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『The Boondock Saints』 (処刑人)

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1999年公開のヴァイオレンス映画。ポスターや邦題の通り「毒をもって毒を制す」映画がなんですが、とにかくストーリー展開と登場人物が面白い。NetflixではPart2が見れますが、私は嫌な予感がするので未だに見ておりません。

ストーリー(ネタバレ無し)

Boondockは下町とかへき地という意味だが、要するに危ない地区のSaint(聖人)というタイトルから分かるように下町のアイリッシュ系アメリカ人兄弟が地元の悪を殺していく話。天に変わって成敗する映画はよくあるが少し異なる点が2つある。

まず、いわゆる正義に目覚めた一般人が警察には任せてられないとばかりに悪を倒すという話ではなく、主人公の兄弟もまあまあヤンチャで、マブダチもイタリア系マフィアの構成員といういわゆる「おま言う」なのである。もうひとつは、これがこの映画のポイントなのだがストーリー展開が通常のヴァイオレンス映画とは異なる。
最初に事件の直前までのシーンが流れ、その後警察とFBIの事件後の現場検証シーンに飛ぶ。そこで登場するFBI捜査官がキレキレの推理で何が起こったかを間抜けな地元警察に説明する現場検証シーンと実際の犯行シーンがリンクして流れるところだ。実際には推理と若干ハズレている所が面白い。

【監督】 Troy Duffy

映画監督でミュージシャン。このシリーズ2本しか撮っていないのでなんだろうと思っていたが、Wikiを見ると結構ヤバい人のようだ。バーテンダーとして働いている時にこの映画の脚本を書いて、当時映画界で絶対的な権力を持っていた映画配給会社MiramaxのWinestein兄弟(兄のHarvey Weinsteinは性的暴行で悪名を轟かせている)と契約し、次のQuentin Tarantinoとして売り出される予定だったが、Troy Duffyはミーティングをすっぽかしたり、Winestein兄弟に対して暴言を吐いたりして契約を解除されたらしい。当時のWinestein兄弟に暴言吐くとかありえないですけど、なんか映画さながらのヤバい奴感がすごい。結局自費でこの映画を制作したらしいが、自費とはいえWinestein兄弟に喧嘩を売って映画館で公開できたのがすごい。Googleでオリジナルの映画ポスターを探したが画像が悪かったので見つけたのが上記ポスターだった。Director's cutと書いてるがそんなのがあるとは知らなかった。自費で作ったのにDirector's cutってどういう事?観てみたい。

【主演】 Willem Dafoe as Paul Smecker

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実質この人の映画と言っていい。なので今回の異常なくらい頭の切れるFBI捜査官についていろいろ書きたいがネタバレになるのでやめます。ちなみにPart2でも登場するらしい。『Platoon』で一躍スターとなってから長い間一線で活躍しているが、この人のすごいところは出演映画の選択がいいことだろう。最近では『John Wick(ジョン・ウィック)』『The Florida Project(フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法)』などB級や興行を見込めそうにない映画に出て、なぜかその映画がヒットしたり高い評価を受ける事だ。いい俳優はいい脚本や監督を見分ける力があるのかもしれない。『John Carter』という映画史上最大級の失敗作にも出てますけどね。

【主演】 Sean Patrick Flanery as Connor MacManus

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主役のマクマナス兄弟の兄役。役の通りアイリッシュ系アメリカ人。正直この映画以外で見たことはないが、テレビ版の『The Young Indiana Jones』に長い間出演していたらしい。真意は不明だがWikiに面白い記述があった。ちょっとイタイ人かもしれない。

端正なルックスとは裏腹に奇行でも知られ、『The Young Indiana Jones』のPRで来日した際には、映画雑誌「ロードショー」の屋外での撮影中に周囲の人々が注目しないのに腹を立て、その場で服を脱ぎ、下着1枚になったというハプニングもあった

【主演】 Norman Reedus as Murphy MacManus

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主役のマクマナス兄弟の弟役。この映画と『Blade2(ブレイド2)』のイメージしかなかったが、今や『The Walking Dead』の人として知らない人はいないスターとなった。映画以外にも写真家・画家・モデル・バイカー・PV出演、ハローキティの大ファンなどいろんな顔を持ってるみたいですね。Wikiによると父親の仕事の関係で千葉県の習志野に住んでいた事もあるとか。一見気難しいそうな風貌だが、多趣味で好きな事やって楽しく暮らしてるお兄ちゃんっぽい。

このPVに出てたなんて全く気づかんかった。

オススメ

最後の方はちょっと笑ってしまうが、ただのヴァイオレンス物とはひと味違うお上品ではない上物のB級映画です。

余談

昔『Blade Runner(ブレードランナー)』が田舎の映画館に来て観に行くのを楽しみにしていたら、あまりに評判が悪く一週間で打ち切りになって観れなかった。結果、数年後ビデオ化されカルト的な人気となったのは、映画館で観れなかったファンが多数いたからだと思う。数年後大阪に出てきて大毎地下劇場(今はなくなった名画座)のスクリーンで観て感動した。もし当時公開が続いて田舎の映画館で観ていたとしたら同じほどの感動を得られただろうか。もしだらだら公開が続いていたなら今のような人気が出ただろうか。
この映画は公開当時、コロンバイン高校の銃乱射事件があり公開が自粛となっため、後日ビデオ化され爆発的に人気が出た。もし普通に公開されていたら今のような人気が出ただろうか。
どんなにいい映画でもタイミングというか運というかそういうものがあるような気がする。

映画もドラマも音楽もお笑いも、旬な時に無理して味わうより自分の人生のいいタイミングや予期せぬ運命的な出会いで味わうのがベストなんかなと思う。偶然なんかの媒体で見かけたこの映画をフラットな気持ちに観れたのはラッキーだった。Part2も何かいいタイミングで観れたらいいなと思い何年も経つ。

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