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フリー台本ショートストーリー 「生神(いきがみ)」 #怪談系 #落ち


ある人の不幸な体質についてのお話になります。死神は割と居そうですが、生神は…いるのでしょうか?

怪談系の話になりますが、お化けとか脅かし系でも無く、ジワジワと「え、怖っ」となるタイプの物として作りました。とても現実離れしておりますので、「お風呂入るの怖くなった」とかにはならないと思います。

とは言え、解釈しだいではホラーでもなく、「ただの数奇な運命であったんだな」と捉える事もできるでしょう。
最後の最後の落ちで、その様な怖さの要素を入れてはいます。しかし、とてもボヤッとした言葉運びにはなっておりますので、解釈の幅が広がりやすいかと。
私個人が置いた設定と言うか物語は勿論有りますが…読まれた他の方がどの様に解釈されるかが気になります故。

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以下コピペ用↓

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【クレジット】

 利用フリーのフリー台本ショートストーリー

(台本名) 「生神(いきがみ)」
(作者) 妙々 みょーんみょーん
(サイト) note
(ページURL) https://note.com/myonmyon_myooon/n/n75584ab568dc

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語り手の方の体験談を一人で話し続ける形になっています。
基本的に語り口調が過去形になっています。私の癖です…。

参考読み上げ音源↓


【下から本編】

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生神 いきがみ


私には不幸な体質がありまして、それはそれは困った物であります。その困った体質と言うのは、「近寄った死体が生き返る」と言う代物です。
「それはとてもすごいのではないか?」「とても良いのではないか?」と思われる方もいるかもしれません。しかし…よく考えてもみてください。いやでも「生き返らせてしまう」のです。
「死んでいた蝉が急に生き返って、自分の方に飛んで来る」みたいな事だったり…参列した葬式の亡くられた方が元気に起き上がってしまって、しまいには「あれ、私死んでた?」みたいな事を言わせてしまったり…

古来から「死」と言う概念はとても丁重に扱われているみたいです。現代でも、人の死後には大抵の場合、葬式を開いたりしますよね。
私には、そのような「死」と言う概念の扱いそのものを大きく変えてしまう様な…そんな性質を持ってしまった様なのです。

そんなタチを持ってるが故、幼い頃の私の生死に対する捉え方があまりにも周りとかけ離れていました。当然、「私が珍しい人間なのだ」と自覚するのに時間はかからず、私は小さな頃からひっそりと、特に生死に関わる場所には行かない様にして過ごしていました。


静かに過ごしてきた私の人生は、あの体質以外には特に困る事無く、順風満帆とも言える生活を送ってきていました。
とは言え、人として生活しているわけですから、不幸な出来事は起こります。
母親が事故で亡くなったとの連絡が来たのです。
母親には長らく世話になり、とても温かい生活を私達家族に与えてくれた存在でした。
今となっては妻と二人で生活しているが故に、母親とはあまり会っていませんでした。
深い悲しみを感じたと共に、これまでのことに対する深い感謝の気持ちでいっぱいでもありました。

さて、ここで「どうしようか」と思うわけでございます。
「母親の葬式に参列するか」
私が来たら、「目の前で母が生き返る」と言う、とんでもない事が起きてしまうでしょう。
とは言え、捉えようによれば…「母親を生き返らせる事ができる」と言う事でもあります。
生死への冒涜そのものな考え方な気がしますが…そんな事を放っておいてでも「私の体質を活かしたい」と思える出来事に出会ったわけです。…母親に会ってみる事にしました。

私は母親の住んでいた実家から遠く離れたところに住んでいた為、着いた頃にはもう準備も終わってしまっていました。
母親が生き返ると言う場面に遭遇してしまう事になると思うと、不思議な面持ちでした。
さて、家族に「ここだ」と連れてかれて、母親が寝かされている部屋に入って行きました。
キィっと扉を開くと、母親は布団に寝かされておりました。母親の顔を見せられた時も、「まぁ…生き返るだろうしな…」と思って、どこか余裕がありました。もう既に涙を枯らしてしまったであろう家族と、涙が出るわけが無い私。私だけ、滑稽さすら感じてしまう様な感情であったと言う事を…分かっていただけますでしょうか?

あれから、もう、だいぶ時間が経ちました。
「母親が生き返らない」
いや、そもそも普通は生き返るもんでもないでしょうよ、と、自分自身にツッコミを入れてみたりしたものの…
やはり、動揺を隠せなくなってきていました。
「あの体質が…消えた?今?」
私を少なからず困らせてきた体質が消えたとなると…少しホッとする気分がするとは言え、とても間が悪い。「今じゃないでしょう?!」と、思ったりして、怒りの感情すら湧いてきました。

今頃になって、母親の死と言うのを、しっかりと実感し始めたのでした。
「もう、母親が帰ってこない」
そう悟った私の目から自然と、意識せずに涙がボロボロと溢れ出てきて、止まらなくなりました。喉の奥の奥がキュッとなり、嗚咽して、大きな声で泣いたのでした。

涙が枯れて疲れきってしまう位に泣いてみても、母親は生き返る気配も無く、私はその場から動けなくなってしまいました。


それからまた少し間が空いた後、気分転換を試みようと、外を歩いてみる事にしました。これ程殺伐とした気持ちになる風の流れは初めてです。
「遺族って…こんな気持ちになるんだ」と、今のとても深い悲しみを、学びとして心に刻んでおこうと、決めました。

歩き出した路上に、蝉の死骸が転がっているのを見ました。
「こいつが急に飛び立つのに困らなくてすむのか」と、少し、心の中に余裕と喜びが生まれました。ふざけた様に、蝉の死骸を摘んでみたりして…

ジジッ

「は?」

蝉が、鳴きました。  …私の生神は…


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