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私だけの特捜最前線→92「東京犯罪ガイド!~吉野刑事と父親、頑固者同士の再会」

※このコラムはネタバレがあります。

このコラムでは、これまでにも刑事たちの家族関係、とくに親子のドラマについて書いてきました。今回の「東京犯罪ガイド!」は、吉野刑事(誠直也)と父親(高松英雄)の話です。

上京した吉野の父親

殺人容疑の参考人である若者(新井康弘)を取り調べる吉野。若者は「女と会っていた」とアリバイを主張したため、裏付けを取るために街中へ同行しましたが、スキをついて逃げられてしまいます。

その頃、吉野の父親は団体旅行で佐賀県から上京していました。ひょんなことからバスガイド(友里千賀子)の悩み相談を受けることになり、バスガイドのアパートに来ていたのです。

そこにやって来たのが吉野。若者が言っていた女とは、バスガイドのことでした。警察を装う下着泥棒だと心配したバスガイドに代わり、父親が一喝しながらドアを開けると・・・吉野が立っていたのです。

バスガイドは、若者の素性を知ってすっかり怯えてしまいました。彼女から信頼されている父親は、特命課の捜査に協力し、バスガイドを勇気づけながら若者を誘い出すことに成功します。

待ち合わせ場所に若者がやって来ました。父親はバスガイドとの間に割って入ろうとし、若者から足蹴にされてしまったのです。一斉に追いかける刑事たち。吉野だけは立ち止まり、父親を心配するのですが・・・

父親に「バカモン、なんばしちょる」と怒鳴りつけられ、我に返って若者を追いかける吉野。無事逮捕後、「余計なことをするな」と捨て台詞を吐きながら立ち去る吉野を複雑な思いで見つめる父親でした。

吉野と父親の愛憎

捜査を口実に上京した父親に会いに行こうともせず、特命課で対面しても口喧嘩をしてしまう・・・吉野と父親が、なぜ真正面から向き合おうとしなかったのか。そこには複雑な家庭環境が背景にあったのです。

吉野は母親の子ではなく、父親が外につくった女の子供だったのです。母親には実の子同然に愛されましたが、父親には反発するばかり。ついに高校卒業と同時に家を飛び出してしまったのです。

特命課での対面の際、そのことを持ち出した吉野に対し、父親は「バカな女だ」と母親を侮辱します。その言葉が許せない吉野は、涙を流しながら父親に反発しますが、父親は憮然とした表情のまま。

団体旅行に参加した理由も「母さんが病気になったから代わりに来ただけだ」と言い張る父親。吉野は吉野で、新たな事件が発生すると、父親をほったらかしにして現場にすっ飛んでいってしまいます。

吉野と父親のわだかまりが解けないまま、故郷に帰る日がやってきました。母親から就職祝いでもらった腕時計が、実は父親からのプレゼントだったことが分かり、吉野は東京駅に向かって駆け出します。

発車したばかりの新幹線の車中に父親の姿を見つけ、腕時計を突きだす吉野。それを見て、大きくうなづく父親。ほんのわずかかもしれませんが、父親と息子の気持ちが通じた瞬間でした。

父親とはどんな存在なのか

脚本は塙五郎氏が手がけました。ドラマの中では、親子の関係について、父親に年代が近い刑事たちが、吉野や父親に向かってそれぞれ諭したり、語ったりするシーンがあります。

おやっさん(大滝秀治)は「親子はどこまでも親子だ。憎む心も、愛する心も、結局は同じなんだよ」とつぶやきます。神代課長(二谷英明)は「私も子供の気持ちなんか、考えてやれなかった」と語りました。

おやっさんは、娘の香子が反対を押し切って妻子ある男性と結婚し、家出をされたことがあります。神代課長も、娘の夏子の気持ちを理解できず、結局恋人を死なせてしまったという苦い過去を持っています。

橘刑事(本郷功次郎)は、父親が捜査協力を申し出たことを説明しながら「吉野、お父さんを許してやれよ。帰るまでに、一度でいいからオヤジって呼んでやれよ」と諭しました。

吉野とは逆の立場になりますが、橘も息子から憎まれていました。だからこそ、父親の気持ちが痛いほどわかるのでしょう。橘は「父親は吉野に会いたくて上京したんだ」と信じていたのです。

頑固で一本気な吉野刑事の性格は、くしくも父親が神代課長に対して「あれはわしに似とるんです。わしのせがれですから」と語った言葉通り、親子だからこそ引き継がれた血脈だったのですね。


父親役の高松英雄さんは、説明するまでもない名優です。男気のある九州男児を見事に演じられ、高松さんだからこそ、吉野の父親にふさわしいという強烈な印象を作ってくれました。

新井康弘さんは、アイドルグループから俳優への道を進み始めた頃で、ふてぶてしくも陰のある不良役が似合っていましたし、バスガイド役の友里千賀子さんは、健康的で明るい好感の持てる役柄でした。

それから不良の雇っていたスナックのママ役でひし美ゆり子さんが出演しています。ウルトラセブンのアンヌ隊員からは時が経ち、あけすけな水商売女性ぶりを見せてくれましたね(笑)


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noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!