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脳卒中後急性期から回復期における歩行パターンの分析

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。
このnoteをご覧頂きありがとうございます。

本日紹介する論文はこちらです↓


論文雑誌:Gait & Posture, 2003
Impact Factor:2.349
参考文献数:9本(リンクにてpubmedへ)

今回の論文は脳卒中者の比較的に早期な時期での歩行パターンにおける分析が行われています。

急性期から回復期においては、歩行を獲得する重要な時期であり、同時に歩容の変化が著しい時期であるといえます。

この記事を読むことで、
・脳卒中者の急性期から回復期までの歩行分析に応用できる
・臨床における歩行分析能力が向上する
・同時期の治療アプローチに活かせる

ことが期待できると思います。

では、早速目次です!


はじめに

脳卒中後の歩行障害のパターンを特定することは介入の指針を構築することにつながります。

脳卒中後の歩行における問題点として、目視による主観的な評価となってしまうことです。

この場合、主観的な評価であるため、歩行パラメータにおいて最も重要な機能が何かを特定することが難しくなります。

例えば、歩幅の特徴だけで分類すると、速度は似ていても、運動学的および筋電図のパターンが大きく異なる場合があります(1)。
同時に筋電図のパターンに基づき分類化すると、運動パターンや歩幅に大きなばらつきが生じます(2,3)。

 脳卒中発症から6ヶ月以内は重要な時期であることが臨床的にも広く知られていますが、対象者が基本的なパターンを維持したまま改善していくか、あるいは回復中に歩行パターンが変化するのかはわかっていないのが現状です。

先行研究にて、

Shiaviら:
脳卒中後の歩行パターンにおいて回復過程での変化を調査。筋電図の活性化パターンで対象者を分類化し、初期評価で異常な筋活動を示した対象者のほとんどは慢性期に異なるパターンを示したことが報告。
DeQuervainら:
運動障害に対する歩行の代償反応を示す関節運動と歩行速度の組み合わせで対象者を分類化し、運動学的データに基づき4つのパターンを特定した。そのうち3つのパターンは非常に遅い歩行速度の対象者で示される結果となった。


一方で、集団的な分析は、選択されたパラメータに伴いグループ化することで、客観的かつ定量的な分類システムを提供する統計手法になる。

この統計解析により

・肩関節痛を訴える患者の分類(4)
・脳性麻痺児の筋電図パターンの正常と異常の区別(5)
・若年層と高齢層の歩行パラメータの区別(6)
・歩行中の筋電図パターンの正常と異常の区別(7)
・病理学的検査を受けていない歩行パターンに対する判定(8)

などに用いられている。

本研究の目的

1. 脳卒中後早期および回復期の患者を対象に時間的・空間的および運動学的データを分析して、歩行パターンを分類化すること

2. 筋力や痙縮、歩行中の筋電図活動の測定値が対象者の歩行パターンに関係するか


対象と方法

対象者:脳卒中者52名(年齢57.4±8.7歳、発症後平均9.4日)

検査手順:
歩行分析は10mの歩道を補助具と靴を使用して、快適速度で歩行し、その際の床圧センサー、下肢関節角度、筋電図活動を同時に記録した。
床圧センサー:Stride Analyzer System(B & L Engineering, Tustin, CA)にて評価した。

三次元運動学
・ViCONの分析システムを用いた。
・赤外線カメラを用いて、骨盤、大腿部、下腿部、足部のランドマーク上で関節の動きを記録した。

筋電図
Basmajianら(9)の手法を用いて,大殿筋,半膜様筋,大腿二頭筋長頭,長内転筋,大腿直筋,中間広筋,ヒラメ筋,前脛骨筋の8つの下肢筋を評価した。

データ管理と分析(詳細は本文にて)
床圧センサー:歩行速度、ケイデンス、歩幅を算出
3次元動作解析:歩行周期における各関節角度を評価
筋電図:歩行時の筋活動を算出

統計解析
・集団分析にて、歩行サイクルの各相における矢状面での時間的空間的特性や最大値を評価
・分散分析
・Kruskal Wallis検定


結果

1. 入院時評価

歩行パターンで4つの集団に特定された。
グループ分けを決定した要因:歩行速度、立脚中の膝伸展、遊脚中の足背屈運動(精度98%)

グループ1(Fast群):速度が最も速く、立脚中期の膝伸展がわずかで、遊脚期の背屈が十分だった
グループ2(Moderate群):速度が中程度、立脚期の膝屈曲が大きいがその他はグループ1と同様のパターン
グループ3(Flexed群):速度が非常に遅い、立脚中期の膝屈曲が著しく、遊脚期の背屈が不十分
グループ4(Extended群):速度が非常に遅い、立脚中の膝過伸展と遊脚期の背屈が不十分


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