵画的に美しいとは、「歌詞の情景が目に浮かび、メロディの雰囲気もその情景にピッタリ」ということです。例えば西洋の宗教画は、キリスト教の物語をあのリアルなテイストで描くからこそ、真に迫った美しい魅力をたたえているのだと思います。それを印象派、野獣派、キュビズムといった別のテイストで描くと、それはそれで「面白い」とは思うのですが、本当の意味で「美しい」ものにはならないと思います。

抽象度が心地よいとは、「歌詞が具体的過ぎないから聴いていてしんどくなくて、リスナーがイメージできる幅が広い(解釈の幅が広い)」ということです。例えば恋愛ソングでも、リアルな出来事を具体的に描いたものは胸に響くかもしれませんが、それゆえに何回も聴くにはしんどい場合があります。私たちは、日々現実の世界で様々な種類のすったもんだを経験していますから、歌の世界でさらにリアルなものを見せられると、ちょっと飽食気味になります。このあたりは音楽の好みの問題ですが、個人的に、適度な抽象度は音楽を軽やかに楽しむために必要な要素だと思います。

この他の特徴として、「バンドメンバー全員が作詞・作曲できるため、バンド全体としての曲のバリエーションが多彩」「ボーカルの声が耳に心地良い」「ギターによる曲のムード演出が絶品」「ベースが本来の役割に加えてメインメロディも担う面白さがある」「軽やかなドラムの疾走感」など、いろいろあります。

多彩な曲を7つのジャンルに分類

それではここから、L’Arc-en-Cielの名曲をご紹介していきます。
とはいっても、彼らが生み出してきた楽曲は数多くありますので、ここでは便宜的に、次の7つのジャンルに分けてご紹介します。

1. 恋愛 2. 愛情 3. 哀愁 4. 愛執 5. 運命 6. 未来 7. 抵抗

なぜ7つのジャンルなのかと言うと、L’Arc-en-Cielという言葉はフランス語で「虹」という意味を持っている→ 虹は日本では7色と考えられている→それにちなんで7つに分類してみることにした、という理由です。
今回は恋愛編で、比較的明るい雰囲気の恋の歌を7曲ご紹介します。

恋愛編

Still I’m With You

(作詞:hyde  作曲:ken)
明るい雰囲気のメロディで始まるこの曲は、L’Arc-en-Cielの中でもかなり抽象度の高い曲です。歌詞に出てくる「あなた」は部屋の中にいて、淡い幻想混じりの物思いに沈んでいます。待ち望み、思い焦がれていたはずの季節がやってきている(=私がそばにいる)のに気づかず、未来の自由な恋に想いを巡らせている。

これは、彼女の心がもう、私から離れていることを示しています。けれど、私はまだ彼女のことを想っていて、そのことに気付いてほしい。そんな切ない状況を描いている曲だと思います。

「明るいメロディだけど歌詞が切ない」というのは、L’Arc-en-Cielの曲の特徴的な部分かもしれません。

この曲の特徴はなんといってもその浮遊感にあると思います。フワフワとした浮遊感ではなく、上昇気流に乗る浮遊感。歌詞の「どこまでも高く舞い上がる」というフレーズと相まって心地良く感じます。

風にきえないで

(作詞:hyde  作曲:tetsuya)
シングルバージョンは爽やかなギターのアルペジオから始まりますが、アルバムバージョンでは「にーーじーーいーーーーーろにかが〜や〜く〜〜!!」というボーカルからスタートします。勢いよくスタートを切って、爽やかなギターのメロディが流れ、物語が始まります。

シチュエーションは「Still I’m With You」に似ていて、「君」のことが大好きで「君」を連れ出したい「僕」が、「君」の心のドアをノックし続けているという歌。「怖がらないでいいよ」とか「もういいよ」とか言っているので、二人の間には、過去に何かあったのかもしれません。

メロディの面で見てみると、この曲はイントロからずっーーと爽やかなんですよね。「もういいよ もういいよ I’m always knocking on your door」のところで切なさが滲み出てくるくらいで。タイトルの「風」を感じられる曲です。

flower

(作詞:hyde  作曲:hyde)
L’Arc-en-Cielの名を一躍有名にした片想いの曲。歌詞で描かれているのは、「僕」がベッドの中で夢の中の「君」に見とれているという情景。両想いになれないなら、いっそのこと枯れてしまいたい。そんな切なく苦しい気持ちを歌っています。繊細なイントロから始まり、曲全体を通して流れるギターのアルペジオが、この曲全体の雰囲気を可憐なものにしています。

歌の世界は、ベッドや夢といった狭い場所から始まりますが、「空は今にも今にも降りそそぐような青さで見上げた僕を包んだ」で一気に視界が広がり、「like a flower, flowers bloom in sunlight」の部分で、青空の下でいろとりどりの花が風に揺れているイメージが浮かびます。その開放感が心地良い。

