見出し画像

#437 おもしろ自学とパス券の思い出

2023.9.25.
そのうち日本の季節は夏と冬だけになるらしい。今朝感じた秋も、きっとすぐ通り過ぎてしまうだろう。
屋外で飲むとか遊ぶとか、今のうちに楽しんでおかないと。


宿題をいかに効率よくチェックするかという話題が校内の研修で上がった際、
「そもそもどういった意図で宿題を出すのかによって、宿題の内容も提出方法もチェック方法も違ってくる」
というのがそのときの結論となった。

言われてみれば本当にその通りなのだが、これまで安易に、じゃあ宿題は音読と漢字と計算で!などとしていることが多かったように思う。

宿題を示してはいたが、確認する時間が取れないので提出はしなくてもよい…となったらしい若手教員の学級で、蓋を開けてみるとほとんどの子供が宿題をやっていなかったという話も聞いたことがある。恐ろしや。



私は、子供の日記や自主学習を見るのが好きだ。その子の知らなかった一面や、面白い発想力に触れられるからである。

ということで、宿題では…
◆月〜木/音読・計算・漢字など
◆金/自主学習
というパターンが多かったように思う。

月〜木は、反復練習で基礎の定着を図る。なので、音読指導(あまりできてなかったけど…)や丸つけ指導もしておく。

金は自主学習…というか、やろうとこちらから示している時点で自主とは言えないので、本来的には内容自由学習みたいなものである。

音読、計算、漢字で足りないところをやるのもよし(だが、ほとんどそんな子はいなかった)、日記を書くのもよし、調べ学習をするもよし。別に体育だろうと音楽だろうと図工だろうと学習に変わりはないので、何か自学ノートに残しさえすればそれもあり。

自学を宿題にした意図は、土日の忙しさは家庭によってだいぶ違うので、内容の調節できるようなものにしたかったこと。でも何かしら学習に向かう時間を取ってほしかったこと。コメントして交換日記的にすることで、児童理解を深めることなどがあったかもしれない。
そこまで深く考えていなかったと思う…。

これを読むのが月曜日の私の楽しみだった。だって、面白いんだもん…!

ちなみに、内容そのままは載せられないので、下のものは子供の自学をもとにちょっと手を加えた<例>として見ていただければと思う。

テーマ例
数と円周率の歴史/よく使われる外来語/天才・偉人を育てた最強マザー伝説(という新聞記事より)/くずきりについて/熱中症の症状と対処方法/AIによる自動運転について/プログラミングでモーターを制御しよう/旅行記/好きな曲の歌詞から意味調べ

内容例↓

【好きなきのこランキング】
2位:松茸

ぼくには、松茸には忘れられない思い出があります。この間の移動教室でやったBBQで出されたきのこを誰かが「松茸だ!」と言ったので、ぼくも松茸だと思って食べていました。帰ってから友達に「あの松茸おいしかったね」と言ったら「あれ、エリンギ」と言われ、ショックでした。秋に食べたい料理ですけど、あまり食べられませんね、高くて。

エピソード強すぎる

【意味調べ】
◆追従(ついしょう)…おべっかを使うこと。相手の機嫌をとること。
(例)「みゃー先生、今日もきれいですね、」とお追従を言う。

使い方、合ってるぞ!

【算数&日記】
土曜日に回転寿司に行ったところ、母がたまたま30cm定規を持っていたので、速さを出すと、皿は7.5cmを1秒で進むことが分かりました。時速に直すと270mと分かり、結構遅いと感じました。身近な算数をもっと見つけていきたいです。

回転寿司にたまたま母が30cm定規持っている確率は…

【僕が考えた最強の国】
今回は僕が勝手に考えた棒人間の国、「棒国」を紹介します。
BC150年頃 棒人間命(ぼうのひとまのみこと)誕生
BC132年頃 棒人間命が棒国の原型を作る。棒国書紀によると、北に幕間、南に念前、西に建能、東に江ノ橋
※…この後、天皇が即位したり米作りが始まったり近くの国に貢ぎ物をしてトイレを授かったりする話が続く。

歴史と空想がお好きなようで


これは笑うでしょ?


で、これは誰かの実践を参考にしたのだと思うのだが、自学にはコメントを入れて「パス券」なるものをつけていた。

提出された自学ノートには、私がコメントを書き、パス券1枚を貼って返却する。
が、時々、驚くほど時間や労力をかけた自学が提出されることがあったので、内容によって1〜3枚とパス券の枚数に幅をもたせることにした。

このパス券…パス券というだけあって、5枚貯めると好きなタイミングで1日宿題をパスすることができる。
教えてくれた方曰く、たくさんパス券をもらえるような自学をする子は、結局貯め込んで使わないことが多いらしい。確かにそういう傾向はあり、1枚ずつちまちま貯めるタイプの方がパス券を使うことが多かったように思う。

パスするときはこんな感じで出す

3枚もらうような子は、自学にハマる。ノートが返却されると、パス券が何枚ついているかすぐ確認するし、ノートの最後のページにずらっと並べて貼ってみたり、次はどんな内容にしようかと考えたりしていた。



コロナで3月が一斉休校になった年も、私は自学とパス券の取り組みをしていた。そう、彼らは貯め込んだパス券を使う機会を、年度末に急に失ったのだった。

バブル崩壊。持っていたパス券は、ただの紙切れに…!

終業式で、「先生、パス券はどうなるんですか!」と詰め寄られた。私は非情にも笑顔で「このパス券は今年度限りです。もし担任が変わったら、また新しい先生と新しい学習を頑張ってね!」と伝えた。ブーイング…が起きる暇もないような、長時間一緒に過ごすことのできないコロナ禍終業式であった。


翌年その子たちを担任したのは、2年目の、一生懸命仕事をする先生だった。

引き継ぎの中で、去年は自学とパス券という取り組みをしてね…という話も伝えた。もちろん、これは私の取り組みなので、あなたはあなたのやり方で…と伝えて。


その後、その担任の先生が、「パス券」を「優先券」にしたことを知った。

宿題は、パスするような罰ではなく、きちんと頑張ったら何かいいこと(おかわりなどが優先してもらえる券なのだという)に繋がるものにしたいという意図があったようだ。

とてもステキな後輩である。



ちなみにその後、私はその時の子たちと、3年ぶり(2年ぶり?)に授業をすることになる。卒業前の3か月だけ、図工専科のピンチヒッターになったからだ。

3学期、私の姿を見つけた子たちが、図工室に入ってきて最初にこう言った。

「先生、パス券はまだ使えますか?」



今年度はもう使えませんので、中学校でどうぞ!



#教員エッセイ
#子供のおもしろ自学
#パス券

この記事が参加している募集

#私のイチオシ

50,598件

#探究学習がすき

7,400件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?