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日曜雑感 vol.17~本日のテーマは「ある事件記事を読んで」です

朝、Twitterを見ていたら、こんな記事に出会いました。NHK事件記者・取材noteというサイトの記事で、「ひとり、都会のバス停で~彼女の死が問いかけるもの」というタイトルでした。

事件は「路上生活者の60代女性が男に殴られて死亡した」というもので、女性と男との接点は何もありません。記事では事件そのものではなく、なぜこの女性が路上生活をしていたのかを追跡取材しています。

新型コロナで職を失った女性

女性はスーパーの店頭販売員をしていましたが、新型コロナウイルスの影響で職を失ってしまったといいます。ただそれは、女性が抱えていた根深い社会問題が顕在化された事実でしかなかったのです。

女性は短期契約者で雇用形態は不安定でした。低賃金のうえ、収入が一定ではなかったと推察され、それを裏付けるように4年ほど前からネットカフェなどで寝泊まりをしていたといいます。

その日その日の食べる分、寝泊まりする場所を確保する分、それだけのために必死で働いていたという姿が浮かび上がります。もしかすると、住居を得るために爪に火を点す思いで貯金していたのかもしれません。

職を失い、おそらく貯金も底をついてしまった女性は、路上生活で生き抜くしかないと考えたのでしょう。人の世話にはならず、人の邪魔をしないよう、夜中にひっそりとバス停のベンチで休んでいたようです。

社会の構造上の問題が浮き彫りに

この記事を読んで、単純に女性個人の事情だけでとらえてはいけないと思いました。女性のケースを見ていくと、日本という国が抱える社会の構造上の問題がいくつも浮き彫りにされたからです。

最大の問題は「住居がない」ということ。私も一人暮らしの時には家賃を払っていましたが、この負担は非常に大きいです。収入が途絶えて貯金が底をつき、家賃が払えなくなると住居を失ってしまいます。

次に「働き方」の問題です。非正規や契約社員といった雇用形態により、雇用期間が定まらなかったり、低賃金だったりという働き方が増えています。その結果、収入が安定しない生活を余儀なくされる人も多いです。

それから「社会保障」にも問題があります。生活保護をはじめとした様々な社会保障制度がありますが、認知度は低いのに制度を受けるハードルは高いと言われています。端的に言うと「使いづらい」のです。

「自分は恵まれていただけ」と振り返る

女性と近い世代である私自身を振り返ってみると、自分がいかに恵まれていたかが分かります。学卒から定年直前まで同じ会社で働けたということは、今の時代で考えれば「非常に幸運だった」としか言えません。

終身雇用の恩恵により、安定した収入が得られたので、家賃を払えただけでなく、貯金をすることも出来ました。亡き父親の持ち家も相続させていただき、住居の心配も解消させてもらいました。

他人と自分の人生を比較するつもりはありません。ただ、この事件記事を通して、小さな運不運に一喜一憂している日々が、いかに恵まれていることなのか、そして尊いことなのかを思い起こせたのです。

いつもの日曜雑感とは違い、少々重苦しい内容になってしまいました。せめて、画像だけでもと思い、諏訪地方で今が満開となった八重桜を写真を使わせていただきました(笑)

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