この歌の印象的な部分はいろいろありますが、サビの「かなわぬ想いならせめて枯れたい!」の部分のフレーズの強さ、歌い方の強さが、一番印象的かもしれません。

milky way

(作詞:tetsuya  作曲:tetsuya)
星降る夜、「きみ」に会いたくて街を抜け出すという、恋愛のときめきが感じられる曲。これまで友達として仲の良かった二人の気持ちが、今まさに恋愛に変わろうとしている。「きみ」はまだためらっているけれど、「きみ」が心のドアを開けてくれたら、僕はすぐに迎えに行く。そんな情景を描いています。

タイトルが表す「milky way (天の川)」、歌詞に出てくる「星降る夜」「月あかりの下のきみ」「降りそそぐ星に抱かれ」といったフレーズが、美しい情景をイメージさせます。

間奏のギターのメロディの柔らかさが、二人の様子をあたたかく見守っているような感じで好きです。

What is love

(作詞:hyde  作曲:tetsuya)
今回ピックアップした7曲の中でも、黄昏の哀愁感が少し漂っている曲です。でも、曲自体は明るめの雰囲気で、「恋焦がれる切なさ」よりも「恋愛というものがわからず戸惑う感じ」が描かれています。赤く沈む夕日を眺めながら、堤防で「君」を待っているイメージ。

「華やいだ季節にも気付かない瞳」というフレーズが出てきますが、これは「Still I’m With You」のシチュエーションに通じる部分がありますね。そんな「君」と接していても、気持ちをうまくつかめない。なぜだろう、もしかして自分には、人を愛するという感情がないのだろうか?

そんな焦る気持ちを抱えた「僕」の心象風景と、夕暮れの風景がピッタリと重なった名曲です。

NEO UNIVERSE

(作詞:hyde  作曲:ken)
この曲を初めて聴いたときは、衝撃を受けました。資生堂のCMとタイアップしていて、夜明け前のサイレントブルーの空の下、白いドレスを身にまとった一色紗英さんが踊る姿と曲のシンクロ具合が見事で、一気に心を奪われました。
ちょうど高校3年生という多感な時期だったこともあるかもしれませんが、それを抜きにしてもクールな名曲だと思います。

まず、タイトルがかっこいいじゃないですか、「NEO UNIVERSE」って。NEWじゃなくてNEOですよ、NEO。ちょうど前年に映画「マトリックス」の第一作目が公開されていて、主人公の名前がネオだったんですよね。それも相まってか、NEO UNIVERSEというタイトルが醸し出す未来感がハンパなかったのを覚えています。

次に、サビの「あなたは風のように優しく  鳥のように自由に  この世界をはばたく」というフレーズがとても素敵。素敵です。騎士の貴婦人に対する眼差しのようではありませんか。「あなたは」の部分のメロディも素晴らしい。

そして面白いのが、この曲はギターではなくてベースがメインだというところ。Aメロからサビまで6弦ベースの高音メロディーが流れていて、初めて聴いた時はそれがベースの音色だと気付かず、勝手にギターの音色だと思っていました。でもこの曲においてギターは雰囲気を演出するバックサウンドに徹しています。極め付けはベースのソロ。バンドサウンドといえば間奏にギターソロが入るのが定番ですが、ベースのソロが入るんです。これは面白いですよね。

瞳の住人

(作詞:hyde  作曲:tetsuya)
こんなに優しい恋の歌があるのかと思うほどの名曲です。
素晴らしいのはAメロのギターのアルペジオ。歌詞でいうところの「数えきれない」〜「不安そうな顔隠してるくらい」あたりのメロディは、休日の午後、木漏れ日の庭で物思いに浸っているような、なんとも安らかで心地良いメロディになっています。シングルにはインストゥルメンタルバージョンも収録されているので、ぜひそちらも聴いてみてください。

歌詞の面で見てみると、「いったい君の事をどれくらい分かってるのかな?」という「僕」の誠実な眼差しから始まります。でも「指先で地図辿るようには」上手くはいかず(なんと分かりやすく素敵な表現…!)、「君」が不安そうな顔を隠していることに気づいている…そんな状況が描かれています。それでも「僕」は「君」のそばにいて、ずっと君の笑顔を見ていたいという願いが歌われています。自分が君の視界に入っている状態のことを「瞳の住人」と表現しているわけですね。そんな視点と表現、思いつきません…

メロディ面で特筆すべきは、サビのメロディの高さ。「一つの風景画の中」の、「なか」の部分がめっちゃ高い。のどをひっくり返さないと出ないような高音を、hydeは見事に美しく歌い上げています。これは凄いの一言に尽きます。

以上7曲が、L’Arc-en-Cielの明るい曲調の恋の歌でした。
hydeとtetsuyaがタッグを組んだ名曲が多いですね。

歌詞のシチュエーションとしては、「僕は君の瞳に映っていないけれど、それでも君のそばにいたいと願い、そんな君を連れ出したいと思う」ようなものが多い気がします。基本的に、片想い。恋が恋らしい色味を帯びるのは片想いの時だからかもしれません。

その後両想いになって恋愛は続くのですが、お互いの理解が深まってくると、恋愛感情というよりも、心から信頼する相手と共に歩みたい、そんな相手を守りたいという愛情に変わっていきます。次回は、L’Arc-en-Cielの「愛情」を描く曲をご紹介していきます。お楽しみに!

